特別支援教育研修課

特 別 支 援 教 育

令和5年4月更新

教育課程

特別支援学校の教育課程

 特別支援学校では,幼稚園及び小学校,中学校,高等学校と同一の教育目標に加え,障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服し自立を図るために必要な知識,技能を授けることを目標としています。

 そこで,幼稚園,小学校,中学校及び高等学校に準ずる教育を行うとともに,自立活動という特別の指導領域を設けています。

 また,知的障害者である児童生徒に教育を行う特別支援学校の各教科等については,準ずる教育とは別に各教科等の目標と内容等を示しています。 

教育課程の編成

 各学校の教育全体や各教科の目標やねらいを明確にし,それらを実現するために必要な教育の内容を教科等横断的な視点をもちつつ,学年相互の関連を図りながら,授業時数との関連において総合的に組織します。


 また,教育課程の編成の際は,幼稚部教育要領及び小学部・中学部学習指導要領,高等部学習指導要領に示された内容に関する事項については,特に示した場合を除き取り扱うことになります。その際,重複障害者等に関する教育課程の取扱い等に留意して検討することが必要です。


 <重複障害者等に関する教育課程の取扱いについて>

  重複障害者等に関する取扱いは,重複障害者に限定した教育課程の取扱いではありません。児童生徒一人一人の障害の状態等を考慮    

 しながら教育課程の編成について検討を行う際に理解することが必要です。


  「障害の状態により特に必要がある場合」,「知的障害者である児童生徒の場合」,「重複障害者の場合」,「訪問教育の場合」, 

 「重複障害者等に係る授業時数」について示されています。


  ※ 詳細については,特別支援学校教育要領・学習指導要領解説総則編(幼稚部・小学部・中学部)の第2章第8節(331頁~)で

   確認してください。 

知的障害者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校の教育課程

 教育課程の編成は,教育の内容を授業時数との関連において総合的に組織しますが,教育の内容と指導の形態を混同しやすいので留意することが必要です。

 例えば,小学部における教育の内容と指導の形態として,以下のようなものがあります。 


 教育の内容として各教科及び道徳科,外国語活動,特別活動並びに自立活動の内容を選択し,指導の形態別に指導内容を組織したことになります。

 一方,下の表は,左側が教育の内容ごとに年間授業時数を示しています。右側は,その年間授業時数を踏まえて,指導の形態ごとに設定したものの例です。 

 ※ 上表で示した年間授業時数はあくまでも例示です。小学部の場合は小学校に準ずるものになりますが,各学校において,学校や児  

  童生徒の実態に即して授業時数を定めるよう留意することが必要です。

 上表では,左側に教育の内容との関連などを踏まえて,各教科等で定めた年間授業時数を示しています。そして,それらを踏まえた上で,右側に指導の形態ごとの時数を示しています。

 例えば,「生活」をみてみると,年間で指導に必要な授業時数を175時間と定めたものを示しています。そして,右側に,その175時間を特設の時間で105時間,日常生活の指導と生活単元学習で35時間ずつ指導を行うということを表しています。

 上表のように示すと,各教科等の指導に必要な時数と,指導の形態ごとの時数とを区別して確認することができます。実際は,県内の多くの学校で下表のように指導の形態ごとの形式で示しています。 

 この表の場合,指導の形態ごとに年間授業時数を示しています。道徳科や外国語活動を特設していないため,指導時数が0時間と誤解されることがあります。教育課程を編成する際に,道徳科や外国語活動の内容を選択し,指導の形態を踏まえて指導内容を組織し,各教科等を合わせた指導の中で指導を行うようにしているのですが,この表には表されないため,学校内で各教科等の指導時数や指導内容等を共通理解することが必要です。


 特に,各教科等を合わせた指導において,各教科等の何を指導するのか,どのような指導目標や指導内容なのか,指導の時間配当はどれだけなのかが明確にする必要があります。


 各教科等を合わせて指導する場合,取り扱われる教科等の内容を基に,児童生徒の知的障害の状態や経験等に応じて,具体的に指導内容を設定し,指導内容に適した時数を配当することが必要です。関連する教科等を教科別に指導する場合の授業時数の合計と概ね一致するよう計画することが必要です。


<各教科等を合わせた指導について>

 各教科等を合わせて指導を行う場合とは,各教科,道徳科,特別活動,自立活動及び小学部においては外国語活動の一部又は全部を合わせて指導を行うことをいいます。

 この場合も,各教科等の目標を達成していくことになり,各教科等で育成を目指す資質・能力を明確にして指導計画を立てることが重要です。 

 詳細については,特別支援学校学習指導要領解説各教科等編(小学部・中学部)の第4章第2節(31頁~)で確認してください。

特別支援学級の教育課程

 特別支援学級の教育課程は,基本的には小・中学校の学習指導要領に基づいて編成されます。しかし,対象となる児童生徒の障害の種類,程度等によっては,障害のない児童生徒に対する教育課程をそのまま適用することが必ずしも適当でない場合があります。そのため,特別支援学級に係る教育課程については,特に必要がある場合は,「特別の教育課程によることができる」(学校教育法施行規則第138条)と規定されています。

特別の教育課程を編成する場合は,特別支援学校の小・中学部の学習指導要領を参考とし,実情に合った教育課程を編成する必要があります。この場合,「特別の教育課程」を編成するとしても,学校教育法に定める小・中学校の目的及び目標を達成するものでなければなりません。


特別の教育課程の編成では,次のことが可能となります。

<各教科の内容>

下学年の内容や特別支援学校(知的障害)の各教科の内容に替えることができます。

<授業時数>

各教科・領域等の授業時数について,弾力的な取扱いができます。ただし,総授業時数は,小・中学校と同じです。

<自立活動の指導>

特別に設けられた領域(自立活動)の指導を取り入れます。

<各教科等を合わせた指導>

知的障害のある児童生徒には,各教科等を合わせた指導ができます。

<教科用図書>

当該学年の教科書に代えて,他の適切な教科用図書を使用することができます。



参考資料:「インクルーシブ教育システムの推進を目指す特別支援学級の教育課程編成・実施ガイドブック

                                                                                                        (令和3年3月 国立特別支援教育総合研究所)