ファッションコンテストへの挑戦~岡山南高等学校 井本千咲さん





 『産業と教育6月号』に岡山南高等学校 服飾デザイン科3年 井本千咲さんの「ファッションコンテストへの挑戦」が掲載されました。夢を追いかける高校生の挑戦の一部始終をぜひお読みください。((以下、『産業と教育6月号』から引用)

 1.服飾デザイン科に進学した理由

 私は幼い頃から絵を描くことが好きで、将来もデザインに関わる仕事に就きたいと思っていました。中学2年生の時、担任の先生に勧められて、ある高校の新制服デザインの企画に応募しました。最終選考を経て、私のデザインした冬服が新制服に採用され、自分の描いた作品が実際に形になることに喜びを感じ、ファッションについてもっと学びたいと思うようになりました。

 岡山南高校では1年生から「ファッションデザイン」や「ファッション造形基礎」などの専門的な科目を学ぶことができます。「自分の好きを生かせる学び」が沢山あることに魅力を感じました。また、岡山南高校の先輩方は様々なコンテストでも活躍しています。特に全国の高校生が集うファッション甲子園という大会に出場した先輩の斬新なデザインを見て、衝撃を受けました。この大会への出場は私の目標となり、進学を決意しました。



.コンテストへの挑戦の日々

(1)初めてのステージ

 1年生の冬、神戸ファッション専門学校が主催するコンテストの一次審査を通過し、初めて衣装製作の機会に恵まれました。

 作品のテーマは「メモリー」。幼少期に着ていた思い出の詰まった子ども服を、今も生きる一着に変身させることができました。タンクトップやフード付きジャケットはデザイン画通りに布を組み合わせ、スカートはチュールでボリュームを出した袖でできています。








 


 

 技術面での不安が多い中、「できないことも挑戦してみなければ、できるようにはならない」という思いで取り組みました。しかし、初めての作品づくりは想像以上に困難だらけでした。授業では決まった型紙しか使ったことがなく、一からの製図に戸惑うことも多く、順調に進まない作業に焦りが募りました。友人や先生方の協力が大きな支えとなり、無事に仕上げることができたときは本当に嬉しかったです。製作を通した多くの人との出会いが、初めての挑戦の思い出です。











 




のステージ

 2年生の夏、ついに第22回全国高等学校ファッションデザイン選手権大会、通称ファッション甲子園の最終審査会に岡山県代表として選出されました。衣装づくりの大変さを体験した上での大きな意味のある挑戦となりました。憧れの舞台に向けて、自分の持てる全ての力を注ぎ込むことにしました。

 約3ヶ月間、放課後も休日も衣装製作を続けることができたのは、モデルを引き受けてくれた友人の存在が大きかったです。

 テーマは「二度目の夏、泡沫の夢」。揺れ動く今の私の心を水のイメージで表現しました。メインとなる生地は理想の色になるまで何度も染料の配合や染め方を研究し、柄も自分で付けました。キラキラした水を表現するために、色を付けたプラバンに水を垂らしながら焼くのは、試行錯誤の中で偶然生まれた方法でした。



 完成した衣装を大切に抱えて、開催地の青森へ向かいました。やっと憧れの場所に立てる高揚感と緊張で胸がいっぱいでした。応援してくれている友人や送り出してくれた家族の顔を思い浮かべながら「大丈夫、大丈夫。」と自分に言い聞かせました。



 会場は迫力と新鮮さにあふれた衣装で熱気に包まれていました。私はナレーションで衣装の見所を伝え、友人は堂々としたウォーキングを披露することができました。しかし、入賞作品として自分たちの名前が呼ばれることはありませんでした。悔しさがあふれましたが、「それぞれの人生のクリエイティブな経験に意味がある」という審査員の方のエールに胸が熱くなりました。

.コンテストを通じて感じたこと

 結果が全てではありませんが、努力が報われず、コンテストの経験を笑顔で語れないときもありました。しかし、コンテストに打ち込んだ日々、仲間に支えられながら、試行錯誤の先につかんだのは、この経験からしか得られなかったものです。だからこそ、私はこの挑戦をやめられないのだと思います。まだ夢の途中です。

 私は今、クラスで取り組む卒業制作展でのファッションショーの成功や、デザイン分野への進路の実現という目標もあります。コンテストの経験を生かして、これらの目標も達成していきたいと思います。