フェレットの前立腺肥大

フェレットの副腎皮質機能亢進症は3歳以上のフェレットで多く見られる病気ですが、オスでは副腎から過剰に分泌されるホルモンの作用により前立腺が肥大し、尿道が圧迫されて排尿が困難になることがあります。

日本ではリュープリンの注射による治療が一般的ですが、病気の進行に伴い徐々に注射に対する反応は悪くなっていきます。

本症例はリュープリン治療を受けていましたが病気の悪化とともに排尿困難になり、救急病院で最大量のリュープリン投与と排尿処置はされたものの、その後も自力排尿が困難ということで安楽死も提案されたということで来院されました。

全身の脱毛や副腎の肥大など典型的な症状の他に超音波検査では前立腺が大きく肥大し、また前立腺炎を伴うことで前立腺の一部に膿瘍または嚢胞ができていることがわかります。(この後の検査で膿が溜まった膿瘍であることが確認されました。)

レントゲン検査では陰茎の先端からカテーテルを設置し、血管造影剤を注入すると前立腺がいかに大きく肥大しているかがわかります。左方向に膀胱がありますが前立腺内部では排尿のルートである尿道がはっきりと映らず、周りの組織に漏れ出て膿瘍にも到達しています。

この段階ではやはり治療困難が予想されましたが、複数の薬を同時に投与することで奇跡的に排尿が可能になりました。その後1ヶ月経過では排尿障害はほぼ解消され、通常の生活に戻り継続治療に移行しました。さらにリュープリン投与時の脱毛も大きく改善されました。今後はどの程度今の状態を維持できるかが課題になりますが、病気が1つの薬(リュープリン)に対して耐性をもった場合、異なる薬に変更または混合して用いることで改善することがあることを示す1例です。