本学では、創薬に関わる研究および化学物質の安全性試験を実施しているいくつかの研究室において動物実験が実施されている。動物飼育・実験施設では、正常動物ばかりでなく、遺伝子改変動物、疾患モデル動物も飼育し、疾病の病態解明や治療薬の開発、医薬品や化学物質の安全性確保に貢献している。
学舎の一部移転に伴い、平成 22 年 4 月より本部学舎 6 階に動物飼育・実験施設を設置し運用を開始した。老朽化が進んでいた三田洞の動物飼育舎は、平成28年5月末 に閉鎖された。現在、本部学舎内の施設と共に、岐阜大学生命科学総合研究支援センター内の施設を併用している。
本学では、動物実験についての「3Rの原則」に則り、個々の実験について審査を行うとともに、動物実験を実施している。また動物実験の代替化を推奨しており、ここ数年間、動物実験申請件数は抑制傾向にある。(2020年6月1日現在)
岐阜薬科大学は 1932 年に岐阜市の九重町に創設された岐阜薬学専門学校を前身とする単科の大学で、本格的な動物実験は 1964 年の薬理学教室の開講によって開始されたと思われる。当時は専用の実験動物飼育施設はなく、小さな部屋を改造してウサギなどを飼育し、動物実験を開始したとのことである。大学は 1965 年に三田洞へ移転したが、本館 4 階に、飼育室および実験室の 2 室からなる約 40 m2 の広さの動物飼育室が設置され、マウス、ラット、モルモット等が飼育されるようになった。動物飼育室設置に伴って動物実験が活発に実施されるようになったが、動物飼育室が手狭であることもあり、1980 年には動物飼育舎 (写真 1) を建設した (現在は閉鎖)。独立した建物である動物飼育舎は 305 m2 の面積をもち、動物飼育室 7 室、飼料室、実験室、管理室からなり、いくつかの研究室で動物実験が実施されるようになった。また、1990 年に建設された生物薬学研究所内に設置された RI 研究施設には、RI を用いた動物実験の実施に備え、実験動物を収容する設備を整えた。これまでの状況では RI を用いる動物実験の頻度は低いものの、毎年コンスタントに実験が行われている。
2010 年、薬学 6 年制移行に伴う施設拡充を目的に、国立大学法人岐阜大学医学部の敷地内に新しい学舎を建設し、2010 年春から大学の機能の一部を移し、本部学舎として運用を開始した。現在は三田洞の学舎と並行して教育、研究を実施している。本部学舎内には 168 m2 の動物実験施設を整えたが、本部学舎への移転に際して岐阜大学と協議し、遺伝子改変動物等、長期間にわたって維持する動物は SPF 化して隣接する岐阜大学生命科学総合研究支援センター内にある動物実験施設へ移し、新学舎内の動物実験施設は短期で実施する動物実験のみに活用することとした。一部の動物実験に岐阜大学の施設を使用し、教員や学生が行き来することから、感染防止を考慮し、新学舎内の動物実験施設は SPF に準じた管理を実施している。新学舎の動物実験施設は飼育室 3 室 (写真 2、3)、実験室 3 室、洗浄室で構成されており、SPF のマウスおよびラットのみを収容している。年 4 回の微生物モニタリングを実施し、また、年度はじめには動物実験を区切り、施設全体を消毒している。前述の三田洞の動物飼育舎は、老朽化のため平成28年5月末に閉鎖している。
動物実験施設の管理運営は、専任の管理者等は配置しておらず、現在は動物飼育・動物実験委員会の委員長が暫定的に兼任している。実験動物の飼育管理は実験を実施する教員、学生が担当している。また、動物飼育・動物実験委員会は、動物実験計画書の審査、適切な飼育施設の運営が遂行されているかを評価・点検している。
*以上の記述は「公私立大学実験動物施設協議会 25 周年記念誌」 (平成 25 年) より、公私立大学実験動物施設協議会の許可を得て、一部改変して転載
写真 1 1980 年に建設された動物飼育舎。設備等の老朽化のため、平成28年度5月末に閉鎖された。
写真2および3 新学舎、動物実験施設内の飼育室。マウスおよびラットを収容する。棚ごとに換気できる飼育ラックを使用している。
2008 年に岐阜薬科大学における動物実験の実施に関する規定を制定(のち2015年に一部改正)し、それまで使用してきた岐阜薬科大学動物実験に関する指針 (1992 年制定) を廃止した。
薬学において動物実験は重要な位置を占める。多くはヒトの疾患を模した実験動物の病態モデルの作成と作成した病態モデルを用いた新規治療薬の探索である。また治療薬の候補となる化合物の非臨床試験(安全性試験)や化学物質の毒性試験にも動物実験は必要不可欠である。これらの動物実験の適正な実施を図るため、学長の指示に基づき、動物飼育・動物実験委員会が規定に基づいて教育訓練を計画、実施し、また、動物実験計画の審査を行っている。
教育訓練は毎年3年生の研究室配属時である10月に実施しており、年度内に動物実験を予定している教員や学生の受講を義務付けている。教育訓練では規定の周知を徹底し、法令、施設利用方法などを解説しているが、実験手技については研究課題により多岐にわたるため、解説は行っていない。年度途中に実験を実施することになった場合には委員会が個別に教育訓練を実施している。
動物実験の申請書は使用する実験動物の数にかかわらず個々の実験について審査を受けることとなっており、動物実験についての「3Rの原則」に則り、個々の実験における動物の取り扱い、使用する動物の数、苦痛の判定、苦痛軽減対策等について確認し、疑問点については回答を求めている。実験責任者には教員を指定し、実験完了報告書および自己点検票の提出の徹底とともに、実験に使用された動物の数も実験完了報告書に報告することを義務づけている。また本学では、動物実験の代替化を推奨しており、ここ数年間、動物実験申請件数は抑制傾向にある。(2020年6月1日現在)