まちにキッチンをおいてみる
これまでの都市や建築のつくられ方について考えると、建築や都市開発といったプロジェクトのレゾンデートルは「民主的な確からしさ」を頼りに、明確なビジョンを掲げて実行されてきた。
一方で、ビッグデータの有用性がニーズの可視化、判断の妥当性を得ることにあるように、「ささいなものの集積」という今まで扱うことのできなかった、ぼんやりとしたものに意義をあたえることが可能になるように思う。
そこで、この提案では従来の流れである①社会的ニーズ→②敷地選定→③建築の順番を逆さまにし、❶建築→❷敷地選定→❸社会的ニーズの順番として考えることで、単一の機能とデータの組み合わせによって、どれほどの意義や価値を獲得できるのかについて考察してみる。
この提案では意義や意図をあえて設けずに「都市や地方」「個人や集団」「性別や国籍」に関わらず使用可能なものとして「誰でも使えるキッチン」という小さな建物を日本全国に置いてみた時に、どのようなデータが活用でき、また取得できるのか考察する。
そして、現代の社会状況や都市が成熟した先にどのような多様性豊かな社会があるかについて提案する。
地域に応じて不足するものが民間的にも公共的にも存在する今日において、その大きな要素が人材とコストの不足である。それらの補完機能としての役割を見出すことで多様化した豊かな社会に寄与できると考える。