公開質問状への回答、および

「考える会」の追加質問

2018年11月20日

武田薬品工業株式会社代表取締役社長・CEOクリストフ・ウェバー殿

武田薬品の将来を考える会・別紙株主有志同代理人弁護士:村林 俊行〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-1-23虎ノ門東宝ビル9階ロア・ユナイテッド法律事務所TEL 03-3592-1791(代)

シャイアー社買収案件:臨時株主総会へ向けての公開質問状(その3)

拝 啓

深秋の候、貴社益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。

平素は私ども「武田薬品の将来を考える会」(以下、「弊会」)の活動に関しまして格別のご理解とご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、掲題のシャイアー社買収案件に関しましては、兼ねてより弊会として断固反対の立場を表明しており、去る10月1日付及び11月6日付にて、弊会が把握している本件に関する問題点や疑問につき「公開質問状」の形でまとめ、貴社宛てに提出するとともに、一部の機関投資家や報道メディア・ネット等にも同時に開示させて頂きました。しかしながら、これまで貴社からのご回答は、全ての質問事項にわたり、弊会が問題視しているところの質問事項に応えたものとはなっておらず、その内容は実質的にゼロ回答に等しいものでありました。

一方、本シャイアー社買収案件を実行するための議案の是非を問う為の臨時株主総会を12月5日(水)に開催するとして、11月15日付けの株主召集通知書にて公表されました。弊会としましては、本議案に関連しての「株主提案権」を行使する算段をしておりましたが、総会開催日の3週間前に開催するとの通知を受けましたので、時間的余裕が全くなく、提案権行使が出来ない状況にあります。かかる状況下、弊会では、先に貴社宛てに提出しました二回の「公開質問状」(6項目の質問事項)に加え、更に二項目の追加質問状を提出させて頂きます。

つきましては、臨時株主総会開催までに、全ての株主に納得の行くご説明をお願い致したく、よろしくお願い申し上げます。

繰り返しになりますが、本件は日本経済史上最高額の買収事案であり、その過程は株主に留まらず広く国民の目に見える形で残すべきとの考えから、今回も報道・メディア・ネットでも同時に開示する公開質問状とさせて頂きます。事情ご勘案の上、今一度本買収案件が武田薬品工業の持続的な発展に不可欠なものかを真摯にご検討頂き、計画の見直し、或いは中止の判断を下されるよう重ねてお願いするものであります。

敬 具

2018年11月20日

シャイアー社買収案件に関する公開質問状(追加質問)

【追加質問事項7】本件買収に伴う借入金の返済計画や、買収・統合後のEPSの推移予想等について、英国のTakeover Code等法規制により開示できないとするのは事実か?

本買収案件を進めるにあたり、貴社は英国のTakeover Codeやその他の法規制を理由に、買収完了後の新会社利益計画や3兆円に上る借入金の返済計画等、株主が本事案の是非を判断するに必要な情報開示を一貫して拒否されています。

しかしながら、弊会が英国のTakeover Panelの幹部と接触し、確認しましたところ、当該Codeでは企業買収案件につき、案件成立後の利益計画等計数見込みの開示を決して禁止しているものではない。むしろ、株主が正当に判断し得るような情報開示を奨励しており、今回の案件で武田薬品がTakeover Codeを理由に情報開示しないことは疑義があるとの文書による回答を得ています。仮に、これが事実であるならば、これまでに弊会始め全株主に対し法規制を盾に情報開示を拒否されていることは、Takeover Codeを誤解した回答となり株主の権利・平等性の確保を要請するコ-ポレートガバナンス・コード第1章基本原則1に反するのではないかとの疑問を持たざるを得ません。上記事情ご賢察の上、株主への情報開示を拒否されている理由をご説明頂きたくお願い致します。

【追加質問事項8】個別株主(少数の)からの「公開質問状」に対して回答することは、公平性の観点から適当でないとして回答を拒否されているが、コーポレートガバナンス・コード第一章基本原則1に照らして回答することを再考できないのか?

10月31日付貴社回答書では、回答拒否の理由の一つとして、“情報は全ての株主に公平に提供されるべきであり、個別の株主に回答することは適当でない。”としています。今回の「公開質問状」は弊会会員14名の株主有志にて提出されましたが、その内容は弊会会員130名の総意であり、全ての株主についても会社側からの適切な情報開示を求めているものと推察されます。

全株主に対して、本事案の是非を問うための判断材料を提供することは、コーポレートガバナンス・コード第一章基本原則1(特に補充原則1-2①)で規定されており、会社としては当然の責務であると考えます。つきましては、今後コーポレートガバナンス・コード第一章基本原則1に照らして回答することを再考できないのかをご説明頂きたく、よろしくお願い致します。

臨時株主総会へ向けての公開質問状_第三弾【最終版】村林先生校閲済クリーン版_201811019.pdf

2018年11月6日

シャイアー社買収案件に関する公開質問状(追加質問)

10月1日付の公開質問状における4項目の質問事項に対して、会社側からは実質的な「回答拒否」の通知をいただきました。「考える会」は「公開質問状」の内容を再度提出するとともに、新たに二項目の追加質問を提出させていただきました。

会社は回答を拒否する一方で、2018年度第2四半期(10月31日)の発表資料「戦経営の基本精神に基づくグローバルな研究開発型バイオ医薬品企業のリーディングカンパニーを目指して」(12ページ)において、「考える会」の質問事項を反映した修正をしています。

M&Aによる一株利益(EPS)の見通しについてはこれまで、

「買収完了後最初の通期事業年度の実質的な1株当たり利益は大きく増加」

と説明していましたが、

「買収完了後、1株当たりの利益が実質ベースでは買収完了後1年以内に増加、財務ベースのEPSは3年度以内に増加」

と変わり、合併初年度(2019年度)からEPSが大幅に増加するという間違った印象は薄れました。また、会計上のEPSについての見通しが述べられたのは初めてです。

これまで一貫して、「UKルールにより、クロージングまでは開示できない」と言ってきた、ウェバーCEOの説明は虚偽であったことにならないでしょうか?

それはさておき、合併初年度と2年目(2019年、2020年)の一株利益が減少することを、この説明で一般株主・投資家が理解できるでしょうか? 十分な説明ではないと考えます。

3年目(2021年)についても、血友病治療薬の落ち込み次第では減損処理によってさらに減少する可能性があることについて、十分な説明とは言えません。シャイアーの血友病製品の落ち込みについては30%から50%程度しか織り込んでいない疑いがあります。

減損処理については、新たに「無形資産の減損リスクが低い」という項目が加えられていますが、十分な理由が述べられていません。

定時株主総会では、「ロシュの競合品によるリスクについては取締役会で十分に検討した」と述べています。

この点に関する取締役会議事録については、開示を求めて確認する必要があります。

配当については5月8日発表時の資料では、

「株主還元の主要要素として確立された配当方針を維持」

とありましたが、次のように変更されています。

「1株当たり180円の確立された配当方針の維持を企図」

というように「企図」という言葉が追加されています。その意味を確認する必要があります。

中間決算時の開示資料の問題個所(12ページ)は下記のとおりです。

【 追加質問事項5】 コーポレートガバナンスの観点から、金融機関等の機関投資家と一般株主(外国人株主を含む)との間で、不公平な情報開示や利益確保の機会の提供が行われていないか。

コーポレートガバナンス・コードでは、その第一章で「株主の権利・平等性の確保」を謳っており、個人や少数株主・外国人投資家等を含めた一般株主に対する配慮として、第3章にて「適切な情報開示と透明性の確保」を求めています。今回の買収案件では武田薬品に融資を実行する金融機関や株式発行に関与する証券会社などの株主は、当然のことながら、その前提条件として将来キャッシュフローの説明を受けることになりますが、一般の個人株主(外国人株主を含む)等には、Takeover Codeを引用して、そのような情報はほとんど開示されておりません。両者に対する情報開示は平等ではなく、このような状況での議決権行使は、明らかにコーポレートガバナンス・コードで求められている株主の権利・平等性の原則に反します。

個人株主は株式を所有することにより株価が上昇するか、また適正な配当が継続実施されるかが主要な関心事項です。それに反し、今回一部の金融機関など何等かの形で買収案件にかかわる株主(機関投資家)は、単に株主であるのみならず、本来業務の一環としても大きなメリットを享受することになります。一般株主(外国人株主を含む)と株主の立場と融資等の債権者の立場を兼ねる機関投資家との間には、その意味でも不平等が生じています。(一部ではこのような状況を「利益相反」の可能性として指摘されています)。

なお、武田薬品の機関投資家(株主)となっている金融機関にとってはFiduciary Duty(受託者義務)の面からも大きな問題を孕んでいます。個人の金融資産を預かって運用している金融機関が、自社あるいはグループ会社の利益になるからといって、本買収案件に賛成票を投じるのは、道義的のみならずスチュアードシップコードの観点からも大きな疑問があります。年初より国内の大手製薬企業の株価が大幅に上昇する中で、武田薬品の株価は本買収案件がリリースされて以来25%以上も下落しており、買収実施以前の株式価値が本買収により2倍以上にも希薄化されるという事実を直視すれば、このような行為は公的に問題とされるべきで、少なくとも議決権の行使には慎重になるべきであることを機関投資家の皆さまに訴えていく所存です。

【追加質問事項6】 本買収完了後、新会社は約4兆円を超える「のれん代」と6兆円をも超える無形資産を抱えることになるが、減損リスクにどう対処するのか。

本買収は総額約7兆円に上る超大型案件であり、現在の武田薬品の財務余力を考慮すれば、失敗が即、会社の根幹を揺るがす事態に繋がりかねないことは、先に提出しました「公開質問状」にても述べさせて頂きました。「のれん代」に関しましては、武田薬品が現在抱える約1兆円に今回の買収でシャイアーの株価に約65%のプレミアムを付けたことから3兆円規模ののれん代が加わることにより、合わせて新会社が抱える「のれん代」は合計で約4兆円を超えることになります。

現在、武田薬品が採用している国際基準の会計規則(IFRS)では、「のれん代」の定期(定額)償却を行なう必要はありませんが、新会社の業績に当初の見込みとの大きな乖離が出て、「のれん代」の価値に深刻な毀損が生じた場合には、その処理は公認会計士の意見/見解に依拠することになり、厳格な減損処理が求められることになります。

又、買収に伴う製品に関連する無形資産は、武田・シャイアー社の既保有分を含め6兆3千億円から6兆7千億円に達すると会社は発表しています。一方、シャイアー社業績の中核製品であるアドベートやファイバ等の既存品を有効性や投与方法・頻度で大きく上回るロシュ社のヘムライブラの効能追加が、米国で予定通り10月4日に承認されたことから、シャイアー社の血液関連治療薬の売上も大きく下方修正されることを余儀なくされるリスクがあると報道されています。弊会が先の「公開質問状」で指摘させて頂いた通りです。このままでは、遅かれ早かれシャイアー社の血液事業だけでも約1兆円規模を超える減損処理を求められる可能性があります。この点、2018年7月5日付メレルリンチレポートでも同様の指摘がなされております。ウェバー社長はそのリスクは小さいと述べておられますが、その根拠を具体的にご説明願いたいと存じます。

貴社が繰り返し保証しておられる現行の年間180円/株の配当継続も覚束なくなってしまうのではないでしょうか。先にお願いしているように、買収統合後の新会社における、将来のキャッシュフローとEPSの見通しにつき、適切なご説明を頂くようお願い致します。

会社からの10月31日付回答書を添付します。

20181031回答書.pdf

上記の会社側回答書に対して、「考える会」が改めて提出した公開質問状は下記のとおりです。

2018年11月6日武田薬品工業株式会社代表取締役社長・CEOクリストフ・ウェバー殿 武田薬品の将来を考える会・別紙株主有志同代理人弁護士:村林 俊行〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-1-23虎ノ門東宝ビル9階ロア・ユナイテッド法律事務所TEL 03-3592-1791(代)

シャイアー社買収案件:臨時株主総会へ向けての公開質問状(追加質問)

拝 啓

秋たけなわの候、貴社に於かれましては益々ご清祥の段お慶び申し上げます。

平素は私ども「武田薬品の将来を考える会」(以下、「弊会」)の活動に関しまして格別のご理解とご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、掲題のシャイアー社買収案件に関しましては、弊会として断固反対の立場を表明しており、去る10月1日付にて弊会が把握している本件に関する問題点や疑問を「公開質問状」の形でまとめ、貴社宛てに提出するとともに、一部の機関投資家や報道メディア・ネット等にも同時に開示させて頂きました。

今般、貴社からは、その折お尋ね致しました4項目の質問事項に対するご回答を頂きましたが、その内容は全ての質問事項にわたって、表層的かつおざなりの回答に終始しておられ、弊会が真剣に危惧しているところの指摘に応えたものとなっておらず、内容的に全くの「ゼロ回答」であり、ウェバー社長はタケダイズムを遵守すると言いながら、その精神の最も大切な「誠意」のかけらも感じられません。回答書に記載されている回答拒否の理由としては、①情報はすべて株主に公平に提供されるべきであり、個別の株主に回答することは適当でない。②Takeover Codeを含む多くの法令の遵守しなければならない、というものでありますが、全ての株主が買収可否を判断できる材料を提供することは、会社側としてコーポレートガバナンス・コード第一章の基本原則1から導かれる当然の責務であります。現段階では株主として正に目隠し状態で議決権行使を要請しているとしか思えません。まずは、私どもの質問に対する真摯な回答をして頂き、全ての株主に対して公表することが肝要かと考えます。

一方、9月28日付の貴社ホームページのニュースリリースにて、本案件に関する臨時株主総会招集の為の基準日を10月19日と設定されたことにより、当該株主総会が年内にも開催される可能性が高まっております。

つきましては、前述の「公開質問状」の内容を茲許添付の別紙にて再度提出させて頂くとともに、新たに二項目の追加質問を提出させて頂きます。併せご検討頂くとともに、より明示的な形での貴社ご見解を、来たる臨時株主総会開催に先立ち、充分な時間的余裕をもってご回答頂きますようお願い致します。

なお、繰り返しになりますが、本件は日本経済史上最高額の買収事案であり、その過程は株主に留まらず広く国民の目に見える形で残すべきとの考えから、今回も、報道・メディア・ネットでも同時に開示する公開質問状の形を取らせて頂きます。事情ご勘案の上、今一度本買収案件が武田薬品工業の持続的な発展に不可欠なものかを真摯にご検討頂き、計画の見直し、或いは中止の判断を下されることを衷心よりお願いするものであります。

敬 具

2018年11月6日

シャイアー社買収案件に関する公開質問状(追加質問)

【質問事項1】 本件買収に伴う借入金の返済計画はどうなっているか。また買収後の1株当たりの利益(EPS)をどう予想するか。

買収には必ず正の面と負の面があり、その双方に関する情報なしに適切な判断を下すことはできません。特に本買収は7兆円に上る超大型案件であり、現在の武田薬品の財務余力を考慮すれば、失敗が即、会社の根幹を揺るがす事態に繋がる規模といえます。当然ながら株主としては議決権行使に当たってより慎重な判断が必要となるわけですが、現在残念ながらその材料となる客観的な情報が著しく不足している状況です。

例えば買収に当たって必要となる借入金の返済計画や、買収後の1株当たりの利益(EPS)の予想は、普通の感覚をもった株主であれば、買収に当たってまず確認したい情報です。しかし貴社はこれまで英国における買収関連法規制であるTakeover Codeを理由にこれら情報の開示を拒否し続けてきました。今回それでも再度質問申し上げるのは、このままではとても買収可否の適切な判断を下せないことに加え、借入金返済計画やEPS予想の開示を制限するTakeover Code等の根拠規定についても開示して頂けていないためです。

貴社がこれまで開示を拒んできた根拠についても、併せて詳細をお聞かせ願えればと存じます。

一方、現時点で貴殿が開示した情報といえば、僅かに買収・統合後にEBITDAが3倍になるというもののみです。しかしEBITDAは買収によるマイナス要因を取り込めないという欠点を抱える指標であり、そもそも一般的な会計基準に基づいたものですらないことはご承知の通りです。合計で6兆円にも上る借入を予定していながらその返済計画を示さず、買収計画公表後に1兆円も株式時価総額を下げていながら、買収後の株式の希薄化(約2倍)を前提に配当原資となるEPSの予想もせず、買収可否を判断する材料として開示するのはプラス面だけを拾ったEBITDAのみです。これでは株主に目隠しした状態で議決権行使を要請するようなもので、我が国経済史上最大の買収案件の実体がこれかと思うと情けなさすら覚えるほどです。弊会は、本件一つを取ってみても、シャイアー買収の危うさが逆説的に示されていると考えております。

もし貴社が本買収案件の危険性は充分に小さいと考えるのであれば、買収の可否を判断する材料として適切な情報を開示して頂くことを前提として、買収後の借入金返済計画や一般的な会計原則に基づく1株当たりの利益予想などを早急に明らかにして頂きたく、お願い致します。

【質問事項2】収益の基幹である血液製剤の分野で今後苦戦が確実視されるシャイアー社の企業価値に65%もの高額なプレミアムを設定した根拠は何か。

弊会が本買収案件に対して抱いている危惧は大きく二点です。一点目は武田薬品の財務余力に比して買収金額そのものが大きすぎること。二点目はシャイアー社に7兆円という金額に見合う価値があるとは思えないことです。一点目については質問事項の1で触れましたが、質問事項の2は二点目に絡んでお伺いするものです。

シャイアー社は、自ら「希少疾患と特殊疾患のリーディングカンパニー」と謳っている通り、同分野の売上高約82億ドル(約9,000億円)はグローバル製薬企業のなかでも最大です。しかし、希少病治療分野のほとんどの製品は過去2年間に行ったM&Aによって取得したもので、今後の成長力と次世代製品を開発するR&D体制についての問題は広く指摘されているところです。その顕著な例として2017年売上高世界第1位の規模を誇るメガ・ファーマ、ロシュ社グループの血液学分野での動きが挙げられます。ロシュ社グループのメンバーであるジェネンテック社は、米国食品医薬品局(FDA)に対して血友病治療薬・ヘムライブラの承認申請を行い、本年4月に画期的治療薬、6月には優先審査品目に指定されていました。ヘムライブラは有効性や投与頻度の点で従来品を上回ることから、売上が50億ドル(約5,500億円)となると予想する証券アナリストもいるほどで(BioSpace・2018年9月18日付レポート)、FDAは早速これを優先審査品目と定め、去る10月4日付で上記申請は予定通り承認されました。

ご存じの通りシャイアー社は血液関連治療薬を収益の基幹とし、同分野を世界で引っ張る立場にありましたが、もしヘムライブラの販売が米国市場で開始されれば、主役交代と共に多大な損失を被ることは確実です。つまり特定分野に照準を定めて寡占化を図るシャイアー社のビジネスモデルが、ロシュ等のメガ・ファーマを含めた他企業も開発に本腰を入れ始めたことで、今後は通用しなくなるおそれが高いことが、この事例からは読み解けます。それはすなわち、これまで強みだったはずの特定分野に集中するシャイアーの事業構造は、一つの失敗がただちに全体へ影響を及ぼす弱みへと様変わりする可能性を意味します。事実、同社の血液関連治療薬の売上は総額の4分の1です。シャイアー社は確かに見るべきところのある企業ですが、今わざわざリスクを冒してまで買収する価値があると本当にいえるでしょうか。

一方で貴社が本買収案件に当たって設定されたシャイアー社のプレミアムは約65%。報道によれば日系企業による買収プレミアムは平均30%程度とのことですので、平均の倍以上のプレミアムが設定されたことになります。ヘムライブラの市場参入が及ぼす影響について、遺伝子組み換え第8因子製剤の市場シェア減少を50%とする予測もある(メリルリンチ証券・7月5日付レポート:p.25)ところ、貴社ではその影響をごく軽微に見積もっておられるようですが、肝心の根拠についてはここでもTakeover Codeを盾に口を閉ざされています。繰り返しになりますが、買収価格の根拠もなしに、買収可否を判断することは困難です。本買収に於いては、シャイアー社に平均の倍以上のプレミアムを設定するという、特殊に過ぎる価格設定です。貴社が本買収案件を前に進めたい、そして本買収案件に自信をお持ちなのであれば、現在の設定価格を妥当だと判断された根拠を明らかにして頂きたく、お願い致します。

【質問事項3】本買収案件に関する取締役会議事録と取締役各位の発言内容を開示して頂けるか。

本買収計画が正式発表されるまでには、貴社経営陣にあってもメリット・デメリット両面からの慎重な検討や健全な議論があったものと思料されます。しかし貴殿を始めとした取締役の方々は、定時株主総会や記者会見等においても一方的に本案件の正当性を主張するばかりで、どのような経緯を経て 貴社の取締役会が本買収案件に最終的に承認するに至ったかが全く見えてきません。このままでは弊会としても、本シャイアー社買収案件は、企業存続の危機と株主の利益毀損を無視し、合理的な理由なく推進された無謀な経営判断と結論せざるを得ません。

貴社説明によれば、本買収案件を含め、貴社における経営判断は、社外取締役を過半数とする取締役会や各種委員会での審議を得た上でなされているとのことです。もしそうであれば本買収案件に関する取締役会議事録と取締役各位の発言内容を開示することは、本案件の経緯を知りたい弊会にとっても、また企業ガバナンスの健全性を広く示すことで本案件に対する信頼性を高められる御社にとってもプラスに働くものと考えております。そこで、貴社におかれましては、法的手続を経ずに任意にて本買収案件に関する取締役会議事録と取締役各位の発言内容を開示して頂けるか明らかにして頂きたく、お願い致します。

【質問事項4】武田薬品工業の持続的成長にとって、シャイアー社買収が唯一の手段でしょうか。

シャイアー社買収は目的ではなく手段であり、目的はあくまで武田薬品の持続的成長にあることは、貴社にも同意して頂けるものと存じます。弊会が一貫して問い続けているのは何故その手段がシャイアー社買収なのか、です。果たして武田薬品にとって、それだけが手段なのでしょうか。

現在の武田薬品工業に、画期的な新製品の創出が強く待たれるのは明らかです。また世界的にも新薬開発の難易度が年々高くなり、自社だけでの開発には限界があることも広く認知されているところです。かかる状況下、企業買収が一つの有効な手段であることも間違いないでしょう。

しかしながら、現時点で時価総額3兆円台の企業が総額7兆円に上る買収を断行し、新規借入3兆円を含めて借入金を6兆円にまで膨らませることが、武田薬品の持続的な成長に向けての唯一の手段とはどうしても思えません。

武田薬品の将来とは何でしょうか。常にそれを考えてきた弊会にとっては、現在貴社が行おうとしているのは事業構造や企業文化の違いを無視した単なる業容拡大でしかなく、とてもそこに武田薬品の将来を描くことは出来ません。貴社がグローバリゼーションを標榜して久しいですが、武田薬品のグローバリゼーションとは、武田薬品がタケダらしさを発揮し、世界でグローバルに必要とされる企業となることに他なりません。大型買収に血道を上げることは、むしろこれまで培ってきた歴史や企業文化といったタケダらしさを破壊することにはならないでしょうか。

弊会としてはシャイアー社買収に頼らなくても、例えばオープン・イノベーションへの取組強化、ライフサイエンス分野の産業クラスター創出、小中規模のバイオベンチャーの買収、さらには日本国内の製薬業界再編といった、武田薬品にしか出来ない、そしてシャイアー社買収よりも武田薬品の持続的成長に寄与する手段が他にいくらでもあると考えています。

弊会の目には今、何かに取り憑かれたようにシャイアー社買収に固執し、何を聞かれても買収の正当性についてのみの強弁を続け、マイナス面やそれ以外の手段については頬かむりする貴社の姿が映ります。最近、日本企業の海外買収で成功したと考えている企業の割合は1~2割という報道(2018年 8月30日付日経新聞)がありました。様々な理由はありましょうが、買収というある種一過性のお祭りのような状況の中で、いつのまにか買収それ自体が目的となってしまい、いざ統合が済んでみると、仕事の進め方も理念も異なる者同士が机を並べたところでうまくいくはずがないという、おそらく途中から薄々は感じていたはずの事実だけが厳然と残った、という経過もあったのではないでしょうか。これがまさに今、貴社が辿ろうとしている道です。立ち止まってよく考えて頂きたい。まだこの道を引き返すことが出来ます。果たして武田薬品にとって、シャイアー社買収だけが唯一の手段なのでしょうか。もう一度、弊会や武田薬品を心から愛する人々と、武田薬品の将来について共に考えて頂き、武田薬品工業の持続的成長にとって、シャイアー社買収が唯一の手段か回答して頂けないでしょうか。よろしくお願い致します。

【追加質問事項5】 コーポレートガバナンスの観点から、金融機関等の機関投資家と一般株主(外国人株主を含む)との間で、不公平な情報開示や利益確保の機会の提供が行われていないか。

コーポレートガバナンス・コードでは、その第一章で「株主の権利・平等性の確保」を謳っており、個人や少数株主・外国人投資家等を含めた一般株主に対する配慮として、第3章にて「適切な情報開示と透明性の確保」を求めています。今回の買収案件では武田薬品に融資を実行する金融機関や株式発行に関与する証券会社などの株主は、当然のことながら、その前提条件として将来キャッシュフローの説明を受けることになりますが、一般の個人株主(外国人株主を含む)等には、Takeover Codeを引用して、そのような情報はほとんど開示されておりません。両者に対する情報開示は平等ではなく、このような状況での議決権行使は、明らかにコーポレートガバナンス・コードで求められている株主の権利・平等性の原則に反します。

個人株主は株式を所有することにより株価が上昇するか、また適正な配当が継続実施されるかが主要な関心事項です。それに反し、今回一部の金融機関など何等かの形で買収案件にかかわる株主(機関投資家)は、単に株主であるのみならず、本来業務の一環としても大きなメリットを享受することになります。一般株主(外国人株主を含む)と株主の立場と融資等の債権者の立場を兼ねる機関投資家との間には、その意味でも不平等が生じています。(一部ではこのような状況を「利益相反」の可能性として指摘されています)。

なお、武田薬品の機関投資家(株主)となっている金融機関にとってはFiduciary Duty(受託者義務)の面からも大きな問題を孕んでいます。個人の金融資産を預かって運用している金融機関が、自社あるいはグループ会社の利益になるからといって、本買収案件に賛成票を投じるのは、道義的のみならずスチュアードシップコードの観点からも大きな疑問があります。年初より国内の大手製薬企業の株価が大幅に上昇する中で、武田薬品の株価は本買収案件がリリースされて以来25%以上も下落しており、買収実施以前の株式価値が本買収により2倍以上にも希薄化されるという事実を直視すれば、このような行為は公的に問題とされるべきで、少なくとも議決権の行使には慎重になるべきであることを機関投資家の皆さまに訴えていく所存です。

【追加質問事項6】 本買収完了後、新会社は約4兆円を超える「のれん代」と6兆円をも超える無形資産を抱えることになるが、減損リスクにどう対処するのか。

本買収は総額約7兆円に上る超大型案件であり、現在の武田薬品の財務余力を考慮すれば、失敗が即、会社の根幹を揺るがす事態に繋がりかねないことは、先に提出しました「公開質問状」にても述べさせて頂きました。「のれん代」に関しましては、武田薬品が現在抱える約1兆円に今回の買収でシャイアーの株価に約65%のプレミアムを付けたことから3兆円規模ののれん代が加わることにより、合わせて新会社が抱える「のれん代」は合計で約4兆円を超えることになります。

現在、武田薬品が採用している国際基準の会計規則(IFRS)では、「のれん代」の定期(定額)償却を行なう必要はありませんが、新会社の業績に当初の見込みとの大きな乖離が出て、「のれん代」の価値に深刻な毀損が生じた場合には、その処理は公認会計士の意見/見解に依拠することになり、厳格な減損処理が求められることになります。

又、買収に伴う製品に関連する無形資産は、武田・シャイアー社の既保有分を含め6兆3千億円から6兆7千億円に達すると会社は発表しています。一方、シャイアー社業績の中核製品であるアドベートやファイバ等の既存品を有効性や投与方法・頻度で大きく上回るロシュ社のヘムライブラの効能追加が、米国で予定通り10月4日に承認されたことから、シャイアー社の血液関連治療薬の売上も大きく下方修正されることを余儀なくされるリスクがあると報道されています。弊会が先の「公開質問状」で指摘させて頂いた通りです。このままでは、遅かれ早かれシャイアー社の血液事業だけでも約1兆円規模を超える減損処理を求められる可能性があります。この点、2018年7月5日付メレルリンチレポートでも同様の指摘がなされております。ウェバー社長はそのリスクは小さいと述べておられますが、その根拠を具体的にご説明願いたいと存じます。

貴社が繰り返し保証しておられる現行の年間180円/株の配当継続も覚束なくなってしまうのではないでしょうか。先にお願いしているように、買収統合後の新会社における、将来のキャッシュフローとEPSの見通しにつき、適切なご説明を頂くようお願い致します。

以 上

臨時株主総会へ向けての公開質問状_追加質問_20181106.pdf