慶應義塾大学先端生命科学研究所が主催する「第15回高校生バイオサミットin鶴岡」の成果発表部門に自然科学部3名が参加し、審査員特別賞を受賞しました!
自然科学部は2019年に化学部、生物部、天文部の合併により新設されました。令和7年度は高1から高3まで27名が在籍しています。化学系は天然物研究班、電池研究班、金属葉研究班などのグループに分かれて、研究内容を決めてお互いに協力しながら実験しています。生物系はウニやミズクラゲなど実験生物の飼育を行い、観察や実験を行っています。また令和6年度から天文系の活動として年2回(夏・冬)天体観察を実施しています。部員たちは基本的にすべての班の実験内容を共有し把握しながら、その中で自分の専門を1つ決めて研究に取り組んでいます。研究成果は大学や学会等が主催する発表会で積極的にアウトプットし、大学教授や研究生から直接アドバイスをもらって次の実験につなげています。
【平日】週2、3回(火・木・土)の放課後~18時で活動しています。学校行事等で変更になる日もあります。
【休日】基本的に活動はありませんが、発表会の前や実験サンプルの調達など、必要に応じて不定期で活動しています。
※2・3学期に学会発表が集中します。1学期のうちに「どの学会でどんな研究発表をするか」を決定し、研究に取り組みます。
【8月】
●高校生バイオサミットin鶴岡(慶應義塾大学・先端生命科学研究所) 審査員特別賞受賞(2025年度・成果発表部門)、決勝戦進出(2024年度・計画発表部門)
●天体観察会(夏季)新潟県魚沼市自然科学館「星の家」
【9月】
●日本植物学会・高校生研究ポスター発表(日本植物学会)
●葉牡丹祭校内展示・発表
●高校生理科研究発表会(千葉大学) 奨励賞受賞(2022年度)
【10月】
●高校化学グランドコンテスト(芝浦工業大学)
【11月】
科学研究発表会(高文連自然科学専門部)奨励賞受賞(2025年度)
【12月】
●日本分子生物学会年会・高校生発表(日本分子生物学会) 口頭発表(2024年度・2025年度)
【1月】
●天体観察会(冬季)
【3月】
●日本金属学会・高校生高専学生ポスター発表(日本金属学会) 優秀賞受賞(2023年度)
●化学クラブ研究発表会(日本化学会・関東支部) ポスター賞受賞(2022年度)
●ジュニア農芸化学会(日本農芸化学会)
●高校生生物研究発表会(日本植物生理学会)
●高校生サイエンス研究発表会(第一薬科大学・日本薬科大学・横浜薬科大学)
●APPW2025(日本解剖学会・日本生理学会・日本薬理学会合同大会)
●つくばサイエンスエッジ・アイディアコンテスト(JTB・産総研ほか)ブースプレゼンテーション選出(2024年度)
魚沼市にある自然科学館「星の家」に天体観測に行ってきました!
オペレーターの貝瀬先生に、星の見つけ方や双眼鏡での星座や星団の観察の仕方を詳しく説明してもらいました。
「星の家」自慢の口径400mm反射式天体望遠鏡 です!
ドームの外側はベランダになっていて、満天の星空を満喫できました。
目の前に広がる天の川。本物を見たのは、生まれて初めてです。
夜空のどこを見ても星星星。肉眼では暗く見える部分でさえ、双眼鏡で見ると星がぎっしり詰まって見えます。
アットホームな雰囲気の民宿「治兵衛」さん。お世話になりました!
令和6年11月の日本分子生物学会年会ではたくさんの先生方にアドバイスを頂き、特に東京情報大学の田中啓介先生には熱心にお声かけ頂きました。後日改めて先生の研究室にお邪魔し、お話を伺ったところ、共同研究として私たちの実験を後押しして下さることになりました。田中先生は昨年度まで東京農業大学生物資源ゲノム解析センターで研究されており、次世代シーケンサーを用いたDNAプロファイリングの研究に取り組んでおられます(東京情報大学は東京農業大学の兄弟校として1988年に千葉市に開学しました)。今回は、私たちが実験に用いているカラシナと大浦ごぼうのサンプルを次世代シーケンサーで分析し、結果を共有して頂けることになりました。年明けから始まる共同研究がとても楽しみです。
東京農業大学世田谷キャンパスにて。カラシナと大浦ごぼうを洗います。
株ごと、部位ごとに細かく分けたサンプルを、マイナス80℃で凍結保存します。
田中先生の研究について、ポスターを使って詳しく教えて頂きました。
MSやHPLCなど、最先端の分析機器を紹介して頂きました。
コロナ禍で有名になったPCRですが実物を見るのは初めてでした。
イルミナ(株)の次世代シーケンサーです。
いよいよ実験スタート!飛沫によるコンタミ防止のためマスク必須です。
RNA抽出実験。不安定な物質であるため、スピードと正確さが要求されます。
日々のルーティーンにこそ価値がある。先生の流れるような実験操作が体現します。
遠心機でRNAと不純物とを分離します。
吸光度計で濃度チェック。RNAをしっかり抽出できていました!
農大の学食でお昼を頂きます。安くてボリュームたっぷり!
冬季天体観察会を行いました。夏季観察会では突然の雷雨に見舞われ満足な観察ができませんでしたが、今回は天候にも恵まれ、すばらしい星空の下で観察に臨むことができました。学校の屋上から見る日の出は格別でした。
芥子菜(カラシナ)はアブラナ科アブラナ属の二年草で、中国や中央アジアが原産と言われています。自家不和合性のため交雑が進み、食用として市販されるアブラナ属だけでも30種ほどが知られています。カラシナは高菜と同じBrassica junceaに分類されるそうです。私たちは先輩から引き継いだ植物成分の研究に取り組むなかで、このカラシナに関する2つの興味深い文献を見つけました。1つは、カラシナを鋤き込んだ畑で栽培したホウレンソウは、そうでない畑に比べてホウレンソウ萎凋病(いちょうびょう)になる確率がほぼゼロになるというものです。アブラナ属の細胞に含まれる芥子油配糖体から生じるイソチオシアネートはダイコンの辛味成分としても有名で、これが天然の殺菌剤として働くことで萎凋病の原因であるフザリウム属菌(いわゆるカビ)の繁殖を防ぐそうです。この仕組みを他の作物栽培にも応用できれば収穫量を増やすことができるのではないかと考えました。2つ目は、カラシナは有毒な重金属である鉛を根からよく吸収し、土壌から除去するというものです。植物の力で環境を改善する技術をファイトレメディエーションといい、カラシナの特性が他の重金属にも有効かどうか調べたいと思いました。近年、世界的な異常気象で作物被害が多発し、またアジア新興諸国ではデジタル機器の処理等で生じる重金属の土壌汚染が深刻です。私たちはアジアで広く食されるカラシナの力でこれらの問題に取り組み、食糧問題の解決につなげたいと考えています。
カラシナの収穫(印西市某所)
カラシナの収穫(印西市某所)育ちすぎて食用には適さないカラシナを20株ほど分けてもらいました。
カラシナのアセトン抽出。基本「緑」ですが、植物種によってその様相はわずかに異なります。
R6年8月『高校生バイオサミットin鶴岡/慶應大先端生命科学研究所』予選はzoomでのオンライン発表です。
R6年8月『高校生バイオサミットin鶴岡』オンラインならではの、誤魔化しのきかない緊張感があります。
R6年8月『高校生バイオサミットin鶴岡』みごと予選通過!決勝戦は現地、山形県鶴岡市の先端生命科学研究所です!
R6年8月『高校生バイオサミットin鶴岡(決勝戦)』
R6年8月『高校生バイオサミットin鶴岡(決勝戦)』
R6年8月『高校生バイオサミットin鶴岡(決勝戦)』
R6年8月『高校生バイオサミットin鶴岡(決勝戦)』
R6年8月『高校生バイオサミットin鶴岡(決勝戦)』受賞はできなかったけど楽しかった!仲間もたくさんできた!来年は受賞できるようにがんばるぞ!
R6年11月『日本分子生物学会年会高校生発表』口頭発表。
カンペなしでよく頑張りました!
多くの方が足を止めて発表を聞いてくれました。
口頭発表のあとは他校と同じくポスター発表にも臨みました。
ワトソン㈱でマイクロピペットを頂きました!
大きな会場を貸切って、企業・大学・高校生が同じ場所で発表します。
パネルの前で記念写真!大変だったけど楽しかった!
大浦ごぼうは千葉県の匝瑳地区大浦に限って栽培され、太さ30㎝、長さ1mにもおよぶ特別品種の大ごぼうであり、「かつごぼう」「おばけごぼう」の俗称もあります。毎年12月に成田山新勝寺へ納めることでも知られ、新勝寺の精進料理の材料としてのみ利用され市場には流通していません。私たちは大浦ごぼう保存組合の方々と直接連絡を取って、地上部(葉・茎)と地下部(可食部)のサンプルを提供していただき、これまでの天然物研究で培った分析条件を用いて、大浦ごぼうと市販ごぼうのアセトン抽出物の成分分析を行っています。
大浦ごぼう(保存組合より)
R2年8月『高校生バイオサミットin鶴岡/慶應大』新型コロナのためこの年からオンライン開催となりました。
R3年8月『高校生理科研究発表会/千葉大』発表内容の最終チェック!
R3年8月『高校生理科研究発表会/千葉大』オンライン発表
R4年9月『高校生理科研究発表会/千葉大』今年から分科会形式での現地発表が再開されました。
R5年9月『高校生理科研究発表会/千葉大』ポスター発表の様子。今年からコロナ前の形式に戻りました。
R5年12月『日本分子生物学会年会/神戸国際展示場』ポスター発表。神戸まで大遠征!
R5年12月『日本分子生物学会年会』にて
R5年3月『ジュニア農芸化学会/東京農大』ポスター発表
R5年3月『化学クラブ研究発表会/東京工科大』ポスター発表の様子。ジュニア農芸との同日開催でした。
R5年3月『つくばサイエンスエッジ/つくば国際会議場』集合写真
R5年3月『つくばサイエンスエッジ』にて
植物成分の検索の基礎となった研究です。近年、社会的な健康志向から食品に含まれる健康成分が注目されています。しかし、すべての食品成分は混合物として存在しており、相互作用も非常に複雑です。私たちは高校の授業で、混合物から抽出やクロマトグラフィーなどの技術を用いて純物質を取り出せることを学びました。特にクロマトグラフィーの原理は重要で、大学や企業の研究現場でも多用されています。私たちは身近な食品に含まれる物質を、抽出とクロマトグラフィーの技術を用いて分析し、食品間の共通性や特異性、そしてこれらの経時的変化と相互関係について調べています。
エバポレーターによる濃縮。減圧することで低い温度で濃縮できます。
分液ろうとによる分配操作。有機溶媒可溶部と水可溶部に分けています。
H29年3月『ジュニア農芸化学会/名城大』生徒顧問ともに初のポスター発表会でした。
H29年10月『高校化学グランドコンテスト/名古屋市大』にて
H29年10月『高校化学グランドコンテスト』ポスター発表
H29年10月『高校化学グランドコンテスト』ポスター発表
H29年10月『高校化学グランドコンテスト』よく頑張った!
H30年3月『ジュニア農芸化学会/東京農大』ポスター発表の様子。先輩から引き継いだ実験を更に深めました。
H30年3月『ジュニア農芸化学会/東京農大』お疲れ様でした!
R1年8月『高校生バイオサミットin鶴岡/慶應大先端生命科学研究所』山形県鶴岡市まで大遠征!
R1年8月『高校生バイオサミットin鶴岡』ポスター発表
R1年8月『高校生バイオサミットin鶴岡』ポスター発表
鉛蓄電池は100年以上の歴史がある代表的な二次電池(充電できる電池)で、現在も自動車のバッテリーをはじめ様々なところで活用され改良が進められています。私たちは化学の授業中に作製した鉛蓄電池の性能が同じ実験条件にも関わらず班ごとに大きく異なることに疑問を持ち、原因を探ってみました。また、白金/パラジウム触媒を用いたアルカリ型燃料電池を作製し、起電力を得ることができました。このとき、超音波発生装置を用いてPt/Pd触媒を作製したところ、電解液中に静置した場合に比べて起電力が向上しました。超音波がステンレス網表面のPt/Pd触媒の形成を促進している可能性があります。電解メッキでなく超音波を与えるだけで触媒を作製できれば、より簡単で安価に燃料電池を作製できるのではないかと考えています。
R4年9月『高校生理科研究発表会/千葉大』燃料電池のスライド発表
R4年9月『高校生理科研究発表会/千葉大』鉛蓄電池のスライド発表
R5年9月『高校生理科研究発表会/千葉大』ポスター発表
R5年9月『高校生理科研究発表会/千葉大』ポスター発表
R5年9月『高校生理科研究発表会/千葉大』1年生2人でよく頑張った!
R5年9月『高校生理科研究発表会/千葉大』正門で記念撮影!
R4年10月『化学クラブ研究発表会/東京都立大』ポスター発表
R4年10月『化学クラブ研究発表会/東京都立大』ポスター発表
都立大正門で記念撮影!
R5年10月『高校化学グランドコンテスト/芝浦工大』ポスター発表。板についてきた!
R5年10月『高校化学グランドコンテスト/芝浦工大』ポスター発表
R5年10月『高校化学グランドコンテスト/芝浦工大』ポスター発表。片言の英語で切り抜ける!
会場は大盛況!
ようやくコロナを乗り越えた。実感。
一般にイオン化傾向が水素よりも小さい金属は電気分解によって陰極に析出します。このとき、有機溶媒との界面で析出させるとその金属に特有の薄膜結晶を形成することが知られており、まるで金属でできた葉っぱのようなので『金属葉』と呼ばれています。私たちはこの金属葉の美しさにあこがれ、その形成の仕組みが解明されていないことに興味を持ちました。各金属塩水溶液を1mol/Lの濃度に調整し、0.1A・3~6Vの条件で電気分解したところ、陰極に銅・銀・亜鉛の金属単体が析出しました。このうち、銅はヘキサン界面に美しい構造色の銅葉を形成し、亜鉛は酢酸ブチル界面に亜鉛葉を形成しました。また、硝酸銀水溶液の電析では本来酸素が発生するはずの陽極で黒色針状結晶が析出しました。文献よりこの物質は銀の過酸化物であり、強い酸化力を持つことがわかりました。私たちはこの過酸化銀の酸化力を電池の正極活物質として活用し、過酸化銀電池を作ることに成功しました。今後は金属葉ができる条件を検討し、その原理を明確にして燃料電池Pt/Pd触媒作製の効率化につなげるとともに、過酸化銀電池の利用についても引き続き研究を進めたいと考えています。
金属塩水溶液の電気分解
陰極側にできた銅葉
陰極側にできた銅葉
陰極側にできた銀葉
銅葉の走査型電子顕微鏡解析
銅葉の走査型電子顕微鏡解析
銅葉の走査型電子顕微鏡解析
陰極側にできた亜鉛樹
陽極側にできた過酸化銀の針状析出物
R6化学クラブ研究発表会(東京工科大)
R6日本金属学会ポスター発表(東京理大)
金児紘征先生による実験講座
R6日本金属学会ポスター発表(東京理大)
茨城県取手市在住の倉田さんは、地元で長らく天然灰汁(あく)発酵建てによる藍染めに取り組んでおられます。藍染めの仕組みは高校理科でも取り上げられており、いずれは本校でも天然灰汁発酵建てによる藍染め実験ができるようにしたいと考えています。
伝統的な天然灰汁発酵建てについて教わりました。
藍建てを終えた発酵瓶。灰汁のアルカリ性によって還元細菌が活発に働きはじめます。
倉田さんの作品を見せていただきました。
輪ゴムとわりばしで布をしぼります。
いざ染色!
空気に触れることで水溶性のインジガン(黄色)が酸化されインジゴ(青色)に変化します。
仕上げ洗い。天然藍染めは色落ちが少ないそうです。
青空とのコントラストが美しい!
いろんな模様に染まりました!
技術を学んで、学校の実験室でもできるようにしたいです。
実験サンプルとしてはもはや古典的ともいえるミズクラゲ(いわゆるクラゲです!)。改めて飼育してみるとそのダイナミックな生活環に驚かされます。私たちはミズクラゲのポリプを購入し、その発生過程を観察しています。
ミズクラゲのポリプ
米良漁協の皆さんにご協力をいただき、ムラサキウニの成体サンプルをいくつかいただきました!食べてもおいしいのでしょうが、ここは我慢して人工授精の実験を行いました。
ムラサキウニ
受精卵 → 2細胞期
8細胞期→ 16細胞期
桑実胚
孵化 → 胞胚
のう胞 → プリズム幼生
プルテウス幼生
稚ウニ
bayfm(株式会社ベイエフエム) 番組「シン・ラジオ ーヒューマニスタは、かく語りき-」内のコーナー、「スゴイ中高生に、ぶっちゃけホンネを聞いてみた」に自然科学部が出演し、2023年12月に神戸国際展示場で行われた「日本分子生物学会年会」で研究発表した際のエピソードなどをお話ししました。
スタジオでの収録!緊張!
記念撮影!
ベイエフエム前で撮影!
るねっさーん!
東日本製鉄所君津地区(旧新日本製鉄君津製鉄所)の工場見学に行ってきました!
ソフトテニスで使用されるボールはすべて天然ゴム製です。このボール、現在のところ残念ながら再利用する方法がありません。実は1個300円以上する比較的高価なもので、硬式テニスのボールよりずっと高いんです。にもかかわらず、とても寿命が短くて、使用頻度によっては2~3カ月で廃棄となります。ソフトテニスをしていると毎年何百個ものボールを可燃ごみとして廃棄することになります。どうにかして再利用の方法がないものかと考えていたところ、日本農芸化学会関東支部の定例会で長岡技術科学大学工学部の笠井大輔先生に出会いました。先生は「放線菌による天然ゴムの分解と再利用」について研究されており、その内容は「放線菌が産生する酵素によってゴム高分子を適度な分子量に切断することで、樹脂の再合成が可能となる」というものでした。まさに目からうろこの研究です。高校の実験室レベルではなかなか難しい研究ですが、いつか成田高校の実験室でソフトテニスのボールを再合成するという、夢のある実験ができればいいなと考えています。