自然科学部 

 自然科学部は2019年に化学部、生物部、天文部の合併により新設されました。2024年度は高1から高3まで16名が在籍し、週3~4日を目安に活動しています。化学系は天然物研究班、電池研究班、金属葉研究班などのグループに分かれて、研究内容を決めてお互いに協力しながら実験しています。生物系はグッピーやドジョウ、ゾウリムシ、ヒドラやプラナリア、ウニやミズクラゲなどの飼育を行い、観察や実験を行っています。また今年から天文系の活動として天体観察を計画中です。部員たちは基本的にすべての班の実験内容を共有し把握しながら、その中で自分の専門を1つ決めて研究に取り組んでいます。研究成果は大学や学会等が主催する発表会で積極的にアウトプットし、大学教授や研究生から直接アドバイスをもらって次の実験につなげています。

1週間の活動予定

【平日】週3回(火・木・金)の放課後~18時で活動しています。学校行事等で変更になる日もあります。

【休日】基本的に活動はありませんが、発表会の前や実験サンプルの調達など、必要に応じて不定期で活動します。

年間の活動予定

※2・3学期に学会発表が集中します。1学期に「どの学会でどんな研究発表をするか」をおおまかに決定し、研究に取り組みます。

【8月】

●高校生バイオサミットin鶴岡(慶應義塾大学・先端生命科学研究所)

【9月】

日本植物学会・高校生研究ポスター発表(日本植物学会)

葉牡丹祭校内展示・発表

高校生理科研究発表会(千葉大学) 奨励賞受賞(2022年度)

10月】

高校化学グランドコンテスト(芝浦工業大学)

【12月】

日本分子生物学会年会・高校生発表(日本分子生物学会)

【3月】

日本金属学会・高校生高専学生ポスター発表(日本金属学会) 優秀賞受賞(2023年度)

化学クラブ研究発表会(日本化学会・関東支部) ポスター賞受賞(2022年度)

ジュニア農芸化学会(日本農芸化学会)

高校生生物研究発表会(日本植物生理学会)

つくばサイエンスエッジ・アイディアコンテスト(筑波大学・東京理科大学・産総研ほか)

活動紹介

◆ TLCプレートを用いた食品成分の分析

 植物成分の検索の基礎となった研究です。近社会的な健康志向から食品に含まれる健康成分が注目されていま。しかしすべての食品成分は混合物として存在しており相互作用も非常に複雑で。私たちは高校の授業で混合物から抽出やクロマトグラフィーなどの技術を用いて純物質を取り出せることを学びました。特にクロマトグラフィーの原理は重要で大学や企業の研究現場でも多用されています私たちは身近な食品に含まれる物質を抽出とクロマトグラフィーの技術を用いて分析し食品間の共通性や特異性そしてこれらの経時的変化と相互関係について調べています

エバポレーターによる濃縮。減圧することで低い温度で濃縮できます。

分液ろうとによる分配操作。有機溶媒可溶部と水可溶部に分けています。

H29年3月『ジュニア農芸化学会/名城大』生徒顧問ともに初のポスター発表会でした。

H29年10月『高校化学グランドコンテスト/名古屋市』にて

H29年10月『高校化学グランドコンテスト』ポスター発表

H29年10月『高校化学グランドコンテスト』ポスター発表

H29年10月『高校化学グランドコンテスト』よく頑張った!

H30年3月『ジュニア農芸化学会/東京農大』ポスター発表の様子。先輩から引き継いだ実験を更に深めました。

H30年3月『ジュニア農芸化学会/東京農大』お疲れ様でした!

R1年8月『高校生バイオサミットin鶴岡/慶應大先端生命科学研究所』山形県鶴岡市まで大遠征!

R1年8月『高校生バイオサミットin鶴岡』ポスター発表

R1年8月『高校生バイオサミットin鶴岡』ポスター発表

大浦牛蒡(おおうらごぼう)~ ごぼうに含まれる成分の研究 ~

 浦ごぼうは千葉県の匝瑳地区大浦に限って栽培され太さ30㎝長さ1mにもおよぶ特別品種の大ごぼうであり「かつごぼう」「おばけごぼう」の俗称もあります。毎年12月に成田山新勝寺へ納めることでも知られ新勝寺の精進料理の材料としてのみ利用され市場には流通していません。私たちは大浦ごぼう保存組合の方々と直接連絡を取って地上部(葉・茎)と地下部(可食部)のサンプルを提供していただき、これまでの天然物研究で培った分析条件を用いて大浦ごぼうと市販ごぼうアセトン抽出物の成分分析を行っています

大浦ごぼう(保存組合より)

R2年8月『高校生バイオサミットin鶴岡/慶應大』新型コロナのためこの年からオンライン開催となりました。

R3年8月『高校生理科研究発表会/千葉大』発表内容の最終チェック!

R3年8月『高校生理科研究発表会/千葉大』オンライン発表

R4年9月『高校生理科研究発表会/千葉大』今年から分科会形式での現地発表が再開されました。

R5年9月『高校生理科研究発表会/千葉大ポスター発表の様子。今年からコロナ前の形式に戻りました。

R5年12月『日本分子生物学会年会/神戸国際展示場』ポスター発表。神戸まで大遠征!

R5年12月『日本分子生物学会年会』にて

R5年3月『ジュニア農芸化学会/東京農大ポスター発表

R5年3月『化学クラブ研究発表会/東京工科大』ポスター発表の様子。ジュニア農芸との同日開催でした。

R5年3月『つくばサイエンスエッジ/つくば国際会議場』集合写真

R5年3月『つくばサイエンスエッジ』にて

カラシナに含まれる成分の研究

 芥子菜(カラシナ)はアブラナ科アブラナ属の二年草で、中国や中央アジアが原産と言われています。自家不和合性のため交雑が進み、食用として市販されるアブラナ属だけでも30種ほどが知られています。カラシナは高菜と同じBrassica junceaに分類されるそうです。私たちは先輩から引き継いだ植物成分の研究に取り組むなかで、このカラシナに関する2つの興味深い文献を見つけました。1つは、カラシナを鋤き込んだ畑で栽培したホウレンソウは、そうでない畑に比べてホウレンソウ萎凋病になる確率がほぼゼロになるというものです。アブラナ属の細胞に含まれる芥子油配糖体から生じるイソチオシアネートはダイコンの辛味成分としても有名で、これが天然の殺菌剤として働くことで萎凋病を防ぐそうです。この仕組みを他の作物栽培にも応用できれば収穫量を増やすことができると考えました。2つ目は、カラシナは有毒な重金属である鉛を根からよく吸収し、土壌から除去するというものです。植物の力で環境を改善する技術をファイトレメディエーションといい、カラシナの特性が他の重金属にも有効かどうか調べたいと思いました。これら2つの内容について、栽培ポットで対照実験を行っています。近年、世界的な異常気象で作物被害が多発し、またアジア新興諸国ではデジタル機器の処理等で生じる重金属の土壌汚染が深刻です。私たちはアジアで広く食されるカラシナの力でこれらの問題に取り組み、食糧問題の解決につなげたいと考えています。

カラシナの収穫印西市某所

カラシナの収穫(印西市某所)育ちすぎて食用には適さないカラシナを20株ほど分けてもらいました。

カラシナのアセトン抽出。基本「緑」ですが、植物種によってその様相はわずかに異なります。

予備実験として酢酸鉛水溶液でカラシナスプラウトを育てました。1.0×10-4mol/Lから生育上の影響は見られなくなりました。これをもとに鉛イオン吸収実験を行います。

◆ 電池の研究 鉛蓄電池とアルカリ型燃料電池 ~

 鉛蓄電池は100年以上の歴史がある代表的な二次電池(充電できる電池)で、現在も自動車のバッテリーをはじめ様々なところで活用され改良が進められています。私たちは化学の授業中に作製した鉛蓄電池の性能が同じ実験条件にも関わらず班ごとに大きく異なることに疑問を持ち、原因を探ってみました。また、白金/パラジウム触媒を用いたアルカリ型燃料電池を作製し、起電力を得ることができました。このとき超音波発生装置を用いてPt/Pd触媒を作製したところ、電解液中に静置した場合に比べて起電力が向上しました。超音波がステンレス網表面のPt/Pd触媒の形成を促進している可能性があります。電解メッキでなく超音波を与えるだけで触媒を作製できればより簡単で安価に燃料電池を作製できるのではないかと考えています

R4年9月『高校生理科研究発表会/千葉大』燃料電池のスライド発表

R4年9月『高校生理科研究発表会/千葉大』鉛蓄電池のスライド発表

R5年9月『高校生理科研究発表会/千葉大』ポスター発表

R5年9月『高校生理科研究発表会/千葉大』ポスター発表

R5年9月『高校生理科研究発表会/千葉大』1年生2人でよく頑張った!

R5年9月『高校生理科研究発表会/千葉大』正門で記念撮影!

R4年10月『化学クラブ研究発表会/東京都立』ポスター発表

R4年10月『化学クラブ研究発表会/東京都立大』ポスター発表

都立大正門で記念撮影!

R5年10月『高校化学グランドコンテスト/芝浦工大ポスター発表。板についてきた!

R5年10月『高校化学グランドコンテスト/芝浦工大』ポスター発表

R5年10月『高校化学グランドコンテスト/芝浦工大』ポスター発表。片言の英語で切り抜ける!

会場は大盛況!

ようやくコロナを乗り越えた。実感。

金属葉のふしぎ ~ 燃料電池触媒作製の基礎研究と、過酸化銀電池の作製 ~

 一般にイオン化傾向が水素よりも小さい金属は電気分解によって陰極に析出します。このとき、有機溶媒との界面で析出させるとその金属に特有の薄膜結晶を形成することが知られており、まるで金属でできた葉っぱのようなので『金属葉』と呼ばれています。私たちはこの金属葉の美しさにあこがれ、その形成の仕組みが解明されていないこと興味を持ちました。各金属塩水溶液を1mol/Lの濃度に調整し0.1A3~6Vの条件で電気分解したところ、陰極に銅亜鉛の金属単体が析出しました。このうち、はヘキサン界面に美しい構造色の銅を形成し、亜鉛は酢酸ブチル界面に亜鉛葉を形成しました。また、硝酸銀水溶液の電析では本来酸素が発生するはずの陽極で黒色針状結晶が析出しました。文献よりこの物質は銀の過酸化物であり、強い酸化力を持つことがわかりました。私たちはこの過酸化銀の酸化力を電池の正極活物質として活用し、過酸化銀電池を作ることに成功しました。今後は金属葉ができる条件を検討し、その原理を明確にして燃料電池Pt/Pd触媒作製の効率化につなげるとともに、過酸化銀電池の利用についても引き続き研究を進めたいと考えています。

金属塩水溶液の電気分解

陰極側にできた銅葉

陰極側にできた銅葉

陰極側にできた

銅葉の走査型電子顕微鏡解析

銅葉の走査型電子顕微鏡解析

銅葉の走査型電子顕微鏡解析

陰極側にできた亜鉛樹

陽極側にできた過酸化銀の針状析出物

化学クラブ研究発表会(東京工科大)

日本金属学会ポスター発表(東京理大)

金児紘征先生による実験講座

ポスター発表の様子

ポスター発表の様子

ポスター発表の様子

ポスター発表の様子

ミズクラゲの発生の観察

 実験サンプルとしてはもはや古典的ともいえるミズクラゲ(いわゆるクラゲです!)。改めて飼育してみるとそのダイナミックな生活環に驚かされます。今回はミズクラゲのポリプを購入し、その発生過程を観察しました。

ミズクラゲのポリプ

ウニの発生の観察

 米良漁協の皆さんにご協力をいただき、ムラサキウニの成体サンプルをいくつかいただきました!食べてもおいしいのでしょうが、ここは我慢して人工授精の実験を行いました。

ムラサキウニ

受精卵 → 2細胞期

8細胞期16細胞期

桑実胚

孵化 → 胞胚

のう胞プリズム幼生

プルテウス幼生

稚ウニ

bay fmに出演!

 bayfm(株式会社ベイエフエム) 番組「シン・ラジオ ーヒューマニスタは、かく語りき-」内のコーナー、「スゴイ中高生に、ぶっちゃけホンネを聞いてみた」に自然科学部が出演し、2023年12月に神戸国際展示場で行われた「日本分子生物学会年会」で研究発表した際のエピソードなどをお話ししました。

スタジオでの収録!緊張!

記念撮影!

ベイエフエム前で撮影!

るねっさーん!

東日本製鉄所君津地区の見学

 東日本製鉄所君津地区(旧新日本製鉄君津製鉄所)の工場見学に行ってきました!

◆ 天然ゴムの再利用に向けて

 ソフトテニスで使用されるボールはすべて天然ゴム製です。このボール、現在のところ残念ながら再利用する方法がありません。実は1個300円以上する比較的高価なもので、硬式テニスのボールよりずっと高いんです。にもかかわらず、とても寿命が短くて、使用頻度によっては2~3カ月で廃棄となります。ソフトテニスしていると毎年何百個ものボールを可燃ごみとして廃棄することになります。どうにかして再利用の方法がないものかと考えていたところ、日本農芸化学会関東支部の定例会で長岡技術科学大学工学部の笠井大輔先生に出会いました。先生は「放線菌による天然ゴムの分解と再利用」について研究されており、その内容は「放線菌が産生する酵素によってゴム高分子を適度な分子量に切断することで、樹脂の再合成が可能となる」というものでした。まさに目からうろこの研究です。高校の実験室レベルではなかなか難しい研究ですが、いつか成田高校の実験室でソフトテニスのボールを再合成するという、夢のある実験ができればいいなと考えています。