『SPS装置をわかりやすく解説します!』
はじめに
SPSは日本発祥の技術で、現在は世界的に普及しており、
□「Spark Plasma Sintering(SPS):放電プラズマ焼結法」や
□「Plused Erectirc Current Sintering(PECS):パルス通電焼結法」と
概ねこの二つの呼び名で呼ばれている技術です
この日本発祥のSPSを一言で説明すると、
「加熱したいものを直接加熱することができる技術」となります。
今回は、
『直接加熱する』をどのようにして行っているのか
『直接加熱する』ことのメリット・デメリット
について図を用いてわかりやすく解説します!!
『直接加熱』をどのようにして行っているか
SPSは「加熱したいものを直接加熱することができる技術」と説明しました。
では、どのようにして『直接加熱』を行っているか、実際の写真と図で解説します!
SPS構成図
※焼結を行う際の構成図です。
実際の写真
※実際にはダイの外周に断熱材を巻き付けます。
SPSのチャンバー内は「電極」「ダイ」「パンチ」「対象物」「スペーサー」で構成されています。
上下電極の間に
① 焼結型:ダイとパンチで構成され、通常はグラファイト(黒鉛)製
② 対象物:焼結型の中に入れる。
③ スペーサー*¹:対象にパンチと電極の間に挿入
これらを挿入して、一軸の加圧力を負荷しながら特殊電流(ON-OFFパルス電流*²)を流します。
このようにして、ジュール熱により、電極間に挟んだものが発熱することで対象物の『直接加熱』を行います。
※1)「スペーサー」は電極保護などがメインですが、SPSではこの組合せが重要となる場合があります。
(詳しい説明は別の機会で行います)
※2)SPSはこの「ON-OFFパルス電流」を流すことが特徴です。(詳しい説明は別の機会で行います)
『直接加熱』のメリット・デメリット
では、『直接加熱』を行うメリット・デメリットは何でしょうか?
今回は同じ加圧焼結装置で『間接加熱』を用いるホットプレスと比較して解説します!
SPS構成図
HP(ホットプレス)構成図
<メリット>
【焼結時間】
SPSは100℃/minを超える急速昇温が可能で、1000℃を超える温度まで数分で到達します。
一方、ホットプレスは間接加熱で炉内全体を加熱するため、15℃/min程度の昇温速度となります。
従って、焼結時間はSPSの方がホットプレスよりも短くなります。
【粒成長抑制】
一般的に金属やセラミックスの内部構造は小さな結晶(結晶粒)の集合体である多結晶体となっています。
この一つ一つの小さな結晶の大きさが小さいほど、優れた性質を発揮することが多いです。
しかし、一般的にこの結晶が高温状態にさらされると、自身よりも小さい結晶を取り込んで成長して大きくなります。
SPSでは急速昇温が可能で焼結時間が短いため、高温状態にさらされる時間が短くなります。
従って、この結晶の成長を抑制することができ、優れた性質を持つ焼結体を得ることができます。
【温度傾斜焼結(FGMs)】
温度傾斜焼結(FGMs)とは、金属/金属・セラミックス/セラミックス・金属/セラミックスなどの
融点に差がある材料同士を同時に焼結する方法です。
SPSは電気を流すことで発生するジュール熱を利用して加熱を行うため、焼結型の形状を工夫すると
焼結型に極端な温度分布(温度のグラデーション)を持たせることが可能です。
これにより、融点の異なる材料同士を接合や焼結を行うことが可能です。
しかし、ホットプレスの場合は炉内全体の加熱になるため、このような温度分布を持たせることができず、
融点に差がある材料同士を焼結することは難しくなります。
【対象材料】
SPSはAlやTiなどの表面に強固な酸化被膜を持つ金属でも容易に緻密化することが可能です。
ポリマー・金属・セラミックス・金属間化合物・サーメットなど対象材料が非常に幅広いことも特徴です。
<デメリット>
【量産性】
SPSのデメリットは生産性にあります。
ホットプレスの場合は炉内全体を加熱するため、炉内に入ったものはすべて同じ温度で加熱されます。
従って、一度の稼働で大量に生産することができます。
一方で、SPSは装置能力の最大電流や加圧力がボトルネックとなり、ホットプレスよりも生産性が悪くなります。
しかし、一度の稼働が短時間で終わるため、バッチ数を増やすことでこのデメリットをカバーすることができます。
おわりに
今回は日本発祥の技術であるSPSの加熱方法やメリット・デメリットを
図やホットプレスと比較しながら解説しました。
解説できていない点もあると思いますが、簡単な質問も下記のお問合せから
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