低出力レーザー治療(LLLT: Low-Level Laser Therapy)

侵襲性の低いレーザー光照射による理学療法の一つです。LASERはLight Amplification by Stimulated Emission of Radiationの頭文字をとったもので、出力の強さによって通常の可視光線とは異なる性質を持っており様々な分野で応用されてきました。

レーザーを用いた治療のメカニズムはまだ完全に解明されていませんが、低出力のレーザー光を組織に照射すると光エネルギーが組織の細胞に吸収され、異なる役割をもつ細胞を活性化します。光エネルギーを吸収した細胞の代謝が活発化することで様々な効果を生み出すと考えられています。

レーザー治療自体は新しい治療法ではなく以前から理学療法または皮膚治療の一環として実際に行われてきました。レーザー治療器も出力の違いや侵襲性により分類されており、一般に皮下の深部組織の治療には高出力のレーザーが必要でそれなりに侵襲性も高くなりますが、今般導入したレーザー照射器では最も侵襲性が低いClass I に分類される一方で深さ13cmの深部組織まで照射が可能になりました。また青色光の併用により殺菌効果を促すため、感染病変の治療にも有効です。これにより異なる深さにある組織の治療や様々な病変への応用が特徴です。

レーザー照射による効果

    • 炎症による疼痛の軽減

    • 神経組織での痛みの伝達の軽減

    • 組織への血流促進

    • 組織での酸素や栄養素の吸収促進

    • 炎症による腫れや組織へのダメージの軽減

    • 炎症のプロセスのスピードアップによる治癒時間の短縮

    • 青色光の併用による感染部位の殺菌効果

応用例

    • 関節炎などの慢性の疼痛管理(痛み止めの用量や使用を減らします)

    • 肉芽腫性炎症・指間部炎症の治癒促進

    • 骨折治癒の促進や手術部位、外傷の治癒促進

    • 椎間板ヘルニア及び腰椎や胸椎部の疼痛

    • 皮膚の急性湿性皮膚炎(Hot Spot)・肛門腺炎の治癒促進

    • 口内炎・歯肉炎・抜歯後の治癒促進

    • 急性及び慢性の外耳炎の軽減と治癒促進

    • 鼻炎・副鼻腔炎の軽減と治癒促進

※当院では避妊・去勢手術を始め使用可能なすべての手術で手術部位にレーザー照射を行っています。これにより実際に手術部位の治癒がはやくなり、痛みも軽減することが確認されています。

安全性と副作用について

レーザー治療器も出力や侵襲性により分類が異なります。当院導入の照射器はClass I に分類され最も侵襲性の低いものです。適切なレーザー治療による副作用は認められず、また照射による皮膚癌等の誘発の心配もありません。

レーザー照射を行えない事例

    • 眼科異常による眼への照射

    • 腫瘍病変への照射

レーザー治療を行うにあたって

疼痛や炎症を軽減又は除去する理学療法の一つで、独立した治療のほかに西洋医学との併用により大きな相乗効果を期待することができます。とくに重症例では内科的治療や外科的治療の必要性を排除するものではありません。

治療頻度については治療開始時は頻回照射をおこない、その後症状の改善とともに頻度を減らしていく治療が望ましいとされています。開始時の治療頻度はクライアント方のご都合にあわせて検討いたしますが、最低でも週1回(病状によっては週2~3回)の治療を推奨いたします。関節炎などの慢性の疼痛管理では継続した照射が必要になることがあります。また重症例では十分な効果が現れるまで数ヶ月から半年の長期的な治療が必要なことがあります。

一カ所につき照射は2~5分間となります。トータルの照射時間は照射が必要な箇所や照射を受ける動物の動きによって影響をうけますが多くの場合10分以内を見込んでいます。