米国VDIラボラトリー社

TK1腫瘍マーカーによる悪性腫瘍検査(犬・猫)

技術の発達した現代でも最終的な悪性腫瘍の確定診断には病理組織検査が必要です。皮膚や皮下の腫瘤は針吸引による細胞診が可能ですが、多くは全身麻酔を伴う外科的切除または一部切除(バイオプシー)をした上で病理組織検査を行う必要があります。

一方腫瘍が発生する動物は高齢であることが多く、また合併症などにより麻酔や外科処置のリスクが心配されることも多々あります。腫瘍マーカーによる検査は病理組織検査の代わりに行うものではありませんが、悪性腫瘍が疑われ検査や治療を決める際に重要な情報を提供することができます。

海外では異なる技術を用いた複数の腫瘍マーカー検査会社がありますが、いずれもメリット・デメリットがあり100%正確な検査はありません。また腫瘍マーカー検査はあくまでも診断の補助の一つとして用いるものであり、通常の血液検査・画像検査・病理組織検査の代わりとなるものではありません。

腫瘍マーカー検査の多くは悪性腫瘍が増殖する際に産生するDNARNAまたはその副産物を検出します。VDI社の検査ではガン細胞がDNAを増殖する際に産生するチミジンキナーゼ タイプ1(TK1)という酵素と炎症マーカーであるCRPやハプトグロビン(HPT)を測定しAIによって総合的に解析します。

生体では常に細胞分裂を繰り返し古い細胞が新しい細胞に置き換わっていますが悪性腫瘍の場合は正常とは異なるプロセスで異常な細胞分裂を繰り返すためDNATK1の合成量が多くなることから悪性腫瘍の存在を検知します。正常な細胞や良性の腫瘍では増殖スピードが遅いためTK1の量も少なくなります。炎症マーカー(CRPHPT)はごく一般的に行われる血液検査項目ですが、悪性腫瘍病変では必ず炎症を伴うため、TK1と同時に測定し総合的に解析することで検査の精度を高めています。

腫瘍マーカーによる検査はがん細胞が活発に増殖を繰り返す際に産生されるタンパク質を検出するため、特に活発に増殖するタイプの腫瘍(例:リンパ腫)や悪制度の高い腫瘍では検出精度が高くなります。一方ゆっくりと増殖していくタイプの腫瘍(例:神経の腫瘍)やかなり早期のがんでは検出率が低下します。また既に見つかっている病変部分について判断材料の一つとなりますが確実に 悪性かどうかの判別や良性腫瘍の有無を検査することはできません。さらに炎症反応のマーカー(CRPHPT)では抗炎症薬を投与している場合は検査結果に影響する可能性があります。

今回当院で導入したVDI社の検査では比較的少量の血液サンプルを用いて幅広い検査が一度に可能になっています。また皮膚や消化管のアレルギー検査も個別またはがん検診と一緒に行うことができます。例えば治療してもなかなか改善しない下痢や嘔吐の場合、悪性リンパ腫(消化管の悪性腫瘍)、炎症性腸疾患、食物に対するアレルギー反応などの可能性が考えられますがこれらの判別が非常に困難です。これまでは一般的な消化器疾患の検査(膵臓機能・寄生虫・菌・ウィルスなど)、全身麻酔を伴う内視鏡検査や外科的バイオプシーを用いた病理組織検査、食材に対するアレルギー検査などを別々に行う必要があり、費用も大きくかかりました。今回導入された検査では腫瘍性の疾患かどうかある程度の目処をつけると同時に消化器症状を起こすアレルギー検査や膵臓の検査も同時に比較的安価に行うことができることが大きなメリットとなっています。


腫瘍マーカー検査の導入事例


検査料金

Cancer Panel (一般悪性腫瘍検査)

41,800  - (税込)

腫瘍マーカー・炎症マーカーによる悪性腫瘍インデックスにより悪性腫瘍の可能性をスクリーニング検査します。特に発生頻度の高いリンパ腫や進行の速い悪性腫瘍の検知に高い精度が見られます。一方皮膚癌・脳神経系腫瘍・一部の早期の悪性腫瘍(ステージ1までの肥満細胞種)では精度が低下します。一般健診の他に腫瘤が発見された際の検査、外科的バイオプシーを行う前の検査、治療効果のモニタリングにも用いられます。

使用事例


Advanced GI Panel (AGIP:総合消化器病検査)

腫瘍マーカー・炎症マーカーによる悪性腫瘍インデックスの他に消化器症状の診断に必要な膵炎(cPL/fPL)、ビタミン(B12/葉酸)、血清タンパク(総タンパク/アルブミン/グロブリン)、微量元素(ビタミンD/マグネシウム)など12項目および年齢・品種・性別などの情報をAI解析することで単に悪性腫瘍の有無だけでなく慢性的に続く消化器症状の原因特定に幅広い情報を提供します。また食材に対するアレルギー反応が疑われる場合は本検査にアレルギー反応を追加することができます。

猫では胆管炎・膵炎・炎症性腸疾患の複合3重炎が多く見られるため、ALP/ALTなどの項目も追加できます。

使用事例


Allergy Test (アレルギー検査) 

48,400-(税込)


本検査には腫瘍マーカーは含まれません。痒みを伴う皮膚疾患や消化器症状にで食材や環境因子へのアレルギー反応を見る検査です。これまで他社で行われた96項目の検査から大幅に項目数を増やし、食材72項目を含む計125項目の検査を低価格で行うことができます。またアレルギー疾患で新たに注目されているビタミンDも含めて検査します。 


*当院から直接米国に依頼する検査のため極端な円安などにより価格を変更させていただくことがあります。