バイポーラ・トランジスタの特性
■村岡如竹
■村岡如竹
■バイポーラ・トランジスタの特性
バイポーラ・トランジスタのIc-Vbe特性(左下の図)は指数関数的であり、ベース電圧Vbeのわずかな増加で、コレクタ電流Icは爆発的に増加する。この性質を把握していれば、エミッタ側に付加された抵抗器の値で、コレクタ電流を簡単に制御できる。
また、コレクタ-エミッタ間電圧が、中央下の図の活性領域(青色エリア)では定電流特性(交流的には高インピーダンス)となるが、アナログの増幅器ではこの領域を使用する。
右下のhFEは、コレクタ電流とベース電流の比であり、2段以上の構成のバイポーラトランジスタコレクタやエミッタに接続された抵抗器による線形性の確保に役立つ特性である。
■Ic-Vbe特性の数式化
Ic-Vbe特性の特性を下図に示す。
コレクタ電流Icとベース・エミッタ間電圧Vbeとの関係式は以下の通り。
尚、ここで、Isは飽和電流であるが、データシートに記載されているものではない。Isは上式のIcの式からIc-Vbe特性のポイント抽出によって求めればよい。
しかし、Vbeに対するIcを計算で求めたい場合は以上の式で求めたいところであるが、残念ながら、求めたIcの1/2~2倍程度の範囲までしか正確性を保証できない。
■温度変化への対応
ジャンクション温度Tjにより同じベース・エミッター間電圧Vbeでも温度が高いほどコレクタ電流Icが大きく流れる。上図のIc-Vbe特性では、周囲温度TaでのIc特性が示されるが、Ic-Vbeの温度特性の影響をできるだけ軽減するのは下図に示すエミッタ側の負荷抵抗Reの役割が大きい。
上図にエミッタ側負荷抵抗Reにエミッタ電流Ieでできる電圧VreとVbeを加算した(Vbe+Vre)によるコレクタ電流Ic(≒Ie)の温度変化への効果を示す。(Vbe+Vre)が大きいほど温度に対するコレクタ電流Icの変動が抑えられる。しかし、エミッタ側に付加した抵抗Reは入力としての⊿(Vbe+Vre)に対する電流増幅率が抑制される。
この対策としては、以下の図に示すように、直流的には抵抗Re1で温度に対して安定化を図り、キャパシタCeと抵抗Re1を付加することで交流的には増幅率を稼ぐことができる。
■トランジスタの放熱設計
下の図はNexperia社のNPNトランジスタMJD44H11のSOT428(通称DPAK型)のFR4基板(ハンダマウント部の銅箔面積1Cm2)上の電力軽減曲線である。軽減曲線(直線)の勾配は25℃~150℃の125℃差の範囲である。
上図の電力軽減曲線を反映させた熱伝道等価回路を下図に示し、接合部-FR4基板(pad1cm2)-周囲間熱抵抗θjpaの値を計算する。
このトランジスタをマウントした基板の高温の許容周囲温度を60℃とした場合、トランジスタのジャンクション温度を余裕をみて100℃とすれば、トランジスタの諸費電力の限界値は約0.63W(=40℃/71.63)と計算できる。尚、温度に関しては単にシフトしているだけなので、摂氏(℃)でも絶対温度(K)のどちらでもよい。
上記の熱抵抗はトランジスタと基板(FR4、面積1cm2)の総合的な値であったが、一般的には熱伝導率から熱抵抗を求めることが多い。下に熱伝導率と熱抵抗の関係式を示す。
上記の基板のみの熱抵抗を求めてみよう。基板は、材質FR4、厚さ1.6㎜、面積100㎜2、熱伝道率0.45W/m/kとすると以下のようになる。
もっとも、基板とは反対方向のトランジスタの表面からも周囲の空気に放熱されるため、この値が先のθjpaの一部として片側に構成されているだけということに注意しておこう。
トランジスタがマウントされている基板の反対側に効果的なヒートシンクが密着して取り付けられている場合に限り、この基板の熱抵抗の値が熱設計上の意味をもってくる。