日本学術会議任命拒否に対する

立教大学文学部有志による声明


日本学術会議会員候補者の任命拒否問題に関して

6名の日本学術会議会員候補に対する首相による任命拒否が、私たち文学部教員にとって見逃すことが許されないことは、首相が「総合的、俯瞰的」な措置とし、国会における答弁においても、合理的な理由を提示していないことにあります。この事態を見過ごすと、権力の恣意的な運用を許すことになります。憲法や議会制度、三権分立などを設けることで、権力の恣意的な運用を制限することで、民主主義はようやく成立しました。その根幹を、今回の事態は根底から揺るがしています。

 文学部には多様な専攻が属していますが、それらの共通項は「ことば」に対する真摯な姿勢にあります。民主主義は、「ことば」に対する信頼に基づいた対話によって、はじめて成立します。この間の日本学術会議の一件では、「ことば」が危機に瀕しているといってもいいでしょう。6名の候補者が拒否された理由を問う「ことば」に対して、「総合的・俯瞰的」という「ことば」を繰り返すばかりで、対話が成立していません。また、任用の解釈について、中曽根内閣のときに出された見解に対するあきらかな「解釈の変更」であるにも拘わらず、「変更はない」という応答に終始しています。この政府の答弁は、「ことば」の力を失わせます。「ことば」への信頼が失われたとき、社会には「反知性主義」が根付くことになります。「ことば」を基盤とする人文学に立脚する文学部は、不要なものとされます。過日、文部科学省が、全国の国立大学に対して、人文・社会科学系の学部を減らすよう、指示を出したことを忘れてはなりません。

 以上の理由から、立教大学文学部の有志は政府・学術関係者のみならず、社会のあらゆる人がこの事態の意味を理解し、心に留めてくださるようここに声明を発表するとともに、政府に対して以下のことを要求します。

1.日本学術会議会員候補に対する任命拒否の理由を、政府は明示すること。

2.明示しない場合、もしくは明示する任命拒否の理由が日本国憲法の規定「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」(第十九条)に抵触する場合、政府はすみやかに任命拒否の判断を撤回すること。


立教大学文学部教員有志(アルファベット順、2020年11月25日現在)

 阿部善彦

 荒野泰典

 有本真紀

 後藤雅知

 古井義昭

 ハモンド エレン

 長谷川修一

 橋本栄莉

 林文孝

 林みどり

 廣石望

 古矢晋一

 石黒広昭

 岩田美喜

 陣野俊史

 菅野聡美

 加藤磨珠枝

 加藤喜之

 金迅野

 木村直也

 北山晴一

 河野哲也

 蔵持重裕

 前田一男

 松原宏之

 中村麻美

 奈須恵子

 西原廉太

 小椋道晃

 大熊玄

 小野沢あかね

 大嶋彰

 小澤実

 坂本貴志

 佐々木一也

 佐藤雄基

 澤田直

 下地秀樹

 菅谷憲興

 髙井正

 渡名喜庸哲

 上田信

 浦野聡

 和田悠

 渡辺哲男

 四日市康博

 横山安由美

 米沢陽子

 舌津智之

計48名

ほか匿名希望3名






立教大学文学部教員で以上の声明に賛同される方は、以下のフォームにご記入ください。今回は専任教員、特任教員、助教、名誉教授に限らせていただきます。