“原点回帰”をテーマに、VR演劇の本質である「表現」と「空間」の融合を再確認し、バーチャルと現実の架け橋としての演劇文化を発信する。この「メタシアター演劇祭2025」にかける思いや狙いを一般社団法人メタシアターの代表ぬこぽつ氏にインタビュー。一ヶ月後に開催が迫ったVR演劇の祭典。参加する前にぜひご一読を。
——メタシアター演劇祭2025年の開催おめでとうございます! インタビューさせていただきまして、本当に光栄です。早速ですが、メタシアター演劇祭のそもそもの成り立ちについて教えてください。
VR 演劇の祭典として2023年秋から始まりました。その時は個人名義でやっておりまして、リアルイベントだったりとか初回にしては大きな催し物になったんですけど、企業協賛とかもなく自腹で50万円ぐらいぶっこんでやっていましたね。VR演劇っていうものを広げたいという想いと、いろんな団体が一堂に会する演劇版Vketをやりたかったっていうのもあります。
——そういった背景があったんですね。初回の様子はどうだったんでしょうか。
初回は10団体いかなかったぐらいですかね。当時は今ほどVR演劇っていうものが広まっていないのと、プレイヤーも少なかったので「ステージ上でやるものはなんでもOK」っていう形で開催しました。なので、1人芝居とか漫才とか落語もありましたね。
——2024年はいかがでしたか?
2024年はワールドを作ってくれる方々に恵まれたので、エントランスワールドっていうことで、ヴェネチアをイメージしたワールドを作りました。その時には企業出展もいくつかあったんですが、基本的な考え方として、クリエイティブなコミュニティのためのVket的なものが出来ればいいかなと思って運営しました。ブースを作ってもらって、ポスターと映像を展示してもらいましたし、映画監督のだめがねさんや中田らりるれろさんといった映画界隈の方々もお呼びして、トークショーもやりました。パフォーマンスもやっていただきまして、それこそまるもこさん、魔法少女シュネーさん、Cinematic Neon Clubさんといった方々にライブをやっていただきました。
—試行錯誤のなか歩まれたことがわかりました。Xに投稿されていましたが、今年は裏方に徹していたと拝見しました。ぜひ今回の取り組みについても教えてください。
今年は「原点回帰」ということで取り組みました。これは裏方にまわるということにつながるんですけど、1回目も2回目も結局主賓公演として僕の公演があるっていう構図になっていたんですよ。去年だと『VR演劇ハムレット』が主賓公演で、総合芸術劇場Dramapiaのこけら落としを兼ねて公演しました。でも、メタシアターという団体はVR演劇を広げて、場を作るのが理念であって、別に自分たちを目立たせることが目的じゃないよねっていう議論があったんですね。
なので、今年の頭ぐらいから「僕らは何も出さないようにして、徹底的にサポートに回るべきだよね。それが、団体の理念なんだから」と裏方に回って準備を進めてきたっていうのが背景としてあります。あと、自分たちが出ないと数が担保できないっていうのが現実問題として去年まであったんですけど、今年は14団体集まったから出なくてもいいじゃんっていうのもありました(笑)
——VR演劇の盛り上がりに合わせて変化していったわけですね!
そうですね! 昨年も一昨年もこっちが会場を準備してやってもらうことがあったんですけど、最近は劇場を作る技術が育ってきたので、今回は招聘公演とフリンジ公演という形を取りました。招聘公演っていうのは、演劇であることを前提に、そこから予算書と企画書を出してもらって選考しています。受かった団体はメタシアターと共同制作するっていう建て付けになります。なので優先度は高いし、普段やらないワールドの調整もさせていただくっていう感じです。フリンジ公演に関しては好きな時にやっていいし、プレスを出すときは一緒に載せるし、広報サポートもちょっとするよって感じです。
——しっかりと手続きを踏んで招聘公演を行っている印象があります。これはどういった理由からでしょうか
リアルの演劇だと演劇祭に出るのに、企画書と予算書っていうのを書かされるんですよ。そういうのをロールプレイでやらせようっていう狙いもあって、演じること以外の技術とか体力を付けさせるのが、招聘公演でそういった手順を踏ませたことの目的だったりします。フリンジ公演に関しても、自分たちで用意して人探しも含めて自走して欲しいっていうところが目的です。
——界隈全体の成熟度と次へのステップまで考えていらっしゃるのがさすがだと感じました。今回、協賛企業も過去最多だと伺いましたが、ここについても教えていただけますか?
ここ3年間で一番多い10社にご協賛頂きました。これって協賛が付いたイベントに出るっていうことだけで、VR演劇の人たちにとって結構な価値になると思っているんですよね。劇団にとっては箔が付くし、自信にもなるかなと。あとは、VR演劇って物好きな人たちがワールド作って演劇をしてるんだっていうところから、ひとつ上のレイヤーにいることを対外的に示したい部分があったんです。
それに、今年ってVR演劇公演が一番多いんですよ。みんなやりすぎです(笑)。でもこうなってくるとお客さんの目が肥えてきて絶対に「質」の時代が来るんですよね。そうすると、スキルのブラッシュアップをする理由としてお金をもらっているか、そうじゃないかは大きく関わってきますよね。なので、今回の招聘公演には間接的「君たちお金もらってるんだよ」って無言の圧力をかけています。
協賛する企業さんにとっても、VR演劇って面白いよねってなったり、この劇団気に入ったよねってなってくれたりしたら嬉しいですし、日本って一番フルトラが売れている市場なんですよ。つまり、VR演劇から技術的なフィードバックももらえるので、これもいいなって思っています。
——あらゆる方面に対してVR演劇が成長するように働きかけていることがよくわかりました。
良い文化だからこそちゃんと育てたいというか、早めに自走出来る技を持たせてあげたいっていう気持ちが大きいですね。メタシアターと関わったおかげで、いきなり企業から認められましたみたいな、そういう成功体験を関わってくれた人たちに感じて欲しいなと思っています。それによってもっとVRの世界に大きく自信を持って出られるようになったら良いなという思いもあります。
——色々聞かせていただきましてありがとうございました! ぜひみなさんにメッセージをお願いします。
メタシアター演劇祭2025。ぜひ、この劇団面白いなとか、仲間になりたいなみたいなお気に入りを見つけていただけたら幸いです。
そして出演する劇団の皆さん、今までと違って色んな仲間が増えたなと思っています。とにかく年に一度の「お祭り」だということで、大暴れしていただければなと思っています。