Bearded Dragon (フトアゴヒゲトカゲ)1

10ヶ月齢女の子の症例です。ある日突然元気・食欲がなくなり、目を閉じて動かなくなったとのことで来院されました。レントゲンでは後腹部に丸いものがブドウのように連なり、消化管が前方に押しやられているのがわかります。ただし一つ一つの形ははっきりと見えず、周りの組織との境界も不明なので卵殻が形成されていない卵胞が大きく発達して停滞していることが疑われます。

超音波ではたくさんの卵胞が見られます。また肝臓の付近では卵胞との間に液体の貯留が見られます。この時点では出血や卵黄の漏出による腹膜炎が心配されましたので試験開腹手術を行うことになりました。

後腹部からは多数の発達した卵胞を含む卵巣が左右に見られます。また粘性のある血液を含む液体が5ccほど採取され、卵黄成分の漏出による炎症が疑われます。卵巣摘出後の回復は速やかで、腹部を占めていた卵巣がなくなったことですぐに食欲も戻りました。

爬虫類の卵胞停滞は珍しくなく、特にトカゲ類では非常に多く見られます。

多数の卵殻が形成されない卵胞が見られる場合、その後の流れとして卵殻が形成され排卵される・そのまま吸収されてなくなるなどの可能性も考えられますが、食欲がない・元気がないなど体調不良がある場合は放置して自然に回復することは稀です。またフトアゴヒゲトカゲでは腹膜炎や出血など合併症があることが多いので早めの処置が望まれます。