フトアゴヒゲトカゲ 体腔内出血
フトアゴヒゲトカゲ 体腔内出血
腹部の膨満と口を大きく開けて呼吸する、ゲップのような仕草をするということで来院されました。
超音波検査では多数の卵胞を含む発達した卵巣が左右に見られ、これによる消化管の圧迫が疑われました。卵胞停滞の可能性もありましたが食欲や排泄に大きな異常はなく産卵の可能性もあるのでご相談の結果しばらく経過観察をすることになりましたが、ある時から急に元気・食欲がなくなり、卵巣摘出術を行うことになりました。
術前のレントゲンでは楕円形の卵胞のシルエットが見られますがその他の異常は見られません。一方血液検査では生化学検査に大きな異常はないものの、貧血の指標であるヘマトクリット値が19%に低下していました。(通常は30-40%程度)
開腹すると大きな卵胞の他に体腔内に血液が貯留しており体腔内出血を起こしているのがわかりました。
出血部位は卵巣に分布する血管が破れそこからゆっくりと出血していることが確認されたので、出血部位の手前で結紮し血管を凝固止血しながら切断、その後卵巣ごと摘出しました。
爬虫類は哺乳類と異なり重度の貧血でも耐える能力があります。今回も相当量の出血が見られたことから回復が心配されましたが少しずつ元気を取り戻してくれました。
一方トカゲ類では体腔内出血、特に卵巣や卵管からの出血が過去にも何例か見られていますが卵胞停滞などとの関連性はわかっていません。