昨年9月末に建物が完成しました。
建物には、金属3Dプリンター室、作業室、PC室の3部屋あり、作業室にはサンドブラスト2台(粗、仕上げ)を設置しました。
装置導入後、メーカーによる動作確認、オペレーショントレーニング期間を経て昨年11月より稼働しています。
想定外のトラブルなどが多々発生し対応に追われていましたが、4ヶ月経った現在では、ようやく落ち着いて作業ができるようになってきました。長らく更新できていなかったブログも今後は定期的に更新していこうと思います。
今回は、造形品質に大きな影響を与える粉末について解説していきます。
当社で扱う粉末は、インコネル718
・3DSystems社の”Laserform Ni718” ガスアトマイズ粉末で粒径は<60㎛
(20~60㎛)5kgのボトル4本、20kgが最小購入ロットです。
左の写真はLaserform Ni718のSEM画像です。
購入時は全て綺麗な球形なのですが、見て頂くとお分かりの様に一部歪な
形状のものがあります。これは、レーザー照射により溶融した粉末が造形物
の周りに飛散し凝固したものとなります。
使用粉末は篩い(<60㎛)を行い何度も使用しますので、次第に球形では
ない粉末が増加していきます。造形毎に粉末のSEM観察、造形物の密度測定
を実施していく必要があるかもしれません。
インコネル用の造形パラメータは有償で購入しており、メーカー指定の粉末を使用しなければなりません。将来はオリジナル粉末を製作しパラメータ開発を行うことが目標ですが、当面は指定粉末を使用し、基礎データの蓄積を開始しています。
粉末はベルギーから輸入されており、価格はご想像通りで高額です。
パウダーベット方式を導入されている方は、造形物以外に供給しなければならない粉末が多く、粉末の使用量が一番気になるところではないかと思います。造形物を作成するにあたり、必要な粉末は、以下の4種となります。
① 造形物(もちろんですね。)
② ベースプレート上に積層された造形物以外の粉末
③ コーターによる粉末積層で発生する余分な粉末
④ 飛散粉末
今回、この中の③、④項目について詳しくご説明します。
項目③ コーターによる粉末積層で発生する余分な粉末
例えば、50㎛ピッチで積層していくとします。
ベースプレート上に50㎛の粉末を均等に敷き詰める為には、右図の様に必要量の2培近くの粉末を供給する必要があります。余った粉末は端の溝に落とし込まれ回収タンクに溜める仕組みになっています。
項目④ 飛散粉末
造形すると装置内に粉末が飛散しますが、実際に稼働させてみると想像以上に飛散していました。試しに装置内面の床の飛散粉末を回収してみたところ15時間の造形で250g飛散していました。仮に同じ造形を10回実施したとすると飛散による損失量は2.5kgとなります。年間の損失量を考えると相当な金額になりまので、飛散粉末を少しでも回収できるような方法を現在検討中です。
造形物以外の②~④は、回収し篩(<60㎛)を行い再利用しています。
回収した粉末は、篩機によって >60㎛粒径のものを除去します。
この振るい機は3DSystems社製で、粉塵爆発を避けるため内部をアルゴン置換しないと起動しない仕組みになっています。
(インコネルは、空気中に浮遊する粉塵雲が爆発する可能性があります。)
また、この篩機は、大きい装置(高さ2m)であり粉末投入口は上部にあるため、粉末ボトルを持ち上げて投入する仕組みとなっています。
この粉末ボトル一杯に粉末に詰めると10kg以上(インコネル粉末の比重は8.19)になりますのでしっかりした足場が必要になります。
回収粉末には、造形中に崩れたサポートの破片、細かい造形箇所が欠落した微少な金属塊が混入しています。このような混入物が原因で、かなりの頻度でフィルターが破れてしまいます。破れたフィルターが装置内に詰まってしまい、内部の粉末を全て除去するなど復旧にかなりの時間を要することになります。そのため、篩う前に一度大きめのフィルターを通し混入物を除去するようにしました。効果があるかどうか今後経過観察していきます。
微細粉末のため、普通の掃除機を使用すると粉塵爆発の危険がありますので、粉塵専用の掃除機を準備する必要があります。掃除機も3DSystems社製を購入しました。
掃除機の大きさに、見学に来られた方は皆さん驚かれます。
装置内の回収できないところに飛散した粉末、回収作業中に床にこぼれた粉末、篩い作業中に飛散した粉末などを掃除機で吸い取ります。
微細粉末は、暴露により健康被害を起こすなど人体に有害な物質ですので、作業中は防塵服、防塵マスク、ゴム手袋などの着用は必須となります。安全第一で作業を行っています。
事前に十分な検討をしていたのですが、実際に作業を行うと想定外のことが多々起こるものです。
ようやく落ち着いて造形に着手できるようになってきました。
現在、当社の装置では、インコネルのみの対応とはなりますが、SUS、Ti合金など造形可能です。
お見積り依頼、試作検討などございましたら、お気軽にご相談ください。
また、装置導入を検討されている企業様がいらっしゃいましたら、お力になれる範囲でご協力いたしますので何なりとご相談ください。
最寄りの黒崎駅は、小倉駅から快速で15分福岡県にお越しの際は、お気軽に工場見学にお立ち寄りください。
担当者:越水(こしみず)
携帯:090-3012-2482 メール:koshimizu@kuroki.co.jp