研究
2021年度 テーマ
温泉をより安全に!レジオネラ菌含むバイオフィルムを分解する大腸菌
群馬県は全国でも著名な温泉地の1つです。
温泉設備には、掛け流し式と循環式の2つがあり、このうち循環式は限りある温泉資源を節約するために使われています。
しかし、循環の過程でレジオネラ菌が繁殖することがあります。レジオネラ菌は重い肺炎などを引き起こします。対策として塩素系薬剤などが投入されていますが、細菌はヌルヌルした膜「バイオフィルム」を盾にして身を守るためレジオネラ菌の対策は難しいものとなっています。
私たちはこのバイオフィルムを分解することで、温泉でのレジオネラ菌による被害を減らしたいと考えています。具体的には、大腸菌を使ってバイオフィルムを分解する酵素を作製し、塩素系薬剤による殺菌効果を上げることを目標としています。
バイオフィルムって何?
微生物の集合+細胞外マトリクスでできている。
細胞外マトリクスとは、微生物同士をくっつける「接着剤」分子のこと。
細胞外マトリクスはなにでできているの?
糖類、糖脂質、核酸の混合物
⇒今回はこの糖類を分解する酵素を使ってBFを撃退しよう!
実験計画
プラスミド設計
1. ベクターの調製
(ⅰ) iGEM2019参加時のパーツからバックボーンプラスミドに利用できるものを選出
(ⅱ)コンピテントセルにⅰのプラスミドを導入・培養
(ⅲ)ⅱで培養した大腸菌からプラスミドを抽出
(ⅳ)抽出したプラスミドのシークエンス解析
2.プライマー設計
・インサート用のプライマー(βグルコシダーゼ、αガラクトシダーゼ)
・ベクター用のプライマー
3.プラスミドの調製
(ⅰ) インバースPCR法及びPCR法を用いてベクターとインサートのDNAを増幅
(ⅱ)In-Fusionキットを用いてインサートDNAをベクターに挿入
(ⅲ)得られたプラスミドを精製
設計したプラスミドを大腸菌に導入
βグルコシダーゼ、αガラクトシダーゼの発現
タンパク質精製
バイオフィルム(BF)定量系
定量:クリスタルバイオレット法
可視化:蛍光染色法と共焦点レーザー顕微鏡を用いた3次元観察
バイオフィルムを作る大腸菌株の選定
MG1655
JM109
TG1
RP437
W3110
BF生成に適した培養条件を決定
温泉水+カザアミノ酸+グルコース
M9培地+0.5%カザアミノ酸
LB培地+0.5%グルコース
DMEM培地
購入した多糖分解酵素とBFを反応させ、定量
大腸菌が作成した酵素をバイオフィルムと反応
定量化・3D観察