イグアナ 体腔内腫瘍

4歳メスのイグアナが食欲廃絶と腹部の膨満で来院されました。

通常のレントゲンでは各臓器の詳細は見えませんが右後腹部に大きな丸い影が見え、大腸を左側/背中側に押し出しているように見えます。

総排泄口から造影剤を注入すると直腸から大腸が造影され、この影が大腸の外側にあることがわかります。

超音波検査では体腔内に多量の液体(犬や猫の腹水に相当)が溜まっているのが見られました。

トカゲ類では卵胞の停滞症がよく見られますが今回は卵胞ではなく直径7-8cm程度の腫瘤と思われる所見が見られました。

試験開腹手術では血液を含む暗褐色の液体が大量に貯留しているのがわかります。

液体を吸引すると大きな腫瘤が確認できたので、血管をシーリングして出血を止めながら切除しました。切除後は体腔内を繰り返し洗浄、他の臓器に異常がないか、出血がないか再度確認して縫合します。

切除した腫瘤は未発達の小さい卵胞を多数含んでいることから卵巣であることがわかります。同時に切除した左の正常な卵巣と比較するとその違いがよくわかります。病理検査結果は卵巣の奇形種で、卵巣組織が腫瘍化し異常に増殖する比較的稀な腫瘍の一つです。