(すぎやま ともき)
福井県も「探究系」の学科を設置する高等学校が増えました。2023年現在で8校あります。定時制・通信制も含めて32校ですから、4校に1校(25%)ということになります。「探究系」の学科では、「探究型学習」(基礎的知識・技能の活用、生徒の主体性)を重視します。「探究型学習」とは、自ら問題を設定して、その問題を解決するために情報の収集や分析を行い、意見交換や協働しながら、その問題を解決するための糸口を見つけていく学習活動です。また、糸口(正解ではなく最適解)を見つけること以上に、そこに行きつくまでのプロセスを大切にします。これから訪れる社会(未来)で求められる「学力」(知識を得ること)に加えて「思考力」「判断力」「表現力」(ここでは「4つの力」としておきます)を高めることが目的です。
「地域探究」という言葉がありますが、これは、自分たちの学校の行事や抱えている課題、また、暮らしている地域を題材にして、「4つの力」を磨いていくという「探究型学習」の方法のひとつということになります。
「地域」とは、とても曖昧な言葉です。ひとつの国や市区町村、これらよりも小さく狭い範囲(地区や集落や学校区、学校単体など)を地域と考える場合もあれば、いくつかの国をまとめて、ひとつの国よりも大きい範囲(EU、熱帯地域など)を地域と呼ぶこともあります。つまり、人それぞれの捉え方、テーマによって、地域の空間的な範囲は大きくも小さくもなるということです。
次に「マネジメント」とは、会社の「経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報・時間など)」を効率的に使い、会社の目的・目標達成のために、会社をどう「取り仕切るのか」、どうすれば「よい状態を保つことできるのか」を考えて、計画し、行動し、成果を出し続けることです。経営学の守備範囲であり、特に会社の「管理」や「経営」を意味する用語として使用されています。
つまり、「地域」と「マネジメント」の組み合わせである「地域マネジメント」とは、地域をよい状態に保つための機能や活動ということになります。また、これからの地域のあり方(視点)やつくり方(技術や方法)を、経済学部で学ぶ理論(特に経営学)に求めるのが「地域マネジメント論」ということになります。すなわち「地域マネジメント論」とは「地域づくり論」であり「地域探究」でもあるということです。
もっとも身近な地域といえば、いま暮らしている「地元」と呼ばれる範囲が、そのひとつになると思います。「地元」に愛着を感じている人もいれば、他の地域と比較して「地元」が劣っていると感じている人もいるでしょう。身近すぎて「地元の良さ」に気づいていない人、そもそも「無関心」な人もいるでしょう。
これまでは、地域をよい状態に保つこと=マネジメントは、行政(国や市区町村)の仕事だったといえます。しかし、人口が減少する時代(結果として行政は財政難、人手不足)になり、また、変化が早い(素早く対応しなければ手遅れになる)時代、さらには価値観が多様な時代(よいと感じる「地元」の姿が千差万別)になり、「持続可能な地域づくり」(地域を守り維持するため)の担い手は、行政だけではなく、私たちひとりひとりと、その連携になっています。
なによりも、自分らしい生き方、暮らし方、働き方を手に入れるために、地域には、どのような自然や環境・文化や歴史・産業や企業があり、どのような人がいて、どのような人と人のつながりがあるのかを知ること=「地域に関心を持つこと」が重要になります。
「地域マネジメント論」を通じて、今までよりも広く、深い「地域探究」の第一歩を踏み出しましょう。
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