坂根文書について

2019年6月25日

2019年6月17日付ウェバー社長への信任表明に対するコメント(反論)

武田薬品の将来を考える会

代表: 高山 郁

代表代行: 武田和久

先ずは、今回株主提案させて頂いた2項目の議案(取締役報酬の個別開示とクローバック条項の採用)について、招集通知に記述された会社側のコメントに対する反論を述べさせて頂きます。

1.第7号議案(取締役報酬の個別開示)の会社意見に対する反論

会社が日本の法令やコーポレート・ガバナンスコードを遵守していることを否定するものではありません。しかし、会社は、「第143回定時株主総会招集のご通知」30ページにおいて「当社は、バリュー(価値観)、すなわち当社の経営の基本精神に基づき患者さんを中心に考える、グローバルな研究開発型のバイオ医療品企業です」と記載して、日本発のグローバル企業を目指すとしています。この点、公開企業における役員報酬の個別開示は、米国、英国等の先進国では既に広く実施されている所です。そうだとすれば、株主・投資家に向けた十分な説明責任を果たすという観点からは、先進国において既に実施されている公開企業における役員報酬の個別開示を行うことが必要です。会社が「グローバル企業」であることを正々堂々と主張するのであれば、欧米でも標準的な役員報酬の個別開示についても報酬金額の多寡に拘わらずグローバルの論理をもって制度構築を行うべきです。因みに、日本の上場企業は2010年3月期から役員報酬の総額と年間1億円以上の報酬を得た役員の名前や報酬額を開示していますが、一億円未満の役員報酬については必ずしも開示されておりません。武田薬品もしかりです。日本政府としても、国際的に見劣りのしない開示を実現する目標を掲げており、役員報酬額の決め方等についての開示を義務付ける方向に動いていることから、この点は早急に改善されるべきであると考えます。

2.第8号議案(クローバック条項)の会社意見に対する反論

会社側は、本議案に反対する理由の大きな根拠として、第8号議案の「クローバック条項」を採用すると、①「事案毎の個別具体的な状況を適切に踏まえてなされるべき将来の判断の妨げにさえなり得ること」(「第143回定時総会における会社提案議案への賛成推奨について」4頁)、②「取締役の経営判断は不必要・不適切に保守的になり、過度に委縮することとなり、結果として株主の皆様の利益にならない」(「第143回定時総会における会社提案議案への賛成推奨について」4頁)を記載しております。しかし、第8号議案の「クローバック条項」に関する私どもの提案は、その詳細については諸事情を考慮して内容(責任原因・返還対象となる報酬の範囲・対象者など)・手続(報酬委員会の役割など)などについては「内規」で定めることを提案しており、内規において「きめ細やかな判断」のもと制度設計をすることにより、過度に取締役会、報酬委員会及び監査等委員会の権限や意思決定の機動性を縮小・制限させるものではなく、将来の判断の妨げとはならない制度構築をすることも可能です。

公開企業におけるクローバック条項は、米国、英国等の先進国では既に広く実施されている所です。そうだとすれば、グローバル企業を目指す会社においては、財務報告の不正を抑止し、経営者への不当な財産の移転を是正・防止し、株主との関係で公正性を確保するなどの観点からは、先進国において標準的な公開企業におけるクローバック条項を設定することが必要です。会社が「グローバル企業」であることを正々堂々と主張するのであれば、クローバック条項についてもグローバルの論理をもって制度構築を行うべきです。

次に、今般ISS が推奨したウェバー社長の取締役再任反対について、取締役会議長の坂根氏は「ごく一面の業績指標に焦点を絞った議論であり、会社の中長期の展望が正確に反映されていない」としておられますが、私ども「考える会」の考えは次の通りであります。

1. これまで会社が述べている業績ならびに業績予想については、一貫してコアアーニングスやEBITDAといった株主に誤解を招くような指標に頼っており、配当等についてもEPSやROEといった一般に公正妥当と認められる会計原則GAAP(Generally Accepted Accounting Principles)に基づいた指標による経営ならびに業績判断がなされておりません。「考える会」がこれまで要請してきているように、実際の配当原資となるEPSやGAAPベースのキャッシュフローに基づいた分析が株主に対して伝えられていないのです。この点は早急に改善し、株主に対してより説得力のある説明がなされるべきであると考えます。(例えば、2018年、2019年度も財務会計による純利益は大幅減益であるにもかかわらず、買収製品コストを費用認識しないコアーアーニングはM&Aをすると増額する指標であるので、大幅増益となっております。)

2. シャイアー社の買収・統合に関しては、昨年末の臨時株主総会に於いて「株主の90%の賛同を得て進めている…」との会社経営陣の主張がなされており、「考える会」としても、今更これを蒸し返して反対論を述べるつもりはありません。しかし、問題は当該決議がシャイアー社の買収価格の算出・評価方法について、株主に対する充分な説明がなされず、株主はいわば“目隠しをされた状態”で議決権を行使しなければならない状況にあったことです。この点に関して坂根氏は総会に於いて「ディールが完了次第、適切な説明と根拠を開示する。私どもは経営のプロであるので、今は黙ってお任せ頂きたい…」と述べられました。しかしながら、その約束はいまだに実行されていません。今からでも良いので、6兆2,000億円にも上るシャイアー社の企業価値を評価した根拠について簡潔明瞭な説明を頂きたいと思います。

3. また、坂根氏は会社の取締役会議長としての立場から過去にCEOを務めた小松製作所での過去の業績と栄光を引用して、武田薬品が業を成す医薬品業界における経営判断をも正当化しておられます。しかし、小松と武田では会社を取り巻く事業環境や産業構造が大きく異なることを明記しなければなりません。武田薬品の取締役会議長としては、事業構造の大きく異なる医薬品業界の特殊性をもう少し謙虚に分析して行動すべきであると考えます。

4. 次に、武田薬品における企業ガバナンスについてでありますが、シャイアー社買収案件について、坂根氏は、「取締役会で徹底した議論を重ねた結果、私を含む全取締役がウェバー氏のこれまでの実績とシャイアー社との統合を成功裡に完了させる彼の決意と能力を信じて、本件買収に賛同した…」としておられますが、このような、考えようによっては「無謀」ともいえる過大なリスクを抱える会社トップの経営判断に対しては、本来、会社経営陣、とりわけ財務担当などからの疑義や反対論が出てしかるべきであります。結果的に何の異論も出ず、取締役全員がウェバー社長の判断に対して盲目的に追従するというのは、会社(Going Concern)としての安定的な業績伸長を担保するためのガバナンスを働かせるべき社外取締役としての本来の機能が健全に機能しているとは認められません。

また、坂根氏のウェバー社長に対する信任表明では、「会社内に設置された監査・指名・報酬等の各委員会において社外取締役が過半数を占めている」ことから、その事実だけでガバナンスが守られているとしておられます。実質的には当該社外取締役の資質と考え方によって大きく左右されるものであり、現在の社外取締役の適性を改めて再考し、会社ガバナンスのあり方を再検証すべきであると考えます。

5. 最後に、坂根氏によるウェバー氏に対する信任表明に於いては、同氏の社長としての再任を強く推奨しておられますが、私ども「考える会」としては、ウェバー氏の再任には必ずしも反対するものではなく、むしろ、このような重要な経営判断を強行した責任者として、今後の新会社としての業績推移にしかるべき責任を全うして頂きたいと考えております。

この意味で、今回「考える会」より株主提案として提出した2項目の議案(取締役報酬の個別開示とクローバック条項の採用)はその為の社内ガバナンスをより効率的に機能させるための新たな枠組みとして捉えて頂きたいと存じます。また、今回の定時株主総会の招集通知における会社側反論では、「取締役の善管注意義務違反の有無に拘わらずクローバック条項の適用をすることは結果責任を問うものである…」との記述がありますが、私どもはそのような趣旨のことは一切述べておりません。今回私ども「考える会」が株主提案するクローバック条項の枠組みは、欧米の公開企業では企業ガバナンスの一角として既に広く採用されており、新生・武田薬品が真のグローバル・メガファーマ企業として更なる発展を遂げるためには必要不可欠なツールとなることを改めて認識すべきであると考えます。

以 上

2019年6月17日付ウェバー社長への信任表明(坂根氏)に対する反論_20190626.pdf

参考:坂根取締役会議長によるウェバー氏への信認表明

sakane-san-message_j-with-attachement.pdf