研究概要

研究の目的

2019年1月からの新型コロナウィルス感染症の流行により、大学では急遽、オンライン授業への対応をせまられました。

本研究では、コロナ禍前、コロナ禍下、そしてコロナ禍後の高等教育におけるICT活用教育の現状を教員個人を対象とした縦断調査により明らかにし、その結果を基に大学教員のICT活用度の診断モデルを構築することを目的としています。最終的には、その診断モデルに基づき、高等教育の現場において教員個人がどのようにICTを活用しているかの典型例を示すと共に、ICT活用教育の促進に向けての効果的な取り組みに関する知見の蓄積を目指します。

研究の背景

日本政府が策定する第3期教育振興基本計画でも述べられている通り、アクティブ・ラーニングの展開を伴う大学教育の質向上は課題の一つであり、その解決のために高等教育におけるICTの利活用の推進は重要と考えられます。

しかし、大学ICT推進協議会が各高等教育機関を対象に2017年に行った調査(大学ICT推進協議会 2019)によれば大学のICT活用教育においてICT環境の整備や全学的な推進組織の設置など組織的な取り組みが進んでいることが覗える一方で、実際のICT活用状況はあまり進んでいません。また、一般的な大学教員が授業においてどのような狙いに基づいてICTツールをどのように活用しているかといった詳細については、実践研究やFDによる取り組みなど個別の事例は出ていますがその全体像が明らかになっていません。従って、高等教育におけるICT活用を実践的なレベルで促進させるためには、次の段階として、教員個人におけるICT活用の現状を改めて踏まえた上で、一般の教員をエンカレッジメントしてすそ野を広げていく仕組みづくりが必要と考えられます。

このような仕組み作りの一環として、まずは、大学教員が自分の授業等におけるICT活用度の程度を確認し、自己研鑽できる仕組みを整えたいと考えました。この目的のために、大学教員を対象に調査を行ない、その結果に基づいて授業等におけるICT活用診断モデルの構築を目指しています。

なお、私たちはこれまで大学教育のICT活用黎明期ともいえる2000年代から「大学教員のIT利用実態調査(独立行政法人 メディア教育開発センター実施)」、「ICT活用教育の推進に関する調査研究(放送大学学園)」、「高等教育機関等におけるICTの利活用に関する調査研究(京都大学)」、そして 「高等教育機関におけるICT利活用に関する調査研究(大学ICT推進協議会)」などに調査メンバーとして参加し、日本の高等教育における組織的なICT活用教育の推進について調査を行ってきました。それらの結果とも比較することで、より長期的な視点から今後のICT活用について考えていきます。