高齢者の自立生活を維持する
統合的なサービス選択支援システムとその導入方法論

2018-2020年度 科研費 挑戦的研究(萌芽)

研究代表者:伊福部 達(東京大学 名誉教授)

研究分担者:大方 潤一郎(東京大学 名誉教授),三浦 貴大(産業技術総合研究所)

プロジェクト概要

高齢化の進展が著しい日本では,限られたリソースによる健康長寿社会の実現が喫緊の課題で本プロジェクトの代表者は,JST Sイノベ「高齢社会」のプログラムオフィサーを務め,超高齢社会に資する研究成果の社会実装に従事してきました.しかし,応募者が関わった検討や既存システム開発事例では,主たる対象が要介護認定を受けたお年寄りと元気なお年寄りに限られていました.つまり,要支援・要介護認定を受けないが機能低下の最中にあるお年寄りを支援できるスキームの構築は十分でなかったと言えます.お年寄りの自立状態の維持には,最新支援機器のみならず,従来型の支援方法との併用が効果的ですしかし,認知機能・身体機能状況やニーズが多様な高齢者に対して,既存サービスの組合せを推薦する仕組みは整っていませんでした.そこで本研究の最終目的を,様々な認知・身体状況の高齢者に包括的な支援パッケージを提供するため,各種支援サービスを統合的に扱うシステムを開発と,その地域導入指針の導出としています.本研究の意義は,多様な心身状況にある高齢者の統合的な支援のために,多領域でのサービスの知見を考慮してシステムを設計することであり,この成果は高齢者支援の効率化と支援現場の負担軽減に資すると期待できます

科学研究費助成事業データベース上の本研究の紹介ページ:

https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K18445/

フォーマル・インフォーマルケアに関する事例調査

「高齢者の社会生活を支えるフォーマル・インフォーマルケア:地域に根付いた支援サービスの先進事例に学ぶ」

お年寄りが自立した状態から,フレイル期を経て要介護認定されるに至る際,様々な地域ぐるみによる支援方法が行われています.このために,国内の様々な先駆的事例について調査を行った上で,読みやすいよう小冊子として取りまとめました.右の画像をクリックして頂けますと閲覧・ダウンロード用のページに飛べます.

関連する成果:

  • 西野 亜希子, 荻野 亮吾, 藪 謙一郎, 三浦 貴大, "高齢者の地域継続居住に求められる施設配置と提供サービスに関する研究 -福岡県大牟田市の地域交流拠点とその運営母体の取り組みを事例として-," 第23回日本福祉のまちづくり学会全国大会, 2020.10, オンライン.

  • Takahiro Miura, Ryogo Ogino, Akiko Nishino, Ken-ichiro Yabu, Mari Kimata, Junichiro Okata, Tohru Ifukube, "Lesson Learned from the Cases Utilizing Information Systems in Support Sites for Seniors in Japan: Helping Caregivers on Information Sharing by ICT and Seniors on Vitalizing their Life by IoT," Proc. HCII2021, 2021.07 (to Appear)

report2020FY.pdf

経験サンプリング法に基づくお年寄りの生活時間調査

お年寄りの生活状況・ニーズなどについて時系列的に明らかにするべく,経験サンプリング法に基づいたアプリケーション(右図)を開発しました.その上で,自立した高齢者に日に数回ほど質問に回答してもらい,状況ごとの気分などを回答してもらいました.これまで,男性の高齢者では外出時・複数人でいる場合には趣味や仕事の時間が有意に増え,在宅時・単独時にはテレビの視聴時間が増す傾向にある一方で,女性では外出/在宅・単独/複数人での生活時間の差は確認できない,という結果が得られました.今後は,さらにその際の気分の変動などについても分析し,生活状況を踏まえたニーズについて取りまとめていく予定です.

関連する成果:

  • Takahiro Miura, Masafumi Arata, Yasushi Sukenari, Rinpei Miura, Akiko Nishino, Toshio Otsuki, Kazuhiko Nishide, Junichiro Okata, "Mobile application to record daily life for seniors based on experience sampling method (ESM)," Lecture Notes in Computer Science, vol. 12426, pp: 660-669, 2020. URL: https://doi.org/10.1007/978-3-030-60149-2_49

Last updated: 2021/03/31