高度情報化社会において,膨大な情報を低コストに保存するハードディスクドライブ(HDD)は重要な工業製品です.現在,インターネット上に存在する情報の大半はHDDに保存されています.今後,人類が必要とするデータ量は年率35%以上増加し続け,東京オリンピックが開催される2020年には2012年比で約10倍の記憶容量が必要と予測されています.そのため,HDDのデータ容量を増加することや,データセンタにおけるHDDのエネルギ消費量を抑えることが,人類の継続的発展にとって重要課題となっています.このような背景のもと,本研究室では,データセンタにおけるデータ容量増加と消費電力削減の両立を目的に,HDDの制御技術に関する研究を行っています.
ハードディスクドライブ(HDD)は,主として,データの読み書きを行う磁気ヘッド,データを書き込むディスク,ディスクを回転させるためのスピンドルモータ,磁気ヘッドを移動させるための二つのアクチュエータ(粗動:Voice Coil Motor (VCM),微動:PZT アクチュエータ)から構成されています.
磁気ヘッド位置決め制御系め制御系では,制御量はディスク上にて一定間隔に書き込まれたサーボセクタから生成される位置信号であり,離散信号としてのみ観測可能となります.制御入力はVCMとPZTアクチュエータへ与える印加電圧であり,その値はマイクロプロセッサにより計算された値を用いて一定間隔で変化します.したがって,磁気ヘッド位置決め制御系はサンプラとホールドから構成されるサンプル値制御系となります.