口腔・鼻腔ろう孔

犬の犬歯は歯根部が非常に長く鼻腔に達しているため歯周病が悪化し周囲の組織が破壊されたり、歯科処置で抜歯すると口腔内から鼻腔に通じる穴が残ります(口鼻腔ろう孔)。

ろう孔は自然に治癒して塞がることはなく、歯周病治療のために犬歯を抜歯したあとはろう孔を塞ぐ手術が必要です。ろう孔の修復は歯茎から上唇の内側にかけて粘膜を切り、穴を覆うフラップを作って口腔内の天井部分(硬口蓋)に縫合します。

ただ硬口蓋は非常にもろい組織で糸を保持する力が弱いため、術後に縫合部が崩れて失敗するケースも珍しくありません。


今回は他院で歯科処置をした後に縫合が崩れ、ろう孔が再発したため、再発防止のため大きめのフラップを作り縫合部にかかる力を分散しました。また顎の骨が一部突出して縫合部に余計な張力がかかるため、突出部を削り平にしています。さらに一部縫合を二重にして補強しました。

術後のケアで最も重要なことはエリザベスカーラーで口を保護し、前足で縫合部をいじらないようにすることです。またしばらくは柔らかいものを食べ、口の動きを極力少なくするとも有効です。ろう孔再発は術後1週間以内で起こることが多く、1週間後の再診で崩れていなければほぼ間違いなく治癒していきます。

本例も1週間後の再診で縫合部の癒合が確認でいたので治療終了としました。凸凹部分も1ヶ月以内にきれいになっていきます。