日本大学文理学部情報科学科
瀬川日向
本稿では,ギターの単旋律に対して,ビタビアルゴリズムを適用することで簡略化されたタブ譜を出力するシステムの作成を試みる.難しいメロディは初心者が練習するモチベーションを下げてしまうことがある.原曲に近いメロディで,弾きやすく音高を変化させることで,初心者の練習のモチベーションを維持することが期待できる.
過去の研究では,HMMを使用し,押弦位置を移動距離を最小化してタブ譜を生成する研究や,遺伝的アルゴリズムを使用し,押弦可能な位置でのタブ譜生成の研究,コードとキーの進行から,ギターソロタブ譜を生成する研究は行われていたが,タブ譜が表すメロディを簡略化は行われていなかった.
また,メロディ簡略化の研究は過去に行われているが,西洋古典音楽やピアノの練習用楽譜に対する簡略化であった.そのため,ギターのタブ譜における簡略化は行われていなかった.
本研究では,演奏しにくさを表す「演奏コスト」と原曲からの乖離を表す「メロディ改変ペナルティ」を定義し、その和が最小になる押弦位置の時系列をビタビアルゴリズムで探索する.
本手法により弾きやすさを考慮したタブ譜が得られることで,初心者がモチベーションを下げずに練習できることが期待される.
提案手法のほかに,PyGTTMに基づく手法と表拍の音符の押弦位置に合わせる手法でのタブ譜生成も行い比較する.使用したデータは16分音符の連続している,動きの速いタブ譜を2つ使用した.
実験結果から,提案手法では,PyGTTMに基づく手法と表拍の音符の押弦位置に合わせる手法と比べ,移動距離の少ないタブ譜が生成された.また,提案手法で出力したタブ譜では,スケール外の音符が0になり,全てスケール内の音符が出力された.