慶應数理オンラインセミナー

2022年度以降は理科大との共催で行い,次のウェブサイトで情報をお知らせします.

https://sites.google.com/view/keio-rikadai-online-seminar/


世話人


開催目的

オンライン主体の環境になってから、コモンルームのような教員や学生間が気軽に交流出来る場がなくなってしまいました。そこで、それらの代わりとなる場として、当セミナーを発足しました。様々な研究分野の専門家による講演や交流を通して、他分野を知る機会や慶應数理内での活発な研究活動の一助となる事を目的としています。

本オンラインセミナーの聴講を希望される方は金村までお気軽にお問い合わせください。

原則として、水曜日の17時に開催する予定です。

10月27日と11月17日と12月15日は集中講義のため開催しません。

録画をしている講演もありますので、もし録画を閲覧したい人がございましたら、金村までメールを送ってください。


講演日程


講演者:米山慎太郎(慶應義塾大学)

日時:10月9日16時(通常と日時が異なります。ご注意ください。)

題目:調査観察研究における統計的推測での課題とその解決法についての概要

概要:アンケート調査のように,研究者が処置の割り付けをコントロールできない研究を調査観察研究と呼ぶ.調査観察研究において統計的推測を行う場合,様々な問題に直面する.調査観察研究で処置の効果を推定する場合,処置群と対照群の単純な差は両群の共変量分布の違いにも由来するとも考えられるため,共変量分布を調整する必要がある.また,調査観察研究により得られたデータには欠測がある場合も多く,適切に統計的推測を行うにはその調整も行わなければならない.

本発表では,まずデータサイエンスや統計科学について概観し,さらに調査観察研究における統計的因果推論や欠測データの調整法について説明を行う.また,発表者のこれまでの研究結果である,Missing Not At Random (MNAR)と呼ばれる欠測がある場合における処置効果の推定法をについて述べ,そのシミュレーション実験の結果を示す.


講演者:安藤遼哉(東京理科大学)

日時:10月13日18(通常と開始時刻異なります。ご注意ください。)

題目:Weakly proregular sequence and Čech, local cohomology

概要:このセミナーでは,Schenzelによる弱副正則列(weakly proregular sequence)を紹介する.これはNoether環において局所コホモロジーとČechコホモロジーの間に同型が存在するという定理を非Noether環に拡張するために導入されたもので,Schenzelはこれらのコホモロジーを定義する点列a_1,...,a_rが弱副正則列であるとき,かつそのときに限り,これらのコホモロジーの間に関手的な同型が存在することを証明した.この観点において,上に述べたNoether環における事実は,Noether環上の任意の点列は弱副正則である,という形で理解できる.

Schenzelは導来圏の言葉を用いて証明を行ったが,本セミナーでは講演者のプレプリント(arXiv:2105.07652,投稿中)に基づいて,Abel 圏の言葉のみを用いて説明する.


講演者:徳田悠貴(慶應義塾大学

日時:10月20日17時

題目:標数pの手法について

概要:正標数の環では, Frobenius写像と呼ばれるp乗写像が環準同型となる. このFrobenius写像を用いて, 1980年後半にHochster, Hunekeらによって正標数の環における密着閉包の理論が創設された. 更にその後2000年代に入ると, MMPに登場する標数0の特異点とFrobenius写像で定義される正標数の特異点が, pに関する正標数還元を通じて対応することが知られるようになり, 現在でもその精密化に関する研究が盛んに行われている. 本講演では, まずFrobenius写像による正標数の環の理論の概説を行い, その後標数0の特異点との対応のついて紹介する.


講演者:三浦大地(慶應義塾大学)

日時:10月20日17時50分

題目:トロピカル曲線上のRiemann-Roch理論

概要:トロピカル幾何学とは,代数幾何学の組み合わせ的な類似物を研究する分野である.代数幾何学では多項式と代数多様体を考えるが,トロピカル幾何学ではそれらの"組み合わせ的影"である区分的線形関数とトロピカル多様体について考える.特に,1次元のトロピカル多様体であるトロピカル曲線は距離付きグラフとして実現され,いくつか代数幾何学と類似の結果が成り立っている.本講演ではそのうちのひとつとして,Baker-Norine,Gathmann-Kerber,Mikhalkin-Zharkovらによる,トロピカル曲線上のRiemann-Rochの定理を紹介する.


講演者:竹内愛理(Karlsruhe Institute of Technology)

日時:11月3日17時

題目:可積分ビリヤード系と等角変換

概要:古典力学におけるビリヤードの可積分性は最初にG. D. Birkhoffにって研究され、後にY. Sinaiによってカオス的挙動やエルゴード性が調べられた。L. Boltzmannは中心力の存在下でビリヤード系を提案し、中心を通らない直線の反射壁を持つそのようなビリヤードはエルゴード的であると予想した。近年、中心力の特別なケースであるケプラーポテンシャルの下ではそのようなビリヤードはエルゴード的ではなく、むしろ可積分であるということがGallavotti-Jauslionにより示された。この講演では、等角写像によってBoltzmannの可積分ビリヤード系を含む様々な可積分ビリヤード系が対応付けられることを示し、ケプラーポテンシャルの下でのより一般的な反射壁を持つビリヤードの可積分性を導く。また、等角写像はtwo-center problemと可分なハミルトニアン系を対応付け、それによりtwo-center problemによるポテンシャル下での可積分なビリヤードを構成することが可能になる。この講演はUniversity of AugsburgのLei Zhao氏との共同研究に基づく。


講演者:鈴木新太郎(慶應義塾大学)

日時:11月10日17時

題目:β-変換のエルゴード理論

概要:β-変換は単位閉区間上で定義される区分的線形拡大写像の典型例として知られており, 底をβ>1とするある種の数の展開(β-展開)を与える力学系として, そのエルゴード理論的性質およびβの代数的性質との関連について研究が盛んに行われている.

本講演ではβ-変換を通じてエルゴード理論に関する基本的な用語の解説を行う. またβ-変換に関するいくつかの先行研究を紹介した後,  最近講演者により得られた結果について紹介する. 


講演者:橋本七海(慶應義塾大学)

日時:11月24日17時

題目:A Proof of the Gelfand-Naimark Theorem for Abelian C*-Algebras

概要:作用素環論は, 量子力学を数学的に定式化するという目的でvon Neumannらによって研究が始められたもので, 数学の中でも比較的新しい研究分野である. 作用素環論は, 複素数体上の無限次元の線形代数学と言えるため, 関数解析学に属する分野として捉えられている. しかし, その手法や応用については, K-理論, 非可換幾何, 表現論, 力学系, 場の量子論など, 数学・物理のあらゆる分野と相互的に関わり合いながら発展してきた分野である.   

 作用素環はC*-環とvon Neumann環に分かれるが, 発表者は現在, 前者についての研究を行っている. 作用素環の研究では分類理論が中心的な話題であり, C*-環の構造についてはさまざまな研究が行われてきた. 本講演では, その中でも非常に重要な結果であるGelfand-Naimarkの定理について紹介し, その証明を与えることを目標にする.

なお, 本講演は, 関数解析学を専門としないような方も興味が持てるよう, C*-環の定義や例といった入門的な内容から取り扱うことを予定している.  


講演者:程島一佐(慶應義塾大学)

日時:11月24日17時50分

題目:ヒルベルト空間上での作用素の極分解

概要: 線形代数には固有値, 共役転置, 極分解 (行列において, ユニタリー行列と半正定値エル ミート行列の積に分解すること) などの概念がある. 一方, 関数解析は無限次元の線形代数と言われている. 特に, 多元環やC*環では, 有限次元の線形代数における類似概念を参考にして定義されている概念が多くある.

この講演では, 関数解析のトピックの 1 つとして, 多元環や C*環の解説を行いながら, 行列における様々な概念との比較をする. より詳しくは, 固有値や共役転置の一般化にあた るスペクトラム, 対合の説明を行い, ヒルベルト空間上の作用素の極分解ができることを示す.



講演者:工藤勇(北海道大学)

日時:12月1日17時

題目:直線配置の実現空間とその既約性

概要:超平面配置における位相不変量が組合せ論的に決定できるか、という問いは超平面配置の研究において主たる問題意識の一つである。

今セミナーではこれについて線形代数の初等的な知識のみを仮定した上で、超平面配置の入門的内容から出発して解説することを目的とする。具体的には超平面配置における諸定義などの入門的な内容と具体例から始め、組合せ論的手法の契機となったOrlik-Solomon代数とそれにより得られる結果について解説する。最終的にNazir-Yoshinagaにより行われた、直線配置のモジュライ空間に対する組合せ論的な考察について時間の許す限りで説明を行う。


講演者:長田翔太(九州大学)

日時:12月8日17時

題目:行列式点過程とその周辺

概要:点過程とは非負整数値Radon測度に値をとる確率変数であり,空間上のモノの配置や空間上を運動する粒子のスナップショットなどのランダムな粒子配置を表現する.行列式点過程は正定値核で決定される点過程であり,反発力が働く粒子系を表す.本講演では,行列式点過程の性質および求積法への応用について紹介する.


講演者:石井竣(数理解析研究所)

日時:12月22日17時

題目:虚数乗法を持つ楕円曲線引く原点に付随する外Galois表現

概要:楕円曲線引く原点の(幾何的)基本群に付随する外Galois表現は, 楕円曲線のTate加群に付随するGalois表現の非可換化と見做せるような対象である. 本講演では, 虚数乗法という特別な対称性を持つ楕円曲線から原点を引いて得られる双曲的曲線に付随する副$p$外Galois表現がどのような数論的性質を持っているかについて講演者が行った観察を, 射影直線引く3点に付随する副$p$外Galois表現に対して行われた先行研究と比較しながら紹介する.

また本講演ではなるべく専門外の方々, また学部生の方々にも興味を持っていただけるよう, 楕円曲線, 虚数乗法, また外Galois表現について出来るだけ初歩から解説する予定である.

過去の講演

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講演者:紅村冬大

日時:4月20日16時30分

題目:Analysis of the Cuntz algebras using the polycyclic monoids

概要:作用素環論は関数解析の一分野であり,主に非可換かつ無限次元の代数を扱う.作用素環には多種多様なものがあり,全ての作用素環に共通する理論を構築することは困難である.そこで,統一的な解析が可能で且つなるべく広範な作用素環のクラスを考えることが重要となるが,そのような作用素環のクラスとして発表者はエタール亜群や逆半群から得られる作用素環に注目して研究を行っている.本発表ではクンツ環と呼ばれる重要な作用素環を例にとり,どのようにして作用素環の構造を逆半群によって解析するか説明する.特に,クンツ環のイデアルや部分環の構造と多重巡回半群(polycyclic monoid)の構造との関係について説明する.なお,本発表の一部は発表者のpreprint(arXiv:2007.11456)に基づく.


講演者:臺信直人

日時:4月27日16時30分

題目:保型形式に伴う法p表現に付随する代数体のイデアル類群について

概要:代数体のイデアル類群とは、その代数体の数とイデアルのずれを測るような有限群であり、整数論における重要な研究対象である。一方で、有理数体上定義された楕円曲線Eに対しTate-Shafarevich群という群が定義され、この群とEから生じるある代数体K(E)のイデアル類群を関係づけるような研究が古くからなされてきた。ここで代数体K(E)は楕円曲線Eに付随するGalois表現というものから生じる代数体と捉えることができる。有理数体上の楕円曲線は重さ2の保型形式と対応し、一般に重さが2よりも大きい保型形式に対しても同様のGalois表現が付随することが知られている。本発表では楕円曲線よりも一般に、保型形式fに付随するGalois表現ρから生じる代数体K(f)に対して、ρの(Bloch-Katoの)Tate-Shafarevich群とK(f)のイデアル類群とを結びつけるような結果について、発表者によって得られたものを紹介する。


講演者:橋本悠香

日時:5月11日16時30分

題目:Reproducing kernel Hilbert C*-moduleのデータ解析への応用

概要:RKHM (Reproducing kernel Hilbert C*-module)はRKHS (Reproducing kernel Hilbert space)の一般化であり,C*環に値を持つ内積の構造を持つ.RKHSは,その表現能力の高さと計算可能性から,データ解析への応用がさかんに研究されてきた.しかし,RKHMはこれまでに理論的な研究がメインであり,データ解析の枠組みでRKHMが用いられたケースは非常に少ない.本発表では,RKHMをデータ解析へ応用するための基本的な性質を示す.その上で,C*環に値を持つ内積を利用することで,関数データの構造を記述し抽出することができることを紹介する.


講演者:冨田拓希

日時:5月18日16時30分

題目:絶対ゼータ関数について

概要:絶対ゼータ関数とは、F_1スキームと呼ばれる幾何的対象に付随するゼータ関数として導入されたものであり、有限体F_p上の代数方程式の解の個数の母関数である合同ゼータ関数を“p→1とした極限”として定義される関数である。F_1や絶対ゼータ関数についての理論は、Riemann予想への強力なアプローチを与える可能性があると示唆されており、現在様々な候補が提案されている発展途上の理論である。本発表の前半では、F_1や絶対ゼータ関数についての理論の背景について説明する。本発表の後半では、絶対ゼータ関数がある無限積構造 (絶対Euler積) を持つであろうという黒川の示唆について紹介し、それに関して発表者が得た結果について紹介する。


講演者:齋藤陽平

日時:5月24日17時30分

題目:Borel-Weil-Bottの定理

概要:Lie群の表現論において既約表現は構成要素として重要な役割を果たす。特に、対象のLie群がコンパクトである場合、Hillbert空間への表現は既約表現の直和に分解される。コンパクトな連結半単純Lie群の既約表現は、Cartanの定理によりどのようなものが存在するかが決定されており、Borel-Weilの定理によりそれらが旗多様体上の正則バンドルの切断の上に表現されることが分かっている。Borel-Weil-Bottの定理はさらに高次のコホモロジーへの表現の様子を記述する。この定理は高次のコホモロジーを理解するという意味で代数幾何的にも意味のある定理であり、非コンパクトなLie群の離散系列表現を考えるうえでも一つの視点を与えている。今回の講演ではBorel-Weil-Bottの定理の証明のスケッチを述べ、離散系列との関連を説明する。


講演者:内村朝樹

日時:6月1日16時30分

題目:Cuntz-Pimsner環の性質と双圏論的アプローチ

概要:C*環論において, 何らかの数学的対象からC*環を構成し, 出来上がったC*環の性質を構成材料の性質で特徴付ける研究がよくなされている. C*環とその上のヒルベルト加群から構成されるCuntz-Pimsner環は, Zとの接合積C*環やCuntz-Krieger環など, 広範なクラスのC*環を含む興味深い対象である. 本発表の前半では, Cuntz-Pimsner環の構成方法を説明し, その性質を構成材料であるC*環とヒルベルト加群の性質で特徴付ける. 本発表の後半では, C*環のなす双圏においてCuntz-Pimsner環がある図式の余極限となっていることを説明し, この事実を踏まえてCuntz-Pimsner環を拡張する研究について紹介する.


講演者:松村英樹

日時:6月9日17時

題目:Rational points on hyperelliptic curves

概要:整数論において、与えられた代数方程式の有理数解を決定する問題は古代ギリシャ時代から研究されてきた。 これは、現代的には、代数曲線の有理点集合を決定する幾何学的な問題と見なすことができる。 本講演の前半では、超楕円曲線の有理点問題の応用として、 「周の長さ同士が等しく、また面積同士が等しい有理直角三角形と有理二等辺三角形の組は相似を除いてただ1組しか存在しない」 という定理を紹介する。後半では、超楕円曲線のある種の無限族の有理点集合の決定に関する結果を紹介する。 前半の内容及び後半の内容の一部は平川義之輔氏との共同研究である。


講演者:吉田匠

日時:6月15日16時30分

題目:X_0(49)の2次のツイストにおけるBSD予想について

概要:楕円曲線はフェルマーの最終定理の証明や合同数問題などに関わる重要な代数曲線である。しかし、楕円曲線の有理点集合の構造が一般にどのようになっているかは、現在でも完全にはわかっておらず、研究が盛んに行われている。本講演の前半では、楕円曲線の有理点やL関数についての概説と、その重要な予想であるBSD予想(Birch-Swinnerton-Dyer予想)について紹介する。後半では、具体的な楕円曲線(すなわちモジュラー曲線X_0(49)の2次のツイスト)におけるBSD予想について発表者が得た定理を紹介する。


講演者:三家雅弘

日時:6月22日16時30分

題目:グラフのタフネスとハミルトン閉路の存在性

概要:グラフのハミルトン閉路とは、そのグラフの全ての頂点を通る閉路のことである。与えられたグラフがハミルトン閉路を持つかを判定する効率のよい方法は知られておらず、ハミルトン閉路はグラフ理論における研究対象のひとつとなっている。グラフのタフネスとは、そのグラフの頂点分離集合を用いて定義される不変量である。ハミルトン閉路を持つグラフは、タフネスが1以上であることが知られている。この命題の逆は成り立たないが、「ある定数tが存在して、タフネスがt以上となるグラフはハミルトン閉路を持つ」ことがChvatalにより予想されており、現在も未解決である。本発表では、Chvatalの予想に関連するいくつかの定理について、発表者が得た結果も含めて紹介する。


講演者:富岡駿允

日時:6月29日16時30分

題目:Adiabatic theorem for fermions on a lattice

概要:量子力学において系の時間発展を求めることは,ハミルトニアンによって定まる微分方程式を解くことに相当するが,多体系などの複雑な系においてはこの微分方程式を解くのは一般には難しい.そこで,簡略化された,しかし系の振る舞いがよく分かるような方程式を代わりに考えるということがしばしば行われている.この代わりの方程式の解が元の時間発展の解をどれくらいの精度で近似できているかを評価する定理を断熱定理 ( adiabatic theorem ) という.断熱定理には,定理の仮定や近似の評価に関して様々なバージョンが知られている.本講演では,量子力学の数学的側面に関する導入から始め,私が現在読んでいる論文 arXiv:1707.01852 で証明されている格子上のフェルミオンのなす多体系における断熱定理について紹介する.


講演者:伊縫寛治

日時:7月6日16時30分

題目:カーネル法の基礎と応用

概要:近年の機械学習の発展に伴い, カーネル法と呼ばれる統計的手法も発展してきている. カーネル法とは, 正定値カーネルと呼ばれる関数を用いてデータを高次元の空間に変換し統計的推定を行う手法のことである. カーネル法は1990年代に登場して以来, 様々な分野に応用されてきているが, 特に近年は時系列データの解析にカーネル法を応用する研究がみられるようになった. しかし, この分野では最近考えられた手法であるために, まだ数学的基礎がまだ確立された分野であるとは言えず, 数学的正当化が必要である. そこで, 本講演ではカーネル法の時系列データの解析への応用を理解するための数学的基礎と講演者の近年の研究を紹介する. 具体的には, 初めにカーネル法の数学的基礎にあたる再生核ヒルベルト空間論の初歩を説明したあと, 時系列データの解析 の数学的基礎にあたるエルゴード理論の初歩を説明する. 最後に, 最近得られた得られた講演者の結果を紹介する.


講演者:須田颯

日時:7月16日16時30分

題目:確率調和振動子鎖におけるエネルギー超拡散について

概要:近年の数値実験により, 一次元非線形系では熱の異常輸送やそれに対応したエネルギー超拡散が広く見られることが知られている. このような現象を数学的に解析するためには, 確率調和振動子鎖と呼ばれる微視的数理モデルが用いられている.  

本講演では, 確率調和振動子鎖におけるエネルギー超拡散の厳密な導出結果をいくつか紹介する. それに先立ち, ミクロ系からマクロ系の時間発展法則を導くスケール極限の枠組みについても簡単に説明する.