NanoTerasu BL02Uと2D-RIXS分光器の概観
NanoTerasu BL02Uと2D-RIXS分光器の概観
RIXS分光器散乱角:30°≦2θ≦150°
サンプルホルダー:オミクロン型サンプルホルダー
1スペクトルの測定時間:①高分解モードで1時間程度。②超高分解モードで5時間程度
超高分解能条件での測定において一度に観察できる発光エネルギーの範囲:~25 eV程度
試料温度:30K程度までは冷却可能(液体ヘリウム使用量1.6L/hour@30K)
エネルギー範囲:450-1000eV
ビームサイズ:20-800μm(V,アパーチャーにより変更可)×1μm(H,集光サイズのため変更不可)
2D-RIXS分光器の鉛直の結像視野:120μm
ビームラインと分光器を合わせた全エネルギー分解能(E/ΔE):
① 高分解モード(~40,000@532.5 eV、~31,000@930 eV)
② 超高分解モード(~55,000@532.5 eV、~50,000@930 eV)
試料上でのフラックス:>1.0E+10 photons/s/μm(V)
※450-1000 eV
※全フラックスは鉛直方向のサイズに依存
ビームラインと分光器の光学系
(Kohei Yamamoto et al 2025 J. Phys.: Conf. Ser. 3010 012115より引用)
>1.0E+15 photons/sec/0.1% b.w. @250-2000 eV
左図は直線偏光(LH)、右図は円偏光(CP)
※縦軸の最大値が異なることに注意。直線偏光の方が光学素子への熱負荷が大きい。
(宮脇淳、堀場弘司、大坪嘉之:放射光 37 (2024) 95.より引用)
ビームラインと分光器を合わせた全エネルギー分解能
(Kohei Yamamoto et al 2025 J. Phys.: Conf. Ser. 3010 012115より一部改変して引用)
実験値とシミュレーション値によるフォトンフラックス
高分解能モード(laminar)と超高分解能モード(blazed)の比較
(Kohei Yamamoto et al 2025 J. Phys.: Conf. Ser. 3010 012115より引用)
NanoTerasu BL02Uでは「Flag style sample plate」が標準規格
標準規格を満たすプレートをユーザー独自で作製して持ち込むことを推奨
サンプルバンクは「RECOMSTACK(05H09S)」を使用している。
試料ステージは「Ferrovac Drawer Style Receivers for Flag Style Plates, Low Temperature version, Gold Plated Copper Beryllium」を使用しており、本レシーバーの規格に収まるプレートでなければ、RIXS測定は不可能
ロードロックにあるウォーブルスティックで突いて真空中でのへき開が可能
試料導入に用いている2種類のロッドの説明動画
試料バンクは、このタイプ
・通常のハサミ
・解剖用バサミ
・デザインナイフ
NanoTerasuで使用する液体ヘリウムは、東北大学低温センターを通じて入手するため、寒剤を使う場合は事前の申し込みが必要。ユーザーは課題採択通知時にBL担当者に使用量などについて相談の上、申し込む。原則、この申し込み量に基づいて、後日利用料金が請求される。
基本的に申請量以上は使えない
使用状況によっては液体ヘリウムが不足して、予定した測定ができない可能性がある。その場合、必要に応じてビームライン担当者と今後どうするか相談する
回収ガスの純度を保つように努める
ビームライン利用チェックシート、ビームライン終了届に使用量を報告する
(参考)液体ヘリウムの消費量の目安を示した表
100L消費目安=> 18L/min=32K(2.5days), 7L/min=100K (7/days)
例(左縦軸50Kの条件):横軸13L/minのフローメータの設定で運用した場合、右縦軸3.5日程度で100Lを消費
現状、BL02Uでは、液体窒素による試料冷却装置はない
試料冷却装置の持ち込みもしくは、試料冷却を除く目的で液体窒素の使用可能
希望する場合は課題申請前にビームライン担当者へ詳細を相談
※詳細はNanoTerasuウェブサイトの「高圧ガスと液化ガス」参照
※NanoTerasuで用意している高圧ガス容器について、ユーザーが無断で取り扱うことは禁止
初日に使用方法についてビームライン担当者がユーザーにインストラクションを行う
pythonにてコーディングされたシステムにて制御、コマンド実行にはJupyterLabを使っている
ユーザーは必ずログブックを記録する必要がある(現状)
ログブックはドキュメントにて作成され、OneDriveにて共有されるため、来所前にWIndowsアカウントを作成しておく必要がある(現状)
提供されたプログラムの変更は認めないが、マクロを作成してそれらを自由な順序で実行させることは認められている(夜間測定など)
初期解析はLabVIEWにより作成された専用のViで実施している
初期解析用のViにてRIXSスペクトルに変換した状態のデータを持ち帰ることが可能
CCDデータからRIXSスペクトル変換プロセスは以下、1 --> 3 の順序
CCDデータ取得
Centroid
RIXSスペクトルに変換
※ 2D-RIXSでは試料からの蛍光X線を拡大投影しているので、試料表面の凹凸構造や割れめ構造などを弾性散乱位置の変化として観測してしまいます。凹凸が激しい場合はデータ解析が困難となる場合がございますので、試料表面の平滑性を以下の基準に収めていただくことを推奨いたします。
=>微鏡面仕上げ (▽▽▽) :Raで 0.4~1.6μm程度以内
データ取り出し用PCが用意されている、これにJASRIが用意したUSBを接続してデータ取り出し可能(CCDデータ用)
測定データをダウンロードし、自己PC(+自己USB、自己HDD)に保存
※持ち帰り用ハードディスク・USB等はなし
※クラウドサービスもデータ共有可(初期解析後データ用)
Q1:申請段階にてシフトを検討する際、実験時間だけ計上すればいいですか?
A1:シフト数の見積もりにあたっては実験時間に加え、最低でも1シフト以上の調整時間を含めて申請してください。また、高分解能モードと超高分解能モードの変更などに要する時間もシフトに含める必要があります。分解能モードの切り替えには最短でも8時間(1シフト)程度が必要です。また、実験後の片付けや撤収などにかかる時間も含めてください。
Q2:ビームタイム途中での吸収端の変更は可能ですか?
A2:可能です。最短でも8時間(1シフト)程度を必要とします。現実的には「食事の時間」などに加えて、同時に行うことの多い「試料交換・場所探し」や「冷却」などの時間も必要とするため、12hかかるものと見積もっておいてください。作業はJASRIスタッフが行います。基本的には「午前中に開始→夜に完了して引き渡し」となります。
Q3:備品やグローブボックスは、ありますか?
A3:このようなものがあります。例えばグローブボックスに関しては02Uでは以下のように試料導入が可能です。
※ グローブボックスは共用装置のため、使用に際して事前予約が必要になります。予約は担当者が行いますので、事前にお知らせください。また必ずしもご希望の日程でご使用いただけない場合がありますこと、ご了承ください。
BL02Uのロードロックチャンバーを封じきりの大気非暴露搬送用ロッドとして使用した例
Q4:グローブボックスの環境を教えてください。
A4:グローブボックスの環境(2025A期の平均)は以下の通りです。
・酸素濃度:0.7 ppm
・露点:-76℃(直前の使用状況によって、±5℃で変動がある)
Q5:もう少し詳しく聞きたいので、連絡先を教えてもらえますか?
A5:こちらにメールしてください。1週間以内に返信がない場合は、お手数をおかけしますが、再送してください。
2025.10.21サンプルプレート情報を更新(文責:JASRI)
2025.8.12第一版公開(文責:JASRI)