飼育環境による慢性的なストレスの怖さ

病気の予防には健康的な生活が大切であるということは言うまでもありませんが、飼育環境が体に及ぼす影響について具体的に考えてみましょう。

温度設定が高すぎれば熱中症になり、衛生状態が悪ければ感染症にかかりますが飼育環境の影響とはこのような直接的・短期的なものばかりではなく、長期的・間接的な影響にも目を向ける必要があります。

例えば栄養のバランスが取れていない場合、炭水化物や脂肪によりカロリーは十分取れている一方でカルシウムやビタミンが欠乏していてもしばらくは体内のストックを使いながらしのぎます。特にカルシウムなどは骨を分解して必要量を調達しますのでかなり長期間でも骨から調達しながら耐えようとします。そのような欠乏症は病状がかなり進行してからでないと症状として現れることはありません。

またすぐには体に影響しないけれど生理的な要求を満たさない場合も慢性的なストレスとなります。例えば狭いところに閉じ込められる・隠れる場所がなく常に外界への恐怖にさらされている、孤立した状態で放置されるなどが長期継続すると慢性的なストレスを受けることになります。

近年人間の精神的ストレスが健康に与える影響についていろいろなことがわかってきましたが同じことが動物の体内でも起こります。ストレスホルモンが出続けることにより免疫力が低下する、糖尿病などの代謝異常を起こしやすくなる、がんの発生率が上がる、鬱などの精神異常が異常行動として見られるなどストレスによる悪影響は様々です。

多くの動物はかなり体調が悪くなるまで症状を見せません。また寿命の短い動物では人の1年が何年分にも相当しますから、年齢に応じた体の変化により今まで耐えられたストレスに耐えられなくなったりもします。

このように今元気そうにしているから必ずしも問題がないわけではなく、私たちが気づかないうちに動物の体にストレスをかけているかもしれませんので定期的に飼い方を見直してみるのは大事なことだと思います。