近年はアレルギー性の皮膚炎の発生件数もかなり増えましたが、その一方で何の皮膚検査もされず ”皮膚の痒み”=”アレルギー” と診断されるケースも多く見られるようになりました。そもそもアレルギー性の皮膚炎、特にアトピー性皮膚炎は Disease of Rule Out (他の可能性のある病気を検査によって全て排除した上で最後に診断する病気)といわれており、確定診断をするには一般的な皮膚検査や投薬試験により他の皮膚病の可能性を排除する必要があります。
アレルギー検査より先に・・・
現状では皮膚疾患、例えばかゆみを伴う皮膚炎の原因がアレルギー性疾患かどうかを判定する検査は存在しません。一般に言われるアレルギー検査とは皮膚一般検査や投薬試験を経て ”アレルギー性皮膚炎” と診断された動物が何に対してアレルギー反応を起こしているのか、そのアレルゲン物質を調べるために行うものです。全く症状のない健康な動物でも試験管で行うアレルギー検査では反応が見られることが多く、皮膚疾患が見られた際にすぐにアレルギー検査を行うことはあまり意味がありません。一連の皮膚の検査でアレルギーが強く疑われる際に行うと今後の治療に大きく役立つ検査となります。
二次感染の確認とコントロール
ほとんどの皮膚病では皮膚の状態が悪化するにつれ、角質層のバリヤー機能が失われるため細菌や真菌(カビ類)による感染を伴い、これらの二次感染によりさらに痒みが助長されます。アレルギー性皮膚炎も二次感染を伴っていることが多く、これらの感染を同時にコントロールできないと痒み止めを投薬してもなかなか痒みは治りません。またホルモン性の皮膚病では慣例的に ”かゆみのない脱毛” が典型的な症状とされていますが、二次感染を伴う場合は相応のかゆみを伴うためその点が見落とされることがあります。二次感染の有無も顕微鏡検査で容易に行えるものなので、確認した上で原因の特定や治療を行うことが大切です。
皮膚腫瘤
皮膚または皮下の腫瘤も皮膚の病変と同様、見た目で判断することはできません。また全ての腫瘍が塊状や腫瘤状になるとは限らず、特に皮膚型の悪性リンパ腫では病変分が通常の細菌感染による皮膚炎と酷似しており病理検査を用いても診断が困難なことがあります。
したがって皮膚の腫瘤がある場合は可能な限り細胞診や顕微鏡検査を行うことが大切です。病変の切除は鎮静や麻酔処置を伴うため、全てのケースで容易に行えるものではありませんが、短期間での病変の拡大、顕微鏡検査で疑わしい所見が見られる場合、通常の皮膚治療で反応が見られない場合は一部または全部切除のうえ病理組織検査が推奨されています。