ShireのEBITDAについて

EBITDAは株主や投資家さらに株価にとって、最も重要な「配当金」の安全性を保証しません

10月1日

Weber氏はEBITDAが3倍になるということだけをシャイアーとのM&Aにおける数量的な説明根拠としています。EBITDAが3倍になるというのに株価は3倍にならないどころか、反対に20%も下落しました。買収後の株式数が約2倍となる希薄化だけでは説明できません。

EBITDAは買収によるマイナス要因を取り込めないという欠点を抱える指標であり、そもそも一般的な会計基準に基づいた指標ではありません。株式市場は騙されません。買収計画を公表してから株式時価総額は約1兆円を失いました。

企業会計原則に基づいた本当のEPSが配当原資です。この、純利益に基づいたEPSの見通しを説明しないまま、EBITDAだけを根拠として、買収可否を判断する臨時株主総会での議決を株主に求めることは欺瞞的であると考えます。

EBITDAについて

5月12日

武田薬品のウェバー社長はシャイアーとの合併合意の記者会見で収益の悪化を懸念する質問に対して、武田側の株主にとってはEBITDAが3倍になる素晴らしいM&Aであると言っています。EBITDAとは何でしょうか? どうして純利益で言わないのでしょうか?

EBITDAは、earnings before interest, taxes, depreciation, and amortization。日本語にあえて訳せば利払い前・税引き前・減価償却前・その他償却前利益... 訳語が定まっていないため「EBITDA」と表記されることが多い。読み方は、「イービットディーエー」、「イービッタ」など、定まっていない。損益計算書上に表示される会計上の利益ではない。2000年前後には財務指標として広く利用されていたが、2002年ワールドコム破綻の際に、指標としての欠点が問題となった.... EBITDAには、過剰な設備投資やM&Aによって生じた損失をマイナス要因として取り込むことができないという欠点がある。インターネット・バブルの頃、この欠点をアメリカ通信事業者ワールドコムが不正に活用した。(ウィキペディア

ウィキペディアからの引用が長くなりましたが重要な問題を分かりやすく解説してくれています。とくに「過剰な設備投資やM&Aによって生じた損失」が隠れてしまうという問題はシャイアーにもあてはまりそうです。

シャイアーは3年前(2015年)までは売上高6000億円程度の中堅企業でしたが、2016年にバクスターの血液事業や、希少病の家族性血管浮腫(HAE)で成功したバイオベンチャーなどを買収して売上高は1兆6300億円へと2.4倍になりました。

その結果、原価率が急上昇して粗利率が低下、さらに急増した無形固定資産の償却費によって営業利益率は大幅に低下しています。

合併シナジー(おもにコスト削減)が期待通りに実現せず、大幅に悪化した利益率が回復していないとして、年初来の株価は武田との合併が憶測される3月末までに20%下落するという状況でした。

2017年は会計上の税前利益19億ドル(2000億円)に対してEBITDAは62億ドル(6700億円)にもなります。

EBITDAをここまで膨らませる原因となっている無形固定資産の急激な増加にも注目する必要があります。「のれん代および無形固定資産」が総資産(資産合計)の78%を占めていて恐ろしくなります。

上の表はシャイアーのバランスシートから資産の部(左側)だけを表記しました。単位は100万㌦です。

下の表はバランスシートの右側(貸方)です。借入金が167憶㌦(1兆8000億円)、資本剰余金が250億㌦(2兆7000億円)と急増しました。

資本剰余金はM&Aなど過去の資本取引で発生したもので、株主の持ち分ではありますが利益剰余金とは異なり、会社が解散でもしない限り、戻ってこない出資金です。

シャイアーの場合は、会社が解散すると「のれん代及び無形固定資産」が無価値となって、資本剰余金はすべて消えてしまうことになります。

このように、資本剰余金が 70%を占めている純資本(資本合計)361億㌦(3兆9000億円)に対して7兆円を支払うことには、計り知れないリスクがあります。

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