今日も気持ちの良い秋の日差しの中、中庭で草引きをしている子たちとのお話や休み時間を終えて戻ってきた子どもたちとのお話を楽しませてもらいました。今日も校舎を回っていると図工室があまりに静かだったので誰もいないのかなと覗いてみると、5年生が学習していました。これまで木の葉をアレンジしローラーで模様を付けた用紙をつくっていましたが、今日はそこに自分の名前をデザインしてカッターナナイフで切り抜く学習をしていました。だから静かだったのだとわかりました。
今日は学習参観シリーズいよいよ最後の学級となる1年3組の算数を見せてもらいました。まずは学習を始めるのに机の上に出してあるものを片付けて学習の環境をつくります。机の上に何もない状態を「すいすい」と表現してお話されていました。そして、あいさつをした後、今度は学習の構えとしての姿勢について「足を床にきちんとつけましょう。」との声掛けをされました。学習環境と学習の構えづくりこれが大切です。家庭での宿題でも同じですね。最初に計算カードのお話です。毎日、宿題で計算カードを頑張っていること、時間を測ってチャレンジしている子がいることなど紹介した後、だれか校長先生の前でやってくれませんか?と聞かれて、恥ずかしがっている子もいましたが、勇気を出して挑戦してくれる子が前でやってくれました。間違えたり、考え込んだりすることなくすらすら読み上げる姿に教室からは拍手が起こりました。最初は順番に並べてやっていた計算カードももうバラバラでみんな頑張ってくれているのですね。そう思いながら見ていると、先生が手に持っている大判の計算カードが気になる子がいて…「あっ先生の持っているカード、答えが全部10だ。」と声が上がりました。
ここで「じゃぁ答えが10になるカードって何枚あるかな?」との質問です。子どもたちの興味を一気に高める質問だなぁと思っている、やっぱり、あちこちから声が上がり始めます。ここで先生は、「では、みんなで考えましょう。」と声を掛けます。今度は学習規律です。みんなで学ぶとはどういうことか、これは低学年でしっかり身につけさせたいことです。「答えが10になるカードを思い浮かべて発表してください。」といわれてたくさんの手が上がりました。9+1…7+3…次々出される答えを先生は黒板にばらばらに貼っていきます。でも、実はばらばらではなく、1+9、2+8、3+7…8+2、9+1という順番になるように貼っているのです。そんな発表が続く中、2+2+2+2+2という答えを言う子がありました。面白いですね。ほかのことは違う考えを見つけたのですね。「でも、今日は計算カードにある式で言ってね。」と、うまく流れを維持しつつ発表を受け止めていかれました。最後のほうは、どの式のカードが残っているのか、先生が順番を意識して貼ったカードを見て、その規則性から抜けているカードを言おうとしている子も出てきました。そして、全部のカードがそろったところで、気が付いたことを発表してくださいという流れで学習は進みました。前の数字が1ずつ増えていって、後ろの数字が1ずつ小さくなっていくという発見をした子が多かったです。でも、そんな中、1+9や9+1みたいに反対のカードがあると言ってくれた子もありました。この発表にも算数のセンスが感じられます。
ここで、今日の課題の提示です。5+5のカードと9+1のカードを使って、このカードの答えは10ですね。では、それぞれ後ろの5や1を大きな数に変えてみると、例えば5+8や9+2にすると答えは10と比べてどうなるのかなぁ。という思考する課題です。面白い聞き方だなぁ、子どもの思考を刺激する聞き方だなぁと思いました。みんなで考えた後、挙手で意見を聞いていくと全員が「大きくなる」に手を挙げていました。難しいのはここからです。どうしてそう思うの?こう問われて「だって…」という声があちこちから聞こえたので、「そう、そのだっての続きを考えて教えて。」となかなかうまい切り返しです。そして、びっくりする答えが発表されました。「だって、5+8の8は、5と3だから、5と5で10になるんだから、あと分けた3の分だけ大きくなる。」すごいですね。算数が大好きなんだろうなぁと思う意見です。でも、ここではまだ全員が分かったわけではありません。先生は「これまでにはなかった、答えが10よりも大きくなる足し算の学習をしていきましょう。」と目標を示します。ここからは教科書に入っていきます。子どもたちの中のモチベーションは高まっています。9+4になる文章題をみんなで声を出して読んで、「みんなで何人」とあるから足し算であるということを確認して式までノートに書きます。「答え分かった!」と声を上げる子どもたちに先生は、「どうやって計算したらいいのか考えましょう。」と、とても大切な声掛けをしました。
「さぁみんなに説明するのにはどんなやり方があったかな?」とこれまでの学習経験をもとに考えさせます。その1、ブロックを使う。人でもリンゴでも算数の世界では1つのブロックに変えて考えることができます。絵を描かなくてもいいのです。これを半具体物(シェーマ)といいますが、低学年では大切なステップです。ブロックは実際に操作できるからです。その2、図で書いてみる。こちらは1を〇で表していくもの。ブロックと違って実際に動かすことができないので少し難しくなります。その3、言葉を使って説明する。これはもう完全な抽象思考です。そのあと、先生から「指を使うというのもあったね。」という話がありました。実は人間の指というのはよくできている便利な計算用具です。ブロックと同じように使っているうちに数の感覚が高まるので、あまり無理をしてやめさせなくてもよいと私は思っています。でも、今日は10を超える計算なので、指は今日はおいておきましょうとさりげなく指示されました。この3つの方法から自分がやってみたいという方法で考えてみましょうとなりました。自分で決めるというのは大切ですが、実は難しいものです。決めるためにはイメージすることが必要です。頭の中でどうやれば…どう書けば…という思考が必要です。今日の学習でもこの自分で決めるというところにたっぷり時間を取っておられました。ブロック派が一番多かったようです。図で考える子は5人ほど、言葉で考えている子はたった一人でした。きちんと決めてからブロックの用意です。ブロックを用意しているとついつい違うことに思いが行ってしまうので、用意ができたところでももう一度、今日の課題分をみんなで声を合わせて読みました。
子どもたちが自分で決めたやり方で試行している間、先生は机の間を回りながら声掛けやアドバイスもしながら子どものノートやブロックを写真に撮ったり、先生に説明してねと声をかけてその様子を動画に撮ったりしています。そして、撮影した動画や写真を見せながら学習を進めていきました。ここも面白かったです。最初は9個のブロックと4個のブロックを並べて合体させて数えるという方法。たくさんの子がこれをやっていました。でも、10個以上のブロックになると一目ではわからないし、数えているうちにわからなくなってしまいます。今度は9個のブロックに4個のブロックから1個だけ合体させて10のかたまりにしています。かたまりだけではなくてケースをうまく使っている子もありました。こうすると一目で10と3で13とわかるというのです。先生は算数は『はかせ』が大切と話します。は:はやくて、か:かんたんで、せ:せいかくに計算できるのはどちらの方法かなぁと比べる視点を示したのです。ここで、10のかたまりで考えるということを子どもたちに意識させました。まさにこの時間の目当てがそこだったのです。最後に言葉で書いた子に発表してもらいました。「9+1を最初にして答えの10を覚えておいて、4から1をとった残りの3と合わせて13になる」やはり10のかたまりの考え方です。そのあと、図で表したこのノートをもとに全員でノートに〇を書いて、1つだけ矢印を書いて動かすという表し方を確認しました。こうやって10のかたまりを使って計算するということがみんなのものになりました。次からは様々な数で10のかたまりをつくっていく学習になっていくのですね。最後に1,2,3ペタシュの掛け声であいさつをして終わりました。一人一人に考え方の豊かさ、面白さが引き出された楽しい学習でした。