そもそも近交係数ってなに?
牛は父から半分・母から半分ずつ遺伝子をもらいます
簡単に図解すると、生まれてくる子牛のパターンは
A~Dの四通りあるということになります
それでは先ほどの父とその子を交配したとき
どういうことが起きるでしょうか?
父と子を交配すると1/4の確率で
同じ遺伝子の組み合わせの子が誕生してしまうことが
わかります(図中のピンクの枠の子)
この時 父×子の近交係数は25である
とあらわすことができるのです
(1/4は25%)
近交係数というのはあくまでも確率として
同じ遺伝子の組み合わせを持つ子が生まれてくる
数値を表したものになります
低ければ低いほど近親交配のリスクは小さくなるといえます
今回の例では父・母・子の2世代しか
出てきていないので簡単な計算でしたが
実際にはその父にもまた父と母があり
母にも父と母があり・・・・・というふうに
何世代もの計算が必要になってくるのです
近交係数が高いメリットは?
家畜やペットなど、人間の手によって
交配がコントロールされている場合
わざと近交係数を高くする交配が行われる場合があります
とても簡単にいうと
【絶対に次の世代にも遺伝してほしい形質】を
固定させることができるというメリットがあるからです
下記の図のように近交係数の高い父だと
どんな母と交配しても必ず子にピンクの形質が
遺伝することがわかると思います
このようないわゆるインブリードと呼ばれる
交配を繰り返し(戻し交配)
品種改良や形質の維持を行っています
※わかりやすくするために極端な例を出していますが
実際はもっと複雑です
しかし近親交配には
虚弱児や奇形児の発生をはじめとして
増体の低下などの問題が多くあり
家畜やペットの交配・改良の方針として
近交係数は極力低いほうが望ましいという考え方が
現在では一般的です
******************************
純血種の犬や猫の近親交配や
サラブレッドの交配の歴史、
一部の地域で行われている和牛の閉鎖育種など
インブリードについては
様々な考え方が存在するので
興味がある方は調べてみてください
和牛の近交係数はどうやって計算するの?
これまでに説明してきたように
近交係数を計算するには
共通の祖先がどれだけいるか
ということが大事です
昔の和牛の種雄牛は【系統】を
基準に造成されていました
繁殖農家さんはその系統を参考に
子牛を生産していました
【藤良系】なら藤良系の血統ばかりで構成されている
【気高系】なら気高系の血統ばかりで構成されている
このため【藤良系】×【気高系】なら
自然と子牛の近交係数は
低くなる交配が可能でした
図は【芳之国】の血統構成です
藤良系統の血統で
固められていることがわかります
そしてこちらは【福之姫】の血統構成です
『福之姫は藤良系の種牛ですよ』と
言われていますが血統構成をみると
様々な系統が入り乱れており
必ずしもそうではないことがわかります
現在は全国どこからでも母牛の導入ができ
精液も様々な場所から
購入することが可能になりました
さらに今後はゲノムを活用し
系統に縛られない種雄牛の改良が
大幅に増えることが予想されるため
牛の血統の状況を系統の情報で
把握することがとても難しくなっていきます
健全で健康的な子牛を生産するために
ぜひくろくまくんの近交係数計算システムを
活用してみてくださいね
※くろくまくんでは血統書に記載されている
血統情報をもとに近交係数を簡易的に
計算しています
厳密な数値からは誤差が生じますので
子牛の正確な近交係数を知りたい方は
登記書の枠外上部を確認していただくか
全国和牛登録協会に問い合わせてみてください