自然界を見渡すと、目に見えるレベルで綺麗なパターンがたくさんあります。たとえば、雪の結晶が水分子で構成される一方、生体組織は様々な小さな分子から組み上がり、マクロな幾何学構造をあらわにします。これは、物質そのものにだけ由来している訳ではなく、外的な環境が強く作用した結果です。変化する外界環境に適応できるように生命が進化した結果、多様な空間パターンやリズムが生まれています。
物理環境を制御して、高分子などのソフトマテリアルからパターンを創り出す研究は歴史的に長くなされています。そこにはスケールを超えた物理や数理が潜在し、生物もそれらを取り込んで活動し成長しています。直近の研究で我々は、生体高分子の多糖が自らパターンを再構築する現象を発見しました。特に、一つの界面が複数に分割する「界面分割現象」に取り組んでいます。この際、パターン形成の特徴:対称性の破れ、非同期性、さらに、高分子種に依存しない普遍性の解明に至っています。ここで、なぜ、どのように、パターンをつくるのか?物質群の根底に在る法則性とスケールを超えた普遍性について、その意義理解をテーマとしています。
自然が創り出した多糖は、どのように分子スケールを超えて幾何学パターンを生み出すのか?特に、乾燥環境下で多糖が見せるパターン形成の法則を検証しています。DRY でWET な非平衡環境下、ミクロにもマクロにも多糖が水中から再び組織化してきます。実際の生体組織が常に乾燥環境におかれながらも、 WET なからだを維持していることを振り返ってみれば、水中から陸上進出した生体高分子の進化を紐解く鍵があるはずです。
Biomacromolecules 2016, Sci Rep 2017, J Colloid Interf Sci 2019, Polymer J 2020 (Focus Review), Adv Mater Inter 2023, Adv Sci 2025, etc
生体高分子、合成高分子に関わらず多くのソフトマテリアルは、界面の応力制御によって分子形態を様々に変化させます。事実、ほんの小さな環境の違いや僅かな力学的エネルギー負荷によって、多様なパターンを現します(自己集合、自己相似など:図参照)。特に、水などの溶媒が蒸発する界面は自然界に共通する重要な場です。これを利用して環境に適応する先端材料を設計したいと考えています。
これら「自然美の探究」を基に、現象の普遍法則とそのメカニズムの探索・理解が究極目標です。そして、生物がなぜパターンを創るようになったのか?自然科学の大命題に挑戦しています。
Sci Rep 2015, Sci Rep 2017, Adv Funct Mater 2018, Small 2020, ACS APM 2022, Langmuir 2024, etc
太陽光エネルギーをうまく使う方法はないのか? これは、環境問題やエネルギー問題を抱える現代において地球規模の最重要テーマです。解決のヒントとして、植物の光合成が注目されていす。すでに使われている太陽電池はその一例で、最近では「人工光合成」という概念の研究が進んでいます。我々は、実際の光合成に倣った光エネルギー変換システムを構築し、「人工葉緑体」を作りたいと考えています。
これまでに、分子論的観点、およびシステム論的観点から、さまざまな人工光合成システムが考案されています。しかし、実際の葉緑体が持つ水分子との連動組織が未だ達成されていません。一方我々は、高分子の網目構造を工夫することで、可視光エネルギーによる「酸素発生ゲル」と「水素発生ゲル」をこれまでに構築しています。さらに、高分子の相転移を利用したシステムを設計しています。高分子が伸びたり縮んだりする動きを利用して、新しいコンセプトの人工光合成システムに挑戦しています。
Soft Matter 2009, Adv Funct Mater 2010, Small 2011, Angew Chem Int Ed 2019, Chem Commun 2024, Chem Commun 2024 (Feature Article), etc