現代社会における経済活動は、ほとんど会社によって行われている。学生諸君が将来において会社に就職する可能性も極めて高いものと思われる。本講義は、会社の仕組み・運営活動に関する会社法の基本ル-ルと用語の意味などを分かりやすく説明を行う。会社の組織とその運営活動に関する理解を深めるために、下記の内容を用意しています。
一、会社法総論
1、国際法---------国際法の一般原則、国際機構、国家領域、国際紛争解決
2、国内法---------公法、私法、刑事法、民事法、商事法
3、商事法の発展---ドイツ商事法、アメリカ会社法、日本の旧商法・新会社法
4、会社の種類Ⅰ---合名・合資・合同・株式会社
5、会社の種類Ⅱ---中小・大会社、公開・閉鎖会社、親子会社、持株会社、上場会社
二、会社法各論
1、会社の設立-----発起人、定款、現物出資、設立方法、設立無効等の責任
2、普通株式-------株式、株主権、新株予約権、株式の消却・併合・無償割当て
3、種類株式-------優先株、譲渡制限株、請求権付・条項付株、選任権付株、黄金株等
4、社債-----------社債と株式、普通社債、新株予約権付社債、担保付社債、無担保社債
5、経営機関-------株主総会、取締役会、監査役会、会計参与
6、委員会型会社---指名・監査・報酬委員会の役割、社外取締役と執行役
7、役員の責任-----委任関係、忠実・善管義務、競業取引、損害賠償責任の免除と軽減
8、会社の計算-----計算書類、剰余金の分配、株主の経理検査、資本金、準備金
9、組織の再編-----事業の譲渡、合併、分割、株式交換、株式移転
10、解散と清算----更生手続、民事再生手続、解散、通常清算、特別清算、破産
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取引相場のない株式とは、上場株式および日本証券業協会の登録銘柄や店頭管理銘柄あるいは公開途上にある株式以外の株式をいう。上場会社では、取引相場の株価という客観的な数字で評価することが可能であるが、それに対して、中小企業のような取引相場のない株式は株価を客観的に評価できる数値がない。
取引相場のない株式の評価と関連する会社法上の問題としては、訴訟上の問題となる場合があるほか、非訴事件において裁判所が株式の評価をしなければならない場合がある。たとえば、株式譲渡制限を定める定款変更決議で反対した株主が株式買取請求をする場合(116条1項1号2号・117条2項)、定款に株式譲渡制限の定めがある会社で、株式の譲渡を希望する株主と会社または指定買取人との間で売買価格の協議が調わなかった場合(144条2項)などがある。
株式買取請求権における株式の買取価格について、平成17年改正前商法は、「決議ナカリセバ其ノ有スベカリシ公正ナル価格」と規定していた。会社法においては、単に「公正な価格」と改められたが(785条1項・797条1項・806条1項)、その買取価格を裁判所が決定するときは、株式買取の承認請求の時における会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければならないと定められている(144条3項)。しかし、その具体的な価格算定方法は明らかではない。
取引相場のない株式の評価については、多様な方法があり、国税庁の評価方式はその一つである。国税庁(財産評価基本通達178~193)の具体的な評価方式は、類似業種比準方式と純資産評価方式および配当還元方式という3つの方式がある。類似業種比準方式は、類似業種の株価をもとに、評価する会社の一株当たりの配当金額、利益金額および純資産価額(簿価)の3つで比準して評価する方法である。純資産評価方式は、会社の総資産や負債を原則として相続税の評価に洗い替えて、その評価した総資産の価額から負債や評価差額に対する法人税額等相当額を差し引いた残りの金額により評価する方法である。配当還元方式は、その株式を所有することによって受け取る一年間の配当金額を、一定の利率(10パーセント)で還元して元本である株式の価額を評価する方法である。この三つの算定方式以外は、収益還元法など算定方式もある。収益還元法とは、事業計画に基づいて予想した各年度の予想利益から、将来どのくらい収益を獲得できるかを1株あたりの株価に反映させて株式価値を算定する方式である。
なお、譲渡制限株式を配当還元方式で評価した判例としては、大阪高決平成1年3月28日決定(判時1324・140)等があり、収益還元法で評価した判例としては、東京高決平成20年4月4日決定(判タ1284・273)等がある。各評価方式を併用して評価した判例としては、札幌高決平成17年4月26日決定(判タ1216・272。配当還元方式と純資産価額方式および収益還元方式を1対1対2の割合で併用して評価した判例) 等がある。
(2024年6月4日更新)