作曲家という職業を私たちは狭い視点からしか見ることができない。それは出来上がった作品を耳にした 時にはよほど注意深く調べないと消え失せているものだから。音楽作品 はアプリオリに「芸術的」であり、銭金を論ずることなど見当外れだと 勝手に私たちは思い込んでいる。しかし、事実は違う。作曲家はバッハもモーツァルトもベートーヴェンもプロコフィエフもそれぞれの懐事情 を抱えていた。それも深刻な。ワンコイン市民コンサート登場第3回目の田中正也さん。今回は、音楽の様式というものが私たちの想像を超えて、実は非常に切実な動機によって進歩を遂げてきたことが分かるようにプログラム・ビルディング。 年の瀬にぴったりのテーマ?
プログラム
D. スカルラッティ:ソナタ d-moll K.141
W.A. モーツァルト:幻想曲 d-moll K.397
L.v. ベートーヴェン:ロンド・ア・カプリッチョ G-dur.Op.129 〈失われた小銭への怒り〉
F. メンデルスゾーン:無言歌集より ”ヴェニスの舟唄” Op.30-6
R. ワーグナー=F. リスト:イゾルデの愛の死
S. プロコフィエフ:束の間の幻影 Op.17より
S. プロコフィエフ:戦争ソナタ第6番
A.シェーンベルク:ピアノの為の組曲 Op.25
武満徹:雨の樹 素描(1982)
田中正也
福岡市生まれ。15 歳で単身モスクワへ。繊細かつ大胆な感性をもつピアニストとして内外で演奏活動を展開。
クラースヌィ・ディプロマを授与されモスクワ音楽院を卒業後、ローム・ミュージック・ファンデーションより奨学金を得てモスクワ音楽院大学院修了。ネルセシアン、ヴォスクレセンスキーの両氏に師事。 カントゥ国際ピアノコンチェルトコンクール(伊)第1位・リスト特別賞,スクリャービン国際ピアノコンクール(仏)第1位・審査員特別賞等、受賞多数。 国立サンクトペテルブルグ カペラ交響楽団・サマーラ国立交響楽団・九州交響楽団等ほか、2017年都民芸術フェスティバル オーケストラ・シリーズにて東京フィルハーモニー交響楽団と協演。
2008年始動したプロジェクト「プロコフィエフピアノ曲全曲演奏シリーズ“エクスクールスィャ”」はモスクワでも高評を得て、2012年プロコフィエフ博物館ホールにて邦人初となる全ロシア グリンカ記念音楽文化協会主催演奏会をオールプロコフィエフプログラムで開催、2013年 プロコフィエフの誕生日に同ホールでの没後60年メモリアルコンサートにも招聘されるなど、プロコフィエフのスペシャリストとして期待されている。2017年プロコフィエフゆかりのリヒテルの家記念館(モスクワ)にてソロリサイタル開催。 2018年アレグロ青少年国際コンクール(ロシア)の審査員に招かれる他、エルミタージュ美術館で学芸員とのコラボコンサート、モスクワ音楽院ラフマニノフホールでのリサイタルなど、ロシアでの活動も著しい飛躍をみせている。
2010年宗次ホールで始めた 田中正也おしゃべりコンサート♪「魔法のピアノ」は楽しいお話と超人的な演奏で人気となり、全国に拡大中である。
音楽誌への執筆を手掛け、レクチャーコンサートや幼稚園・学校でのアウトリーチを行い、私立中高PTAを対象とする教育講演会「演奏と講話」も好評を博す。録音活動も精力的に行い、2013年「田中正也 プレイズ リスト&ショパン」、2014年「The 展覧会の絵」、2017年「リラの花」(ナミ・レコード)の各CD は音楽誌で高い評価を得、2015年リリースした 鐘~ロシア~ピアノ・デュオの世界 田中正也&佐藤卓史(ナミ・レコード)は、「レコード芸術」2016年2月号特選盤に選ばれた。
日本・ロシア音楽家協会会員。日本演奏連盟会員。大阪芸術大学演奏学科講師。