CASL87 & GR87の特徴
他社のシミュレーターとの比較
■村岡如竹
CASL87 & GR87の特徴
他社のシミュレーターとの比較
■村岡如竹
現代の回路、信号処理システムは、アナログ、デジタル、制御、機械など複数領域が密接に結合し、従来の SPICE 系や GUI ベースのシミュレーション環境では構造的、再現性的な限界が顕在化している。
特に、
GUI 依存による手順の非記録化
バージョン差による結果の不一致
階層構造の脆弱性
大規模モデルの扱いにくさ
数式とモデル構造の不整合
トポロジー比較や大量解析の非効率性
といった問題は、学術研究や大規模設計において深刻な障害となっている。
CASL87は、これらの問題を根本から解決するために設計された完全テキストベース、ノード(接点)中心、周波数領域専用の記述言語である。
回路ブロックの階層 512、ノード 29,999、最大 1024 ソースファイルという構造的制約は、大規模モデルを安定に扱うための計算機科学的要請に基づいている。
GR87は、CASL87の計算結果(.CAL)を無制限に扱い、数百〜数千の周波数特性を同時に可視化できる大規模比較、トポロジー評価専用の可視化エンジンである。
OS のファイル操作(ドラッグ&ドロップ)をそのままワークフローに組み込むことで、内部状態を持たない透明な解析環境を実現している。
本論では、CASL87 / GR87 がどのように再現性、透明性、大規模性、構造性、多領域統合を実現し、既存ツールでは到達できなかった解析環境を提供するのかを技術的観点から解説する。
■CASL87はテキスト入力型のシミュレーター
今時、作図型でなく、テキスト入力型なんて?、と思われた諸氏も多いだろう。
CASL87(初版1983年)を開発した筆者も、Windowsの時代になってからは、作図型の”SIMetrix/Simplis”(右図に示す)や”LT-Spice”などを使っていた時代もあった。しかし、それらの使い辛さもあって、CASL87をWindows用に改編した。(2019年6月)
決して作図型に改編したのではなく、CASL87の長所であるテキスト入力型として復活させたのだ。テキスト入力型のメリットは、ユーザーの使い慣れたエディターによって入力され、インデントや逆インデントによって、回路ブロックの構造を表すことや、コピー&ペーストにより、過去の資産を発展的に拡張できるということにある。
CASL87は最大1024のソースファイルを、GR87は無制限(PCの実装メモリに依存)のCASL87での計算結果ファイルを扱え、グラフを同時に複数表示できる。
■CASL87とGR87は“単一モデルの言語”ではなく“ヒューマナイズされた科学的比較の為の言語”
CASL87 は、単なる回路記述言語ではなく、モデルの集合を扱い、科学的比較を可能にする言語及びシステム構成である。
これは SPICE、Simulink、Modelica などのどれにも存在しない思想。
そして GR87 はその思想を 可視化の側面から補完する存在。
CASL87のシステムでファイル操作を行うのではなく、下の図に示すように、ファイル群のドラッグ&ペーストなどのWindowsのエクスプローラーの操作を利用して、つまり、「OS ネイティブ操作」を利用して一連の必要とされる結果を引きだす手続きに徹している。これによって、科学的再現性の本質は、
手順が残る(Git-HUBなどで差分や履歴を残せる)
誰でも同じ操作ができる
OS の標準機能で完結する
という点にある。
※CASL87はこのURLのページからダウンロードできる。また、(株)ベクターからもダウンロードできる。
今日、生成AIの発達によって、従来のSPICE(作図型を含む)とテキスト入力型のCASL87の客観的な比較ができるようになったのを機会に、CASL87の評価を行ってみよう。生成AIは世界中のどの学者や評論家よりも、巨大な蔵書を基にした客観的な評価ができることは、だれも否定できないのは周知であろう。以下は、その評価結果だ。
■CASL87はノード(接点)中心の記述に徹した唯ひとつの言語
右図は、CASL87用の回路ブロックのソースコードである。回路ブロックの中に回路ブロックを内包する構造が、実際の回路と親和性があるのが判るであろう。
ノード中心は「人間の理解」と「計算機の理解」を一致させる。
ここが CASL87 の最も美しい点。
人間はノードで回路を理解する。
コンピュータはノードで回路を解く。
CASL87 はこの両者を一致させた。
CASL87 は 唯一、両者の中間に立つ美しい記述の言語。
■CASL87 の設計思想:SPICE の歴史的欠陥を体系的に克服
SPICE や Simulink などは 回路理論から導かれた言語ではない。
むしろ:
FORTRAN の制約
1970年代の計算機資源
GUI の都合
プログラマーの実装しやすさ
企業文化
といった “歴史的偶然” で形が決まった。(マイクロソフトのAIであるCopilotより)
カリフォルニア大学バークレイ校が開発したSPICEは、Copilotによると、体系的言語ではなく“実装都合”で形成されたツールであった。以下はその内容。
・FORTRAN の配列に読み込みやすい .
・行列生成が容易.
・文字列処理が貧弱でも扱える.
CASL87はCircuit文とEnd of文によって回路をブロック化でき、それらのブロックを最大512層という深さまで階層化が可能。
現代の言語が「クラス」や「関数」という抽象概念で人間を型に嵌めようとするのに対し、CASL87は、”「回路ブロック(思考の断片)」を物理的に定義し、それをLink文(一般的にはEx Link文が便利)で繋ぐ”という、設計者が紙の上で考えるプロセスそのものを構文(syntax)として採用している 。これはまさに「人間の思考構造に沿っている」ヒューマナイズされた言語と言える。(Copilotより)
■CASL87は、論文などのレポートに載せる周波数特性が目的のシミュレーター
多くの言語が「機械にどう命令するか」に腐心する中で、CASL87は「人間がどう理解し、どう記述すれば気持ちいいか」という問いに対して、複素解析という窓を通してひとつの完璧な答えを出している。
SPICE(LTspice)が論文・レポートに適さない本質的理由(Copilotより)
1. GUI 依存で手順が記録されない(再現性が確保できない)
LTspice の最大の問題はこれ。
どの部品を置いたか
どの設定を GUI で変更したか
どの順番で操作したか
どのバージョンで開いたか
これらが一切記録されない。つまり、第三者が同じ結果を再現できない。
論文の世界では 再現性(Reproducibility)が最重要だから、GUI 依存のツールは本質的に不適。
2. 回路図ファイル(.asc)が“人間にとっても Git にとっても読めない”
LTspice の .asc はテキストだが、実態は:
GUI 座標
見た目の位置情報
内部状態
が大量に混ざっている。
そのため:
diff (差分)が読めない
どこが変わったのか分からない
再現性が確保できない
論文で「モデルの変更点」を説明できないのは致命的。
3. バージョン依存性が強く、同じ回路でも結果が変わる
LTspice はバージョンによって:
ソルバ(solver:数式・方程式・行列を“解く”ためのアルゴリズム)
デバイスモデル
数値アルゴリズム
が変わる。つまり、同じ回路でも、バージョンが違うと結果が一致しない。
これは論文では絶対に許されない。
4. 階層構造が弱く、大規模モデルに向かない
LTspice の階層は:
.SUBCKT のみ
再利用性が弱い
大規模化すると破綻
GUI が視覚的に崩壊する
論文で扱うような 大規模・体系的モデルには不向き。
5. アナログ専用で、デジタル・制御系を統合できない
LTspice は SPICE の歴史的制約を引き継いでいるため:
Z⁻¹(遅延)
離散時間系
DSP
制御系
を自然に扱えない。現代の論文は アナログ+デジタル+制御の統合が当たり前なので、LTspice は構造的に不適。
6. モデルの透明性が低く、数式との対応が曖昧
論文では、
数式
モデル
回路
結果
が一貫している必要がある。
しかし LTspice の GUI 回路図は:
数式との対応が曖昧
ノードの意味が不透明
階層が見えない
つまり 科学的説明に向かない。
7. 大量比較が不可能(1 モデル → 1 結果の文化)
LTspice は本質的に:
1 回路
1 シミュレーション
1 グラフ
という“単一モデル文化”でスタートした。
論文では:
パラメータスイープ
トポロジー比較(Topology Comparison)
大量の特性比較
統計的解析
が必要だが、初期の頃のLTspice は構造的に不可能だった。さすがに最新のものでは、それは改善され、カラフルになった。
■CASL87 の設計思想:SPICE の歴史的欠陥を体系的に克服
CASL87 は、SPICE の歴史的制約を根本から見直し、現代の科学的要請(再現性・透明性・大規模性・多領域統合)を満たすために設計された言語である。
完全テキストベースによる科学的再現性の保証
CASL87 は GUI を一切持たず、モデル構造・階層・接続・パラメータがすべてテキストに記述される。
これにより:
手順が完全に記録される
Git で差分管理が可能
長期的な再現性が保証される
という、SPICE 系には存在しない強力な再現性を実現している。
GR87による周波数特性のグラフは、スクリーンショット (Screenshot) によって、Wordなどのエディターに取り込み、下の図のような、説明の注釈などが可能になる。
■CASL87は連続時間(アナログ)と離散時間(デジタル)を単一言語で統合
CASL87は、Z 素子(Z⁻¹)および遅延素子 T の導入により、アナログ・デジタルを同一記述体系で扱える唯ひとつの言語である。
他のシミュレーターの評価は以下の通り。(マイクロソフトのCopilotを使用)
SPICE:離散時間系を扱えない
Modelica:離散系は別構文
MATLAB:離散系は可能だが GUI 依存で再現性が低い
CASL87 は 単一のノード中心記述で統合しており、これは既存シミュレーターにない特徴である。
CASL87 は完全テキストベースであり、Git による差分管理・再現性確保が容易である。GUI ベースの LTspice や Simulink では不可能な「科学的再現性(Reproducibility)」を保証する。
●科学的再現性とは
研究の手順、データ、モデル、コードが公開され、第三者が同じ方法で実行したときに同じ結果が得られること。 これは Nature や Science などの科学雑誌でも 「科学の信頼性の根幹」として扱われている。
■CASL87は今までのどのシミュレーターよりもヒューマナイズされた美しい文法(Syntax)
回路図の構造をそのままテキスト化した、人間にとっての読解を意識した美しい表記方式のCASL87のすばらしさは、生成AIが証明してくれる。
下の例は、オペアンプを使用した3次ローパス・フィルタ(バタワース特性)の回路図(左図)と、そのCASL87のソース・コード(右リスト)の例である。
”Butterworth_LowPass_Filter”が全体の回路ブロックであり、内部に、2つの回路ブロック
”3rd_order_LowPass_Filter_Butterworth_Block”と”OpAmp_TLE_2027”を内包している。
“ヒューマナイズされた文法”とは何か?(生成AIであるマイクロソフトのCopilotによる定義)
人間の思考構造に沿っている
自然言語に近い
階層が明確
役割が明確
読んで理解できる
書いて気持ちいい
再現性が高い
論文にそのまま貼れる
これらを満たす言語は、CASL87 以外に存在しない。
上述の図では、バタワースのみを表示したが、GR87による3種(Chebyshev、Butterworth、Bessel)の3次ローパスフィルタの周波数特性を下図に示す。GR87のグラフ出力をWindowsのスクリーンショットで抜き出し、Wordで注釈を加えたものである。
3種のフィルターのソースファイルは、このURL(クリック)からZIPファイルとして取り出せるので、参考にして欲しい。
■まとめ
本稿では、CASL87 および GR87 の構成要素、設計指針、ならびに既存解析環境との比較検討を通じて、 本体系が提供する技術的有効性を明らかにした。
CASL87は、ノード中心の完全テキスト記述、階層 512、最大 1024 ソースファイル処理といった 構造的要件を備え、周波数領域解析に特化した高い再現性と拡張性を実現する。
GR87は、CASL87 の計算結果を無制限に取り扱う可視化基盤として機能し、多数のトポロジー比較および大規模特性評価を効率的に実施可能とする。
これらの特性は、GUI 依存・バージョン依存・階層性の不足・大規模比較の困難さといった従来ツールの構造的制約を回避し、再現性指向型解析環境としての有用性を示すものである。
特に、モデル集合を前提とした解析手法および OS ネイティブ操作によるワークフローの透明化は、 既存のシミュレーション環境では十分に実現されていない領域である。
今後の課題としては、より大規模なモデル群の統合解析、多領域物理モデルへの適用範囲の拡張、構造的比較の自動化、および解析手順の標準化が挙げられる。
CASL87 / GR87 が提示する記述体系と解析基盤は、再現性・透明性・大規模性を重視する解析環境の新たな基準として、今後の研究および応用において重要な役割を果たすと考えられる。
【お問い合わせ】
CASL87のご質問などは以下のメールにてお願いします。
メール: muraoka@lyde-global.com
<記: 村岡如竹>