各動物種の習性から飼育数を考えることで、最も効果的かつ重要なポイントです。例えばフクロモモンガは群生を好む傾向がつよく、単独飼育によるストレスを受けやすい動物です。ウサギや多くのげっ歯類も群生を好みますが、飼育スペースの密度や雌雄のバランンスを考慮する必要があります。シリアンやチャイニーズハムスターは多数のグループ飼育で攻撃的になったり、ストレスを受けやすくなりますのでグループ飼育のなかでも個々の動物が自分のテリトリーを確保できるだけのスペースも必要です。また群生を好む動物でも個々の相性の善し悪しに注意が必要です。社会性のエンリッチメントでは個々の動物種の習性から単生か群生か・密度・雌雄のバランス・相性・個々のスペースを適度な状態に維持するように考慮します。
物理的エンリッチメントでは穴を掘る・登る・噛む・止まり木に止まる・かじる・ひっかくなどその動物の習性による行動を行えるように環境を整え、ストレスを軽減します。シンプルにケージの大きさを大きくする、敷物を深く敷き詰めるといった簡単な変化だけでも反復運動などの異常行動が軽減されます。特に深い敷物は冬場の体温維持にも大きく貢献します。また小型のほ乳類の多くは外敵がいないか確認するため高いところから周囲を見る習性を利用して箱や見晴し台を設置したり、見慣れた箱やおもちゃを新しいものと交換することでも刺激を与えることも出来ます。ただし一度に環境を変えすぎて、慣れない環境へのストレスや恐怖を与えないようにします。
例
異なる種類の食べ物やおやつを使う、「えさ探し」による運動を促すなどによって刺激を与えます。ウサギやハムスターのペレット等によって安定した栄養を簡単に与えることが出来るようになりましたが、食生活はマンネリになります。オヤツの野菜やフルーツはできるだけ色々な種類のものを与えて変化を付け、ペレットやオヤツをケージ内にばらまいたり敷物の中に隠すだけでも「餌探し」による運動を促進できます。また高いところにオヤツをおく、木片や大きめの木の枝に穴をあけてオヤツをかくすという工夫でより自然に近い環境をつくることができます。げっ歯類の多くは成長期に食べたことの無いものに興味を示さない傾向があるので小さいうちから色々なものを食べさせると理想的です。
例
五感を刺激するような変化を増やすことで飼育環境の改善を考えます。新しい道具やおもちゃだけでなく、ケージ内で既存の道具やおうちの配置をかえるだけでも視覚的な刺激になります。また季節のフルーツ等でバリエーションをつけるだけでも視覚・嗅覚・味覚も刺激できます。その他にケージそのものの位置を変える、日光やライトの点灯により日中と夜の違いをつけることも出来ます。(直射日光には気をつけてください)ケージ外の遊びスペースを設ける場合は同居のペット・小さい子供・危険物(電気コードや毒性のある植物)に気をつけましょう。遊びのスペースは段ボールや折りたたみ式のケージ等シンプルなものでも効果があります。
例
はしご・スリング・ロープ・ハンモック
鏡
ポーチ・袋
ココナッツや小さな巣箱
トイレットペーパーの芯・紙箱・ペーパータオル
プラスチック製のミニカーやおもちゃ
作業的エンリッチメントでは動物に自分の生活環境をある程度コントロールさせ、自分で変化を加えられるようにすることです。これにより学習能力や問題解決能力を刺激します。つまり知能や運動能力を刺激するようなものや道具をあたえることですが、例えば巣そのものではなく、巣作りに必要な材料を与えます。オヤツのある場所に行くために障害物を乗り越える、かじってトンネルをつくるようにする、近道を作らせるなどの仕掛けも知能や運動能力を刺激します。
例
大きめのバケツや衣装ケースに浅く水をいれ、ピンポンボールを浮かせる
ピンポンボールを糸で吊るす
段ボール箱に穴をあけ、さらにトンネル状のものをつける(巣穴を模倣したもの)
段ボール箱の横に穴をあけ、シュレッダーの紙をいれたもの
穴の開いたバスケットに干し草をいれたもの
Environmental Enrichment for Small Mammals Teresa Bradley Bays, DVM, CVA, DABVP (ECM) Clinician's Brief march 2014 より