【設立6周年記念ウェビナーレポート】
ターゲティングできるDOOHはデジタルメディアのひとつになれるか?
ターゲティングできるDOOHはデジタルメディアのひとつになれるか?
現代社会では、既存のテレビ、デジタルメディアだけでなく、新たなリーチや認知メディアが必要とされています。今回は「デジタルメディアのひとつ」としてLIVE BOARDはその役割を担えるかをテーマにディスカッションを行いました。その内容をレポートします。
▼登壇者
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ 統合アカウントプロデュース局 局長補佐
梅本 翔太 氏
株式会社電通 第1マーケティング局 局長
中野 雅弘 氏
(モデレーター)株式会社 LIVE BOARDインサイト部 マネージャー
真能 広大
▼アジェンダ
現在の広告キャンペーンにおいて、同じ投下金額で得られるキャンペーン認知率は10年前と比べ、約5分の1になっている。
その理由として3つ考えられる。
テレビの視聴割合が下がっていること
10年前と比べ、特に若年層や男性層の減少率は顕著であり、広くリーチを取ることが難しくなっている。
様々なメディアが乱立し、リーチの奪い合いが起こっていること
これまでスマートフォンやパソコンといったデジタルメディアの接触時間が伸びることで、テレビで減少した分のリーチを補ってきた。一方で、動画メディア、ソーシャルメディア、獲得系メディアといったメディアが乱立し、リーチの奪い合いになっている状況もある。
生活者の情報に対する態度がせっかちになっていること
生活者はタイパやコスパを重視する傾向が強まり、情報を届けることが難しくなっている。
総じて、現代は広告メッセージを「効率的に生活者に届ける」ことが非常に難しい時代といえる。
<中野氏>
近年はリーチに加え、生活者のアテンションが取りづらくなっていると考えている。メディアが分散するなかで、さまざまなメディアを組み合わせてもリーチ獲得が難しい状況だ。
またリーチは取れていたとしても、その先にある認知に繋がるアテンションが取りづらい。それは生活者のメディアにおける注目度や注意度が下がっているからであり、現在のメディアプランニングで難しいと感じる部分だ。
<梅本氏>
広告主からビジネス成果にどう繋がるかを問われている。近年はリスティング広告のような成果が見えるキャンペーンが伸びており、広告主は成果が見えるものからアロケーションを決める様子が伺える。リーチ獲得といったKPIを設定するのではなく、プランニング、実施、効果検証、ネクストステップまでワンセットで提案しなければ受け入れられない世界になっている。そこを一気通貫で提案するのかが現状の課題である。
現場では、広告主からビジネス成果を達成するためのプランニング、実施、効果測定をどう考えているのか、というお題をもらうことが割合として増えている。そもそも広告は最終的にビジネス成果に結びつけるために企業が行っていることなので、企業のビジネスに対して広告でどう貢献できるのかを示すことが重要である。
<真能>
プランニングの際に、広告主からメディアが果たす役割の説明を求められることもあるかと思う。OOHをプランニングに入れる際に、どのような説明をしているか。
<中野氏>
OOHの役割は3つあると考えている。
認知の強化
テレビやデジタルメディアでは届かない生活者へのアプローチとして活用している。
流行っているという話題感の醸成
OOHを街で見かけることで、流行っていそうという世の中の空気感を作ることができる。
行動の誘発
店舗の近くにOOHがあることで来店促進を促すことができる。
こうした目的でOOHの使用を提案することが多い。
一方でOOH掲出の最適化は課題に感じている。目標を達成するにはどれだけOOHに投資することが最適かという数値をはっきり導き出すことが難しい。
<真能>
LIVE BOARDでは、テレビ、デジタルメディア、OOHを掛け合わせたプランニングを推進する「トリプルメディアの実現」を目指している。
現在、広告予算全体に対するOOHの比率は約6%である。一方で、広告予算全体に対するデジタル比率は約45%となっている。考え方として、LIVE BOARDは「6%のうちの一つのメディア」ではなく「45%のうちの一つのメディア」として役割を果たすことができないかと考えている。
LIVE BOARDを屋外にある「デジタル広告」として活用するために、様々な取り組みを行っている。その一つとして電通様や博報堂様のメディアプランニングツールにLIVE BOARDのリーチデータを搭載した。その結果、テレビ・デジタルの基準を超えたプランニングが可能になった。
またログ分析の高度化も進んでいる。デジタルと歩を同じくするべく、来店や購買、サイト来訪などさまざまなKPIに対する検証がLIVE BOARD社内で可能になった。
一方で課題も多くある。
リーチ量
関東エリアだけでなく全国で扱えるメディアを目指し、現状よりさらにリーチ数、MAU数を拡大していく必要がある。
独自価値の可視化
OOHでのリーチ獲得にどのような独自価値があるのか、その価値をどのようにプランニングに生かすのかを提示していくことが重要である。
効果検証
高速PDCAを回すことなどクライアントが求める効果検証への高度化、高速化が求められている。
<中野氏>
デジタルメディア=ターゲティングできる媒体だと考えた場合、狙いたいターゲットの含有率が高いエリアに掲出できる点が魅力である。
またOOHは他の媒体との重複効果に価値があるとも考えている。効率的に重複を高めていくことができることが、DOOHのメリットである。重複効果によって認知よりも深い部分のリフトアップが見込めることも多い。LIVE BOARDの効率良くターゲットに重複効果を与えることができる点に期待している。
<梅本氏>
課題という点において、LIVE BOARDのみならずデジタルメディアが抱える課題の一つが「効率重視になりすぎている」ということがある。極論、広告主がどこに出してもいいから一番効率よくリーチを狙えるところに出してほしいという要望に対し、LIVE BOARDが効率だけを追い求めればよいのか、という点は課題の一つになると感じる。
効率も重要だが、どのメディアも「この業種に強い」「来店に効果がある」などの特徴が必要だ。LIVE BOARDに出稿することは他と何が違うのかという差別化を提示していくことが求められる。
差別化の一つとしてクリエイティブも大切だ。どの媒体も面だけではなく、特徴的なクリエイティブを掛け合わせることによって効果が出る。SNSの活用なども含め、LIVE BOARDがどんなクリエイティブを生み出せるのかは課題の一つでもあるが、期待している部分である。
<中野氏>
いわゆるデジタルメディアとDOOHの違いは「フィジカルに、このオケージョンで、こんな気分で接触する」と、体験として情報を出しわけられる部分である。体験する場所や時間帯によって、生活者の広告の受け取り方は異なる。その点に、デジタル広告のクリエイティブなどを差し替えられる柔軟性を掛け合わせることは、OOHとデジタル広告の良いところをどちらも活用でき、より深い広告の効果を生み出すことができる。フィジカルと柔軟性を用いた広告体験を提案できる点に今後も期待している。
<梅本氏>
期待したいことは体験価値とインパクトである。OOHは面の大きさや、オケージョンとの掛け合わせで体験価値を生み出せる唯一無二のメディアである。効率を求めることも必要だが、OOHにしかできない体験価値とインパクトを創造できることに楽しさを感じている。スマホのような小さな面ではなく、OOHは大きく見せることで提供できる価値があると考え、今後も期待する部分である。
<中野氏>
OOHにおいて、体験価値の効果を可視化することは究極の理想である。その一方で、測定できる指標に矮小化していくことはあってほしくない。できる範囲でとどまることはもったいない。OOHは表面的に計測できる指標以上の効果があると信じている。
また活用していくなかで、ビジネス成果にどうつながったか、というノーム値を積み重ねていくことも重要である。それがOOHの効果を可視化することにも結び付いていくだろう。
<真能>
今後DOOHは、テレビやデジタルメディアと歩を並べて効果測定ができることを引き続き求められていくだろう。一方でそれだけに囚われるのではなく、DOOHならではの体験価値をどう規定するのかを同時並行で進めていくことが大切だ。
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