メトロノミック抗がん剤治療

トリミングに来院された際の健康チェックで腹囲膨満から腹水の貯留が見つかったケースです。超音波検査を行ったところ脾臓は全体的にまだら模様になっており、広範囲な組織変化疑われます。また肝臓の一部も同様の変化が見られました。

開腹手術では脾臓に4-5cmほどの大きな腫瘤と全域にわたり無数の小さな腫瘤が見られ、肝臓にも同様の腫瘤が見られました。病理組織検査では悪性度の高い血管肉腫の判定でした。

血管肉腫は血管を構成する細胞が腫瘍化したもので脾臓や肝臓によく見られます。腫瘍の血管を構成する細胞は異常な細胞であるため放置すると腹腔内で自然に出血する恐れがあります。今回は腹水の貯留がありましたが出血ではありませんでした。

血管肉腫は特に進行の早い悪性腫瘍で、大多数のケースで診断時にはすでに転移が見られ、手術後の平均生存期間は抗がん剤治療を行っても4-6ヶ月と言われています。

今回のケースでは手術後メトロのミック治療・抗がん剤治療・高濃度ビタミンC治療などを組み合わせ通院をベースに10ヶ月以上普段とあまり変わらない生活を過ごすことができました。

メトロノミックとは従来の抗がん剤治療とは異なり、低量の抗がん剤を少しずつ投与する(多くは自宅での経口投与)ことで副作用を抑えQOL(生活の質)を維持しつつ癌の進行を遅らせることを目標とした新しい抗がん剤治療法です。

治療中の状態や生存期間には手術時の病状・癌のタイプやステージ・体力・年齢・使用する薬剤など様々な要因が関係しますので全てのケースで同様の結果が得られるわけではありませんが、患者への負担が大きい従来の抗がん剤療法と比較してそれと同様またはそれ以上の結果を出せることがあります。