九州大学

入試対策アドバイス

「第2回 九大プレテスト 解答解説集より抜粋」

英語

  1. 論理的な読解力を身につけよう

出題される英文や設問は論理性に富んでいます。漫然と日本語に直しながら読むのではなく、筆者の主張とサポート(理由や例)の読み分けを日頃の学習で意識しましょう。2021年度入試ではこれまで以上に「抽象→具体」という基本ロジックに沿った設問が多く出題されています。また限られた時間内で膨大な量の英文を読み、さらには作文が2題あるとなると、文ごとに丁寧に読解をしている暇は持てないでしょう。読解が「和訳」で終始することなく、文と文のつながり、段落同士のつながり、ディスコース・マーカーによる論理展開から全体の流れまで意識する論理的な読解をできるようにしていきましょう。


  1. 速読力を身につけよう

スピードリーディングのスキルはどの大学でも必要ですが、分量の多い九州大学に対応するためには特に必要なスキルです。この力を養成していくためには、「論理的な読解力」はもちろん、1文ごとの構造を即把握できる構文力も必須です。さらに、瞬時の構造・内容把握力を高めるために科学的に有効とされている「音読」は必ず取り入れてほしいものです。英語は音声言語と言われるほど、語と音がリンクしています。復習がある程度こなせた英文は随時音読対象にしていきましょう。また、音読は反復学習にあたるため、自然と語彙力も身に付きます。


  1. ボキャブラリーを強化しよう

九州大学の入試で求められるボキャブラリーレベルは国公立大学のなかでも標準~やや難レベルにあたります。単語帳が完成している場合は、授業や問題集等で学習する長文読解問題で出会った単語で重要度の高いものからどんどんストックしていきましょう。


  1. 様々な設問形式に対応できるようにしておこう

2021年度入試は全て記述式で、長文は内容説明問題が中心でした。ただし、これまでは、選択式の「内容一致問題」「語意決定」「未知語意味判定」「空欄補充」「文挿入」など様々なタイプが出題されています。問題の旧型式が復活する年度もあるため、記述式のみに絞らず総合的に対策をしていくことが有効です。


  1. 日本語の表現力を強化しよう

内容説明問題では日本語で解答する比重が大きいので、自分以外の人が読んでも正確に意味を理解してもらえる日本語を書く訓練が必要です。慌てて質の低い日本語を書きなぐることを繰り返しても表現力は向上しないので、制限時間内でまとまりきらなかったものは、時間をかけて落ち着いて解答する習慣をつけましょう。そのうえで、先生に添削依頼をしてフィードバックを受ける、また友人同士で答案を交換して添削し合うという手法もおすすめです。


  1. 英作文を学習ルーティーンに組み込もう

自由英作文はライティング開始前の準備で8割以上出来が決まると言われています。事前準備とは、ブレインストーミングやエッセイの設計図である構成メモを作成することです。本番で最も怖いのは見慣れないトピックが出題されアイデアが浮かばず、一貫性のないエッセイを書いてしまうことです。そのためにも日頃から様々なトピックに触れ「ネタ」を増やしていきましょう。数をこなしていくと、違うトピックでも以前考えたトピックのネタが使えることもあります。友人と時間を測って一緒に始め、その後お互いの構成メモやアイデアを共有すると一度で2倍の情報量を手に入れることができるためオススメです。


文系数学

 標準的な問題が多く難問はありません。高校の教科書の内容理解の徹底が攻略のカギです。定理などは丸暗記するのではなく、証明までも含めて理解しておきましょう。それができたら次に例題、類題の練習を通じて習熟をはかっていきましょう。「思考力、判断力、表現力」を重視する傾向にあるため、そのような流れを考慮しつつ、以下3点を留意しながら対策を進めていきましょう。


  1. 思考力をつける

丸暗記では通用しない問題が増加するでしょう。解法が思い浮かばないときはほかの発想や切り口を考えてトライすることが重要です。例えば、図形の性質を用いて解けない場合はベクトルを導入するとか、座標で考えてみるなどです。どうしても分からないときは模範解答をよく見て研究しましょう。その一つ一つの積み重ねが思考力アップにつながります。


  1. 記述力・表現力をつける

採点者に伝わる答案づくりを行いましょう。自分だけ分かっていても意味がありません。普段から模範解答を見て書き方をまねし、論理をすすめる場合はその根拠(どんな公式、定理、性質を用いたかなど)を必ず示す習慣を身につけておきましょう。


  1. 集中力をつける

限られた時間で素早く正確に解答する必要があります。計算力をつけて、ケアレスミスのないように日頃から心がけて練習を行いましょう。計算もちょっとした工夫で手間が省けるものもあるので、普段からその点も考慮に入れながら問題に取り組むとよいでしょう。

系数学

 九州大学理系数学の問題は、いわゆる難問と言われるようなものはほとんど出題されません。標準的な問題を確実に得点につなげる解答作成力と、基礎的なことを組み合わせた融合問題に対応できる応用力が求められます。そのため、日頃からどの分野もまんべんなく学習し、教科書の基本事項を正確に理解して使い方を習得しておくことが必要です。それに加え、ただ解法を丸暗記するのではなく、なぜそのような解法になるのかを常に考える習慣をつけることが大切です。最低でも過去10年分の問題を研究し、入試傾向を把握するだけでなく、今の自分に何が足りず、何を学ぶべきかを知ることが最良の対策です。

現代文

 九州大学の現代文の出題については、数年同じような形式が続いています。内容は、さまざまな分野から出題されているため、日頃から新聞を読み、幅広く社会の問題を把握し、哲学論や文明論、社会を論じた文章など、抽象的な内容を扱った新書などを読んでおくとよいでしょう。文脈をきちんと押さえ、論旨を正しく把握しているかを問うものが中心です。指示語があれば、その指示内容をきちんと認識し、その上で本文中の語句を使用しながら、自分なりの説明ができるようにまとめる練習をしておきましょう。また、本文の導入部で問題提起がなされることが多いので、それを押さえたうえで各段落の内容と、段落間のつながりを確認しながら読み進めましょう。最後の部分にまとめにあたる内容が来ることが多いので、導入部との対応にも目を向け、全体的な構造にも注意を払う必要があります。

 現代文の学習においても、語彙力を高めておくことは重要であり、そのためには、意味の曖昧な語句があれば、辞書で確認し、折に触れて復習することが大切です。漢字の練習も、語彙力を高めるという意識で地道に取り組みましょう。

 本文の素材としては中古(平安時代)から近世(江戸時代)まで幅広く、ジャンルも多彩です。九州大学の設問は、現代語訳、語句の意味、動作主の把握、文法、内容把握、心情把握と多様ですが、基本は本文の正確な解釈にあります。傍線部だけで答えを出そうとせず、しっかりと読解を行いましょう。

 現代語訳の問題では、接続助詞などの訳出を疎かにしたり、文と文との関係を読み間違ってしまうと大きな失点につながってしまうので、基本的と思われる文章を前にしても、正確な訳出を心がけましょう。文学史については、年表を前に既に習った作品の作者やジャンル、その大筋を言えるかチェックしておきましょう。記述問題の答案は、解答例と照合したり、先生に添削をお願いするなどして実力向上に努めましょう。

 九州大学の漢文は漢代や唐代の思想的、史伝的な文章から、清代の随筆などの文学的文章まで幅広く出題されています。出題される素材については、出典そのものは広く知られていなくても、内容としては受験生が教科書で親しんでいる話題や展開のものが多いので、本文そのものの読解にひどく困難を感じるということはないでしょう。

 説話的内容や小説などの文学的な素材から多く出題されていますが、思想などの論理的文章、漢詩の出題や日本漢文の出題にも気をつけたいところです。特に漢詩は出題されると点差が大きくつき、解答に要する時間も個人差がつきやすいです。それらの問題にあたる際には丁寧に取り組みましょう。

 設問は書き下し文と解釈が大きな柱であり、日頃の学習が正当に報われる内容となっています。正確な書き下し文の作成には文語文法の習熟が不可欠であり、いきなり書き下し文を作るのではなく、まずは大まかに解釈する必要があります。自分の作った書き下し文を訳してみて不自然な訳にならなかいかを確認するとよいでしょう。解釈の問題では、傍線部だけでなくその前後関係にも注意しましょう。主語の取り違えによる思わぬミスを防ぐためです。

 文学史については2011年以降、漢文学史の出題は易化しています。まずは、九大で過去に出題された文学史問題のレベルに対応できるようにしておきましょう。出題歴のある書名や作者については漢文学史の年表で時代を確認しておきましょう。

物理

 例年大問1は力学分野からの出題です。九大の力学は見慣れた素材をもとにして、基本的な問いから始まり、少しずつ条件を変えながら情報量を増やしていきレベルを上げて受験生を振り落とす形式のものが多いです。大問2は電磁気分野からの出題、大問3は熱力学または波動の分野からの出題が例年の傾向です。

公式の導出とその公式の使える条件と使い方に注意し、以下の3点に気を付けて学習をすすめてください。

① 苦手分野をなくす

② 過去問を通じて、やや長めの問題やグラフの描写に慣れる

⓷ 実験、結果、考察という手順に慣れる

化学

 九州大学の化学においては、2020年度入試までは大問5題での出題でしたが、2021年度は大問4題での出題となりました。例年よりも大問1題が減少し、理論分野の出題割合が減少しましたが、総解答数前年との差はあまりありませんでした。

 出題形式は、例年記述式が主体で、空所補充(記述式、選択式)や計算問題が出題されています。正誤選択問題や正誤判定問題も出題されており、「すべて」選べという問題、グラフを選択させる問題や、図から考察させる問題もあります。また、有機分野では記入例に従って構造式を書かせる問題も例年出題されています。

 例年、基本的な問題から応用力を問うような問題まで幅広く出題されており、教科書レベルの基本的な問題はミスすることなく確実に得点できるようにしましょう。近年は、教科書の本文以外の発展的内容を題材とした問題や、見慣れない形式の問題も多く出題されるようになってきました。そのような問題を見極めて、制限時間内にどの問題から取り組み、確実に解かなければならないのかの判断力も求められます。特に、化学平衡や気体を題材とした理論分野の難問はよく出題されています。基本的な知識を活用させて、思考力を問う問題にどれくらい対応できるかが大切です。

 今後の対策として、教科書の重要語句を正しく理解し、本文だけでなく図や表までしっかりと目を通して、基礎・基本事項を丁寧に学習しておく必要があります。ただ語句や現象を覚えるのではなく、なぜそうなるのかという理論的な背景まで理解しておきたいところです。教科書レベルの知識があればすぐに解ける問題も多くみられるため、時間をかけずに確実に得点できる分野を広げていきましょう。

生物

 2021年度入試では、論述量が前年の540字から710字に増加しており、時数制限のないものも含めると、論述量は大幅に増加しました。問題は、基礎から標準的なものが多いですが、一部で発展的な考察問題もみられました。

<論述対策>

 例年、論述問題1問で要求される文字数は、50字前後が多いです。書くべき内容は平易なものがほとんどなので、問題を読んでいる段階で浮かび上がるイメージをすぐに言葉で書き表せるように、日頃からスピード感のある鍛錬が求められます。必ず字数制限を守って自分の言葉で表現することを心がけて練習しましょう。

<網羅的な学習>

 例年扱われるテーマは生物基礎、生物からバランスよく出題され、大きな偏りはありません。全単元を網羅的に学習し、苦手意識をしっかりと克服しましょう。

<基礎用語の定着と運用>

 点数のベース、発展問題のスタート地点で必要になるのは、基本的な用語の知識です。各大問で知識問題も問われますが、このような基礎的な出題での失点を、論述や考察問題で取り返すのは至難の業です。用語を正確に理解することで基礎問題を安定して解けるようになるだけでなく、論述問題の解答の制度やスピードが変わってきます。教科書や図説に記載されている基礎事項を的確に運用できるように基本に立ち返ることも大切です。

<時間配分>

理科2科目150分で行われるため、各科目に要する時間配分を誤ると大きな失点につながってしまいます。すぐに解答がイメージできない論述などは後回しにして、すべての問題に目を通せるように時間配分しましょう。

世界史

 九大文学部対策はまず教科書の熟読からです。しっかりと読み込んで、先史時代から現代までの全範囲において、個々の歴史事項の知識定着を図りましょう。とくに、苦手分野の知識の補強を徹底することが大切です。また、世界史の得点アップのために最も大切なことは、固有名詞や年代等の暗記以上にその内容や因果関係の把握です。個々の歴史事項を互いに結び付けている因果関係(歴史の流れ)やイメージの習得に力点を置いて学習しましょう。

 また論述対策としては、九大の過去問はもちろん、他大学の過去問に挑戦してみましょう。東京大学の過去問が出題傾向としても時数の点でも最も近いです。ほかには、筑波大学や京都大学の過去問なども、論述力の鍛錬には大いに役立ちます。

日本

 今後の対策は以下5点に気を付けて学習しましょう。

〇 教科書に掲載されている歴史用語は、正しい漢字で記述できるように

〇 30字程度で、歴史用語や歴史的背景などが説明できるよう練習

〇 論述では60字~100字で頻出のテーマに関しては必ず論述演習を行い、添削をしてもらって理解を深める

〇 過去問から、戦後史に関する出題は頻出なので、苦手な意識をもたないように対策

〇 文化史に関する問題が出題される可能性が高いため、図版や写真を用いた問題は、教科書などに記載されているものを確実に理解

地理

 九州大学の地理は、一般的な論述問題を出題する大学と比べても文字数は、900~1000字程度と多い部類に入ります。単なる知識の暗記ではなく、統計データの特徴を読み取る力や文章をまとめる論理的思考力が求められます。150字~300字程度で述べさせる問題が多く出題されており、九州大学の過去問だけではなく、同様の論述式を出題するほかの国公立大学の問題も解くことにより、経験値を高めておきましょう。論述式の問題を解くことにより得られた思考力は、共通テストのマーク式においても十分に活かすことができます。頑張りましょう。

小論文

 以下4点に注意して対策を行いましょう


  1. データの分析力をつける

複数のデータを分析させる問いが今まで出題されており、単に一つのデータを読み取るのではなく、複数のデータを読み取る力が必要です。またそれらのデータをただ並べるだけではなく、自分なりに整理したうえで説明する力も求められる。さらに、2019年度入試のように一般的に予想される現象が、果たして結果として読み取れるかをほかのデータを使って分析・考察するという難易度の高い問題も出題されています。データの数値分析、そのデータが意味するところを説明できる能力、複数のデータから何が予想されるかを推測したり、複数のデータを使って現象や課題を説明したりする能力が必要です。


  1. テーマは現代の世界・日本の課題であり、それらについての関心をもつ。また、同時に複数の視点で解決を図る考察も必要

共創学部の小論文のテーマは「人工知能」「食品ロス」「温暖化」「世界遺産」「複合災害」「オリンピック」など具体的な内容に踏み込んでいます。教科書で全般的な現代社会の課題について一通り押さえることはもちろんですが、同時に白書、新聞やニュース、新書を活用して、現代的な課題を具体的に理解するように努めましょう。さらに世界の課題は、一方の解決策を取れば、さらに他方で課題が生じるなど、「難問(アポリア)」も多いです。対策については長所や短所をそれぞれ比較しながら、より効果的な方法を模索していく姿勢が必要です。

 

  1. 資料や文章を自分なりに整理してまとめる力をつける

過去の設問では、複数の資料を読み「整理し記述しなさい」という指示があります。資料にある文言を部分的に切り取って、それをつなぎ合わせただけでは、出題者の指示に応じたことにならないでしょう。文章であればその文章の要約力、資料そのものであれば内容を理解しつつ、資料から自分で構成を考えて説明できる力を身につけることが必要です。


  1. 論理的な説明をできる力を養成する

小論文の答案で最も大切なのは、論理的に説明しているかどうかです。そして、出題者の意図にそった答案の形式を作ることができるかが重要になります。前者に関しては、自分の主張には根拠を示すこと、後者に関してはまず問いを正確に把握することが必要です。次に問いから文章の構成を考えたうえで答案を作成する。論理の展開については、根拠を直接説明する、自分の意見に想定される反論を踏まえたうえで説明する、事例を交えてより効果的に説明する、なだ様々な方法を学習し、問いにあわせてより説得力ある論理展開を導けるように、練習を積み重ねましょう。