日本大学文理学部情報科学科
北原研究室 大川真由子
概要
基礎練習は, 楽器の演奏技術向上のために欠かせないものである. しかし, 基礎練習用の楽譜は単調であり, バリエーションが少ないため, 継続的に練習することは難しい.
過去の研究では, 練習者が好んで聴取している楽曲を基に基礎練習の要素を取り入れた伴奏を自動的に編曲するシステムや, 難易度分けをすることで練習継続意欲を保つシステムが提案されている. その他にも, 演奏支援や楽譜生成を目的とした研究は数多く存在するが, 練習意欲維持に焦点を当てた研究は数少ない.
本稿では, 基礎練習のひとつであるスケール練習に着目して研究を行う. 練習意欲維持を目的として, 自分の好きな曲に合わせて練習を行うことのできるスケール楽譜生成システムを提案する. 入力したMIDIデータからコードを推定し, キーとコードに合うスケールを出力することで, 不協和感なく楽曲に合わせて練習することが可能となる. コード推定にはクロマベクトルを, スケールの生成には二重マルコフモデルを用いる.
本システムで生成された楽譜は通常の楽譜よりも難しくなることが予想されるため, 生成したスケール楽譜の難易度調査を目的として評価実験を実施した. その結果, 個人差はあるものの, 基礎練習として成り立つ程度の難易度であると結論づけた. また本システムを使用することで, 練習の楽しさやモチベーション向上の可能性が示唆された. 加えて, 譜読み練習への活用可能性も示された.
※訂正箇所があったため、02/07に最新バージョンをアップロードしました。