金属3Dプリンターの説明等で”パラメータ”という言葉が使用されることが多いかと思います。これは、設定値のことです。
金属3Dプリンターのパラメータは200種以上ありますので、装置導入してから使用粉末の最適パラメータを探索するのは大変です。そのため、装置導入の際に、メーカー推奨のパラメータを購入するのが一般的です。
自社でパラメータ探索したいという方はパラメータを購入しなくても大丈夫なのですが、オープンパラメータ仕様の装置(ソフト)を選定する必要があります。しかしこれは汎用機のアップグレード版となるので、装置価格が少し高額となってしまいます。
自社製品をすぐにプリンター工法に置換えたい、開発費に時間とお金をかけられないなどの理由がなければ、オープンパラメータ仕様の装置導入が良いと個人的には思います。メーカー指定のパラメータのみを使用する汎用装置ですと、高額なメーカー指定の粉末を使用し続けなければいけません。また様々な形状モデルの造形を行っていくと、積層ピッチを変えたい、表面状態を良くしたいなど改善したい気持ちが強くなるはずです。
それでは、これよりパラメータの詳細をご紹介いたします。
200種類以上あるパラメータを大きく分けると
以下4種に区分されます。
① General parameter(全般的)
② Hatching parameter (ハッチング)
③ Contour parameter(輪郭)
④ Laser parameter (レーザー)
これらのパラメータ値の設定は、当社では3DXpert
(造形データ作成ソフト)で行います。
①~④のパラメータについて解説していきます。
① General parameter
・積層ピッチ
パウダーベット方式では、コーターにより粉末を均等の厚みで敷いていきます。この1層の厚みをいくらにするのかを
任意の値に設定することができます。当社のDMP350は10~100㎛の範囲で設定可能であり、デフォルト値は30㎛となります。
積層ピッチ以上に金属の溶融プールが大きいことから、この積層ピッチパラメータは、溶融・凝固現象に大きな影響を与える
因子であり、品質に大きな影響を及ぼすことがわかっています。しかし、過剰品質を避け極力時間短縮を図る必要があることか
ら、品質、強度が要求されない箇所などは、積層ピッチを厚くするなどの工夫をしなければなりません。
・レーザー操作方向
1層毎にレーザー照射して粉末を焼き固めていくのですが、毎回同じ方向からビーム照射すると熱が局所的にこもり、また溶融
凝固現象に大きな影響を与え、造形物に歪みが発生することがわかっています。
それを避けるためには、1層毎にレーザーの方向を変える必要があり、デフォルト値では1層毎に245°回転する様な設定がなされ
ています。
・上・中・下段の位置決め
Z方向を3分割、上中下段に分けてレーザーパラメータ(後述)を変えることができます。例えば、図のように下段は3層、上段は
3層、その間を中段とし、各段でレーザーの出力、走査速度を変化させることができます。造形時に、熱影響によりベースプレー
トにまで変形を与えてしまい、造形品質に大きな影響を与える可能性があるので、この位置決めも大切なパラメーターの一つ
です。
② Hatching parameter
・基本ハッチング 3種
デフォルトはStripsとなっています。1世代前の型はHexagonがデフォルトだったそうです。ハッチングピッチによる入熱量の差異
が、製品品質に大きな影響を与えることはわかっていますが、この形状の違いから何が変わるのかは現時点で当社での検証が十分
できていない状況です。
・ハッチング 可変値
様々な距離の値を設定することができるのですが、その一部をご紹介します。
先述の通り、ハッチングは入熱量に大きな影響を与え、造形後の材料特性に影響があるので、材料毎に検討して適切なデータを
把握しておく必要があるようです。
③ Contour parameter(輪郭)
・面の外形のオフセット値
一見ハッチング可変値の中にある外形からの距離に似ていますが、あちらは外形の外枠から何㎛入ったところの内側の面積を
ビーム照射するか(塗りつぶす)というパラメータです。一方、こちらは面をビーム照射した最後に外形の外枠をビームが
走りますが、その時の外形の外枠から何㎛内側にビームを照射するかという値になり、外形を整えるイメージです。
この値は表面粗さに影響してくると思われます。
④ Laser parameter
最も重要なパラメータであり以下の2項目の値の設定が可能です。
・レーザー出力値
・レーザー操作速度
また、レーザー操作速度などは、方向転換時には加減速があることから、その影響がどこまで品質に影響がでるかなども不確定で
あり、今後、サポートの種類・積層ピッチ・造形角度など、色々な形状に対して細かく値を変更しつつ対応していきたいと考えて
います。
パラメータをどのように設定ができるかを解説しました通り、これらパラメータを組み合わせ、同時に実物比較とのキャリブレー
ションなどを行いながらの最適条件を探索するとなると膨大なコストを覚悟しなければなりません。
金属3Dプリンターを導入すれば直ぐに造形ができる訳ではなく、造形技術の確立まで導入から少なくとも1、2年の期間を要しま
す。また、現状の国内レベルでは、機械加工で製作できている部品を金属3Dプリンター造形に置き換えた場合、コストは十分ペイ
できるレベルではないと思います。
まだ、日本国内では開発レベルかその入り口に入ったレベルにしかありませんが、既に海外では何十台も装置を並べて航空部品
を量産している会社もあり、日本はこの技術では正直周回遅れになっているように感じます。
些細なご相談でも構いませんので、皆様からのご依頼にお答えしつつ、金属3Dプリンターの造形技術を確立し、量産体制を整え
たいと考えています。地道な努力になりますが、目の前の課題を地道に解決していくことこそが、キャッチアップにつながると
考えております。
最寄りの黒崎駅は、小倉駅から快速で15分福岡県にお越しの際は、お気軽に工場見学にお立ち寄りください。
担当者:越水(こしみず)
電話:0949-43-5050
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