異常行動
動物の行動学的な異常や問題に対するアプローチは人での精神科に相当する分野ですが、直接コミュニケーションをとることができないため難しい分野の一つです。そのため気付かれずに放置されたり、加齢によるものと決めつけられている一方で痛みを伴う疾患など身体の異常が原因となっていることが多く見られます。特に成熟動物がいつもと異なる行動をとる場合や、これまでやっていたことをしなくなるなどの変化が見られる場合はしつけや加齢の問題と決め付けずに身体の異常がないかを確認することが大切です。
例
痛みを伴う疾患により体の一部を執拗に舐める
痛みによりイライラするため凶暴化する
それまでできていた排尿や排泄ができなくなる
多飲多尿によりおしっこが我慢できなくなる
行動学的な異常がある場合はすぐに原因の究明と改善につながるのではなく、しばしば時間をかけたアプローチが必要です。その際、症状の度合いによっては薬を投与し症状を和らげながら少しずつ改善を試みます。また身体的な異常も併せて見られる場合は鎮痛剤などによる症状の緩和が大きく助けになることがあります。
認知症
神経障害物質(アミロイド等)の沈着や血流の減少などにより脳神経が変性・壊死・萎縮するため視覚や聴覚を含めた認知能力が時間とともに徐々に低下していく病気です。外界の情報を認識し、適切な対応を考えて行動するという一連の流れに異常をきたし通常では見られない異常な行動が見られます。人のアルツハイマー病に類似すると言われていますが動物での病態は人ほど解明されていません。
10歳以上のシニア動物に見られることが多く、発生率は年齢とともに高くなる傾向にあります。犬では11-12歳で28%、15-16歳では68%の犬で少なくとも1つ以上の症状が見られるという報告もあります。猫でも11-14歳の猫の28%、15歳以上では50%の猫で少なくとも1つ以上の症状が見られます。
認知症で見られる症状の例
徘徊・一箇所を凝視する・失禁やトイレの失敗・繰り返しの動作
問いかけに対する反応の遅れ
睡眠時間の延長・睡眠サイクルの変化・夜間の不眠・無駄吠え(特に夜間)
運動能力の低下・運動量の減少(寝てばかりいるなど)
不安・興奮・落ち着かない・家族に対する攻撃性
食欲の変化(増加または減少)