ゲーム理論のテキスト紹介(理工系向け)

最近,「ゲーム理論を勉強するには何から始めたらいいですか?」って聞かれることが増えたので,ちょっと書いておこう.

自分は情報系の人間なので,聞いて来る方はいわゆる理工系の方々ですが,「やっぱ○○ですかね?」と言って出てくるのは,

ゲーム理論 新版,岡田 章, 有斐閣

ですね.素晴らしい本です.僕も愛用しています.しかし,理工系の初学者が最初から岡田本をするのは挫折への一歩です^^ここから始めた方を何人も知っていますが,乗り越えて論文を書けた人は聞いたことがありません.個人的には最初は以下の2冊がおすすめです.ただ,どちらも基本的に数式がないので,テクニカルな内容を抑えたくなったら,岡田本の対応する箇所をあたってみるとよいと思います.

ゼミナール ゲーム理論入門,渡辺隆裕

ミクロ経済学-戦略的アプローチ,梶井厚志,松井彰彦

ただ,この5,6年の間でもゲーム理論の日本語のテキストはかなり増えているので,人によっては違うテキストが良い場合もあります.また,1冊の本を完全に理解しようとするのではなく,複数の本を読みながら対応している箇所を比較しながら見ると理解が深まります.その意味では,

入門ミクロ経済学,Hal R. Varian (著), 佐藤 隆三 (訳),勁草書房

は他のゲーム理論の本と角度の違う例が載っているので重宝しています.

あ,一応ボスの本もあげておかないと.

オークション理論の基礎―ゲーム理論と情報科学の先端領域,横尾 真,東京電機大学出版局

オークション理論がメインですが,もちろんゲーム理論が必要なので,実はゲーム理論の入門書として機能します.

実際,理工系のゲーム理論の授業で,指定された教科書がわからない学生が,参考にしているという話を聞いています.

英語の場合は,これまた星の数ほどありますが,僕が学部から修士にかけて泣きながら読んでいたのは

Microeconomic Theory, Andreu Mas-Colell, Michael Dennis Whinston, and Jerry R. Green, Oxford Univ. Pr.

です.

他に,ゲーム理論家の友人の間で定評のある教科書はこの辺です.

Game Theory, Drew Fudenberg and Jean Tirole, The MIT Press

A Course in Game Theory, Martin J. Osborne and Ariel Rubinstein, The MIT Press

また,http://www.gametheory.net/には色んな先生の授業スライドを公開しているので,こちらも参考になります.

計算機科学者向けにはこちらで,ごついAlgorithmic Game Theoryよりはゲーム理論に突っ込んだ内容になっています.

Multiagent Systems: Algorithmic, Game-Theoretic, and Logical Foundations, Yoav Shoham and Kevin Leyton-Brown, Cambridge University Press

協力ゲームに特化した本としてはこれもありますね.我々の論文も引用されています^^

Computational Aspects of Cooperative Game Theory, Georgios Chalkiadakis, Edith Elkind, Michael Wooldridge, Morgan & Claypool Publishers