写譜の仕事って?

皆さんのほとんどの方がたぶん知らない(?)写譜の世界!

ここでは皆さんがコンサート会場で素晴しいオーケストラの演奏を耳にするまで、どのようにして楽譜が出来上がるのか、写譜屋さんから見た目で追いながら、弊社の仕事の流れの一端をご紹介しましょう。

1.企画

どんなコンサートもテレビ(メディア)の音楽番組も、まずは企画から始まります。コンサートではその企画、運営を担うプロモーション会社、制作会社など、テレビではそれぞれの番組の企画会議などからスタートします。


何時、何処で、どんな曲を演奏、収録するか。また、そのコンサートなどでの演奏者や出演者、そして作・編曲者をプログラムに応じて具体的に決めていきます。通常この段階ではあまり私たちの出番はありません。仕事こないかなぁ~!


スケジュールや内容が決まり、いよいよ本番に向けて動き出します。制作サイドや依頼されている作・編曲家から直接「写譜をお願いします」と連絡が入って、さぁ、私たちの仕事もスタート…。


前後しますが、大規模なコンサートや収録などでは、弊社の営業も関わり綿密なスケジュールや編成等の打ち合せから始まることも多々あります。スケジュールを把握し、休日を返上してでも納期に間に合わせる体制作り、何よりもどのような場面に使われる楽譜かを見極め、楽譜の書き方や紙のサイズ等を実際に写譜をする者に伝えなくてはなりません。

2.スコア入稿

作・編曲家からの入稿期限が近づくと事前再チェック!


「作・編曲が上がった」という連絡が入りました。中で陣頭指揮をとるNさんの指示を受け、M君、事務所や作家のご自宅に受け取りに出かけます。もっとも、最近はFAXやパソコン通信などで以前ほど取りに行くことはなくなりましたが…。締め切り間際の入稿にも迅速に対応!

3.写譜スタート

譜面を受け取って来たM君の楽譜は当然スコア(総譜)。2時間で仕上げるのか2週間なのか。スケジュール感や、どのような演奏家が使う譜面かを写譜屋さんと打ち合わせ、写譜が始まります。スタジオミュージシャンとオーケストラの奏者が使うパート譜は、全くと言って良いほど実は違うのです。


長い曲の場合や時間がないときは、楽器ごとに分担して写譜をしたり、校正者を増やしたりして、状況を瞬時に把握するのも中を仕切るNさんの腕の見せどころ! 


あるあるで、忙しいときほど仕事が重なりがちで、写譜屋さんは同時に2つ、3つ、はたまたそれ以上並行して進行している…なんていうことも珍しくありません。どれも決められた時間までに上げなくてはならず、場合によっては始発電車で写譜屋さんに召集がかかることも! 要求されるのは作・編曲者の乱筆やクセを読み取る技術、何よりも浄書(出版譜)との違いは、写譜屋さん自ら、譜めくりを考えたり、リピート時の読みやすさをも編集する能力なのです! 


プロの写譜屋さんにかかればどれも同じように見易いきれいなパート譜にどんどん写譜されていきます!


ああ、スコアの入稿が遅れ気味! 


ヤキモキしてもスコアが入らないことには私たちもやりようがありません。音出しの時間(演奏が始まる時間)が迫ってくるとスケジュール担当のNさんは次第に落ち着かなくなる!? その間にも出来上がった楽譜にはタイトルが書き込まれ(数があるのでけっこう時間がかかる)、弦楽器など多くのプレーヤーがいるパートは必要分のプルト増しが行われ、まとめられていきます。


ここで登場! 弊社の信用を蔭で支えるTさん!彼女はこうして写譜屋さんが書き上げた楽譜に間違えがないか短時間でチェックしていかなくてはならない存在! 写譜屋さんも人間ですから、うっかりミスも皆無とはいきません。それを事前に最小限で食い止めているのが彼女の仕事。お陰で「楽譜にミスが少ない」と定評を戴いております。自画自賛。

4.リハーサル会場へ

写譜が終った曲はタイトルが書き込まれ、プルト増しもし次々にまとめられて最終的な編成などのチェックがなされます。そして音出しの時間に間に合うようにM君が持って弊社を出発。目的地まで電車、バス、場合によってはタクシーなどを使って時間までにお届け! 


入稿が遅れていた楽曲も写譜屋さんの努力で完成し、リハーサル会場へダッシュ! 

会場では、プレーヤー全員のスタンバイが終わっていたりします。届いた出来たてホヤホヤの楽譜が譜面台に並べられ、予定通りリハーサル開始。場合によっては、弊社のスタッフや写譜屋さんも同席して変更などに即対応できるよう、最後までスタンバイしています。


ふぅ、リハーサルが終わり、いくつかの変更なども発生しました。その場で修正して完了したものや、演出等が変わり書き直しになり、後日の指定時間までに収められるケースも。

5.コンサート会場で

コンサートでは、何回かのリハーサルの後、完璧にされた楽譜がいよいよ本番のコンサート会場の譜面台に並べられます。完璧な楽譜とは、リハーサル中に奏者によって演奏情報が書き込まれた楽譜を指します。弊社の真っさらな楽譜に命が吹き込まれた楽譜です。この写譜者と奏者の共同作業の結晶がスポットライトに照らされたステージ上の楽譜なのです。 

そして本番…。拍手喝采!そして幕が降ります。

写譜という仕事がどのように行われているのか少しでもご理解していただけたでしょうか?


私達の仕事は決してコンサート会場で目につくものではありませんし、コンサートを蔭で支える“縁の下の力持ち”的な仕事です。

しかし、写譜がないとコンサートは出来ません。私たちは少しでも皆さまに素晴らしい演奏を楽しんで戴けるよう日々努力しております。

この次皆さまがコンサートへお出かけの折には、少しでも写譜の存在を思い出し、弊社の存在を認識して戴けたらと願っております。