自分の博物館をつくってみよう
(2022年度)
はじめに
1学期の授業では、新詳日本史や史料の基礎210選を使い、歴史叙述は史料に基づいてなされていることを、みなさんにお伝えしてきました(つもりです)。こんどは、皆さんにそれを体験してもらおうと思っています。
みなさんは、博物館の特別展(企画展)を見たことがありますか?例えば、国立歴史民俗博物館のHPを見てください。特別展では何かをテーマとして、それに関わる様々な資料を展示します。展示企画者は、最初にテーマに関する説明を書き、それぞれの展示資料にはテーマに沿った解説をつけ、見せる工夫をし、関連史料を作成します。そして、最後に見終わった観覧者へのメッセージを書きます。
今回、みなさんにはこれをネットワーク上で行っていただきます。自分でテーマを考え、それに沿った展示資料を検索し、展示を見せる工夫をし、各種解説をつけてもらいます。利用するプラットフォームは、国立国会図書館が運営する、ジャパンサーチです。
作業の流れ
①ジャパンサーチをつかって展示品を選定する。
②マイギャラリーにマイノートをインポートする。
③テーマにそった形で展示品を並べかえてみる。
③ツール(地図や年表など)をつかって展示のストーリーを作り上げる。
④マイギャラリー上で、以下の構成を整える。
1 館長あいさつ(テキスト)
2 この展示について(展示の趣旨)(テキスト)
3 展示(著作権の問題に注意しましょう、必要に応じてリスト機能を活用しましょう)
展示品1(館長からの一言)
展示品2(館長からの一言)
展示品3(館長からの一言)
展示品4(館長からの一言)
展示品5(館長からの一言)
4 展示を見終わった人へのメッセージ(テキスト)
5 展示関連イベントについて(テキスト)
⑤ギャラリー(2022年度塾高3年生日本史(高橋) )にマイギャラリーから追加する。
各自のギャラリーのタイトルは、
タイトル+(学年クラス番号名前) とすること。
よみのところに
クラスのユニット名(例:金34水2)+学年クラス番号 とすること
※私のすごく簡易なお手本(「室町時代の御教書」)もここにあります。
⑥同級生の博物館を見て回り、teams上のフォームに必要なことを記入して提出。
1コマ目
博物館のテーマを決めよう(1コマ目)
今回の課題では、みなさんなりの関心を掘り下げ、その興味関心を深めて欲しいと思います。そして、自分が興味を持ったことを共有すれば、きっと、お互いの勉強になるのでは?という試みでもあります。
近年、文化財関係のオンラインデータベースはどんどん整備され、かつてはそこに行かなければ見ることができなかった様々な文化財が、居ながらにして見られるようになってきています。これを活用しない手はありません。かつて、研究者の中には自分の手許に文化財を抱え込み、それを独占することでオリジナルの研究を誇った人がいましたが、そのような状況は改善されつつあるのです。
一方で、ネットで利用するためには、著作権の問題をクリアしなければなりません。手軽に見られる事でなんでもかんでも、無制限に利用可能なわけではありません。文化財に限らず、様々なもの、コンテンツを維持するためには、金銭的なことも含めた努力が必要です。このような問題に対する理解も深めていきたいと思います。
今回の課題の大きな目的は、様々な歴史の記述は資料に基づいて書かれている、ということをみなさんに理解してもらうことです。そして、これをきっかけに、日本には様々な文化財があり、それを保全するために多くの努力が払われ、捉え方次第では身近なところにもたくさんの文化財が存在していることを、知ってもらえれば、と思っています。
展示を行うためには、筋書き、ストーリーが必要です。みなさんが、何を知って欲しいのかというところから考え始めるとよいと思います。まずは大雑把に考えます。
その次に、展示資料を選んでいきましょう。こういう資料があって、この資料からこういうことがわかる、だから是非見て欲しいというようなコンセプトを立てていきます。
まずは、『新詳日本史』(浜島書店、2022年)を利用してテーマを決めます。図表のP1~345の範囲でざっと見て、自分なりに関心をもてるところを見つけ出しましょう。そして、そのページにどのような資料が掲載されているかをヒントに、自分なりに資料を探していきます。自分が知りたい、人に伝えたい、動機は様々でかまいません。また、後になって変更しても構いません。
テーマにまるわるモノを探そう
ここからはオンラインデータベースを利用します。今回使うのは、ジャパンサーチというwebサイトです。
このwebサイトを開くと、少し下にギャラリーというものがあります。今回皆さんが作成するのは、このギャラリーです。できれば、みなさんが作成したギャラリーも、全世界に公開したいと思っています(昨年度の普通部生が作成したものの一部は、公開されています)。ですので、後でお話しする著作権には十分に注意しましょう。がんばりましょう!
まずは、ジャパンサーチを使ってみましょう。
webサイトを開いて、検索窓(タブレットだと、右上の虫眼鏡をクリックすると、検索窓が現れます。)に、自分の興味関心にそった単語を入力してみましょう。すると、様々な文化財が現れるはずです。そして、気に入ったものがあったら、説明を見てみましょう。
例えば、「江戸幕府 将軍」と入力すると、314件ヒットします。右のように一枚のもの、一つのものであったり、冊子であったりします。それぞれをクリックすると説明を読むことができ、さらにその文化財の収録元のデータベースも開くことができます(実はジャパンサーチは様々なデータベースを串刺し検索できるwebサイトなのです)。
とりあえず気になる文化財は、♡マークをクリックしてください。どんどんためていきましょう。ここでクリックした作品は、右上のマイページで一覧になっていきます。
展示品は最低5つ以上選んでいきます。5つを目指すのではなくて、とりあえず気になるものは全部チェックしましょう。まずはたくさん選んで、あとから削除するほうがよいでしょう。
冊子を展示するときは、展示したいページを表示した状態で♡マークをクリックすると、そのページを展示することができます。
ちなみに、この♡マークのデータは、ブラウザのキャッシュに保存されています。スマホのchromeで見ていた場合、そのスマホのchromeのみに保存されます。これをタブレットやPCにうつす方法は後で説明しますが、データのあり方として覚えておいてください。
検索がうまくできない!という人は、右の動画(5分程度)を見てみてください。どんなキーワードをいれたらよいか、参考になると思います。
こうして検索していくわけですが、検索してもヒットしない!そもそもどんな検索ワードをいれたらよいかわからない!という場合もあるかと思います。
その際、図書室のページ(学内のみ)に掲載されている、卒研対策ガイドブック「図書館活用術!(応用編)」を読んでみましょう(卒研の授業で紙を配られている人が多いと思います)。目的の資料にたどり着く様々な方法が紹介されています(これは図書室で冊子としてもらうこともできます)。また、図書室のページには様々な情報検索サイトのリンクもあります。これも活用しましょう。
そして、ネット検索はもちろん便利なのですが、本からたどった方がうまく行く場合もあります。この課題では、最終的にはジャパンサーチから資料を見つけてもらいますが、本から得た情報をもとに、ジャパンサーチでピンポイントの検索をかける方法もあります。ネット情報と紙の情報と、ハイブリッドで使いこなせるスタイルを目指しましょう(実は、先学期の「馬」課題なのですが、図書室で探した本が一番たくさんの情報を載せていました。)。書棚の背表紙から目的の情報にたどり着けることもあります。
検索するには、何らかのキーワードが必要ですが、思いついたキーワードでは十分な結果が得られない場合があります。その場合は、キーワードから見直しましょう。そんなときに役立つのが、国立国会図書館が運営するリサーチナビです。
例えば、リサーチナビの検索窓に「将軍」と入力すると、以下の様な画面が表示されます。
将軍というキーワードからどのようなキーワードが連想できるか、表示されます。仮に将軍で検索しても何も出てこなかった場合、爵位、軍人、軍事、政治史、政治家・官僚の称号、軍人・戦士の称号などを検索すると、将軍に関わる情報を引き出すことができるでしょう。細かすぎる下位概念を検索ワードとして利用しても、なかなかうまくいかないことがあります。そんなとき、検索ワードを少し上位の概念に広げると、目的の検索結果が得られることがあります。今後とも活用できる方法だと思いますので、覚えておいてください。
2コマ目
モノに何かを語らせよう
いろいろな工夫をして集めたお気に入りの文化財を、様々な編集ができる「マイギャラリー」にインポートします。
マイギャラリーへのインポート手順
①右上の…をクリックし、ギャラリーを作るをクリック
②中央付近の+ページを追加をクリック
③新しいページ1が表示されたら、鉛筆マークをクリック
④新しいページ1を博物館名+学年クラス番号氏名(例:3G99髙橋傑)に変更
⑤右上の…をクリックし、インポート→マイノートをクリック。
⑥マイノートをマイギャラリーに読み込むことが完了します。
すると、たくさんの+や鉛筆マークが現れます。そう、これはすべて皆さんが編集できる場所です。大きな+と小さな+では、出来ることが違います。とにかく、いろいろといじってみましょう。ジャパンサーチでは、他のwebサイトから写真をもってくることもできますが、その場合はその写真が著作権フリーなのかどうか、よく確認して下さい。
それぞれなぜそれを選んだのか思い出しながら、マイギャラリーで眺めてみましょう。この「なぜ」がとても大事です。直感でも、理詰めでもなんでも構いません。何かがみなさんの心に引っかかったわけです。その印象を大切にしてください。
この選んだ文化財に、みなさんには説明をつけてもらいます。展示解説ですね。先ほどの「なぜ選んだのか」を追求すると、解説も書きやすくなります。ここで一つルールを作ります。
文化財の説明を記入するときは、「館長からの一言」と必ず文頭につけることをルールとします。
選んだ文化財によっては、既に説明が書いてあるものもあれば、全く説明が無いものもあります。既にある説明はそのままにし、「館長からの一言」は別のテキストボックスに入力しましょう。オリジナルの説明を、みなさんの説明をしっかりと分けることが重要です。
館長からの一言は、この文化財はどのようなものなのか、なぜこの文化財を選んだのか、ということを記入して下さい。既にある説明を参考にしてかまいません。文化財の下の鉛筆マークをクリックすると、説明文を入力することができます。
さて、説明を書けと言われても、なかなか書けないかと思います。先ほどみた図書室がガイドしてくれる情報検索の方法を是非試してみてください。
多くの人は、ささっと検索サイトを使うと思いますが、例えばGoogleでも一工夫すれば確かな検索結果を得ることができます。
AND検索 「A B」 AとBが両方あるものを探す
OR検索 「A or B」 AかBかどちらかがあるものを探す
NOT検索 「A B -C」AとBの組み合わせからCを省く
完全一致検索 「”***”」***の語が完全に一致するもの探す
ファイル限定検索 * .pdf PDFファイルで公開されているもののみを探す
ドメイン限定検索 * .ac ドメインが.ac(大学)のサーバーで公開されているものを探す。
実は、Googleはとてもおせっかいに先回りして検索結果を表示してくれているのです。このようなコマンドを使えば、限定して検索することができます。是非利用してみましょう。
引用情報の書き方
皆さんは、卒検講座で引用情報の書き方を習ったでしょうか。いまこそ、それを活かす時です。情報を利用したら、必ず引用情報を入れて下さい。リンクを貼っておきます(学内のみ)。インターネット上の情報に限らず、引用情報は大事です。引用情報から第三者がたどり着けない情報は、ねつ造されたものかもしれませんから。
著作権のはなし
文化財のページを少し下を見ると、右のような画面がでてきます。これは、この文化財の画像や動画を利用するときに、どのような手続きが必要か、という表示です。この資料の場合は、所有者の許可はいりませんが、「クレジット表記をすれば利用可」、とされています。このようなインターネット上の新しい著作権ルールをクリエイティブ・コモンズ・ライセンスといいます。
ネット上の様々な画像や動画には、当然のように著作権が存在しています。このクリエイティブ・コモンズ・ライセンスは、著作権を持つ人が、この画像をどのように利用してよいか、という意志表示なのです。逆に言えば、この表示のない画像・動画は、安易に使うとまずいことになるのです。
この文化財は、「CC BY(表示)」とされています。CCはクリエイティブ・コモンズの略、BYは著作権保持者の氏名、作品タイトルなどを表示することを条件としている、という意味です。CC BY(表示)の部分をクリックしてみましょう。表記すべきテキストデータをコピーすることもできます。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスについては、クリエイティブコモンズジャパンの説明ページを読んでおきましょう。
自分のレポートなどで扱う際には、インターネット上の情報は適切に利用して、誰かに不快な思いをさせないように気をつけましょう。
ジャパンサーチの使い方動画
ジャパンサーチを使ってみて、やっぱりよく分からないと思ったときには、この動画(約12分)を見て下さい。
3~4コマ目
モノたちからストーリーをつくっていこう
展示を行うためには、筋書き、ストーリーが必要です。何を知って欲しいのかというところから考え始めるとよいと思います。テーマの大枠の設定はこちらでしましたが、その枠組みの中で、君たちが何を伝えたいのか、まずは大雑把に考えましょう。ひとつひとつの文化財から、自分なりにシナリオを作っていくのです。
選んだ文化財を並べ替え、試行錯誤しながら展示のテーマの流れをつくっていきます。そして、説明を補足するにはどのような要素が必要か、考えていきます。ジャパンサーチでは、マイページに、
・テキスト(テキストボックス)
・画像(ジャパンサーチ上ではないインターネット上から画像を読み込む、うまくいかないことも多い)
・リスト(文化財をいくつかのまとまりにする際に利用します)
・年表(文化財を補足説明するための年表、その他の利用法もあるかも!?)
などを貼り付けることができます。まとまりをつくって整理するときは、リスト機能を使いましょう。文化財を並べ替えたいときは、右端のアイコンをドラッグしてください。
表示のしかたも、画像をメインにしたり、文書をメインにしたりといろいろな見せ方があります。触れる限りの様々なアイコンにさわってみて、試してください。位置情報があるものは、地図表示をさせることも可能です。ジャパンサーチ以外のものから展示品を選ぶ場合は、著作権についてしっかりと表示するようにして下さい。いろんな機能を使って、様々な可能性をみつけてください。
いろいろな機能をうまく使って、文化財の説明を楽しいものにしていきましょう。
流れとしては、
①文化財を並べる
②それぞれの文化財が自分が考えたストーリーの中で、どのような説明に利用できるか考える。
③その説明をジャパンナレッジなどを参考に書き込んでいく。
④さら、いろいろなパーツ(年表や地図、他のURLなど)を使って表現する。
⑤配列がしっくりこなければ、やりなおす。①に戻る。
といった感じでしょうか。がんばりましょう!
マイギャラリーの様々な機能を説明した動画です。
ギャラリーを整えよう
みなさんの博物館の展示構成は、以下の体裁を整えてください。ギャラリーにある私の博物館を参考にしてください。
1 館長あいさつ(テキスト)
2 この展示について(展示の趣旨)(テキスト)
3 展示(著作権の問題に注意しましょう)
①展示品1
②展示品2
③展示品3
④展示品4
⑤展示品5
4 展示を見終わった人へのメッセージ
5 展示関連イベントについて
とします。完成したページはお互いに感想を述べ合います。2.で示した展示の趣旨が、3.で展示するコンテンツによってどれだけ説得力のあるものになるかどうかがポイントです。言いたいことだけが先走ってもいけませんし、ただ展示品をならべるだけでもいけません。
ギャラリーに公開しよう
それぞれが作成したマイギャラリーをギャラリー(2022年度塾高3年生日本史(高橋) ) に公開します。
その前に、右上の…からエクスポートを選んで、JSON形式でファイルを保存しておきましょう。この保存は非常に大事です。公開するギャラリーは、他の人も編集できてしまいますので、保存しておけば間違って変えてしまった場合に元通りに戻せるからです。
その上で、teamsに示したURLとパスワード(ジャパンサーチのワークスペース)でログインし、
ギャラリーに公開する手順を示します。
①2022年度塾高3年生日本史(高橋) にアクセスします。
②teams(ジャパンサーチのワークスペース)にあるパスワード、学年クラス番号氏名(例:3G99高橋傑)を入力してログインしてください。
③追加をクリックします。
④新しいギャラリーのタイトルに、「(自分が考えた博物館名)+学年クラス番号氏名(例:3G99高橋傑)」と入力します。
⑤よみのところに、「ユニット名(例:金34水2)+学年クラス番号」を入力します。
⑥右上の…をクリックし、インポートをクリックします。
⑦マイギャラリーをクリックし、作成したマイギャラリーを選択します。これで、完了です。
一度作成したものは、削除できません。どうしてもやり直したい場合は、高橋に知らせてください。あるいは、ギャラリーのタイトルに(削除希望)と入れていただいてもかまいません。
最終的には、履修者のマイギャラリーが、ギャラリーに勢揃いし、全員の博物館が出来上がるはずです!
お互いの博物館を評価しよう
全員の博物館が出そろった段階で、自分の博物館を提出し、同級生の博物館を評価しようという課題をアップします。これに添付されているフォームに答えて、みなさんが優れていると思った博物館を三つ、あげてください。そして、その理由も書いて下さい。それぞれの博物館の評価も、この課題にルーブリックの形で示します。合計20点の評価は,この課題を返却することでお知らせします。
Q&A
マイノート・マイギャラリーのデータを他のブラウザに移動させたい場合
①マイノート・マイギャラリーの右上の…を選び、エクスポートでJSONファイルを選択する。
②使いたいブラウザで、ジャパンサーチを開く。
③マイノート・マイギャラリーの右上の…を選び、インポートで先ほど保存したJSONファイルを選択する。
※JSONファイルがあれば、そのブラウザ、どのデバイスでもマイノート・マイギャラリーのデータを開くことができます。
今自分が編集しているのが、マイノートなのかギャラリーなのか確認する方法
画面の左上の文字が「トップーマイノート」となっていれば、マイノートを編集しています。
ギャラリーに複数アップロードしてしまった場合
ジャパンサーチの博物館名は、かならず
タイトル+(学年クラス番号名前)
という形で入力してください。
そして、間違えて複数アップロードしてしまった場合には、いらない方のタイトルの冒頭に
いらない
を加えて、
いらない+タイトル+(学年クラス番号名前)
という形にしてください。その場合、こちらで削除しておきます。
博物館webサイトリンク集
以下、日本の博物館を中心にまとめました。参考にしてください。