(おかはら なおと)
マクロ経済学は、ミクロ経済学とともに「理論経済学」と呼ばれる考え方の一つであり、社会における人々・企業・政府の経済活動を分析するものです。学部でのマクロ経済学では、特に「イギリスの経済学者ケインズの考え方」(ケインズ経済学)を中心に学習します。
マクロ経済学とミクロ経済学の違いとは、どのようなものなのでしょうか。「ミクロ経済学」は、簡単にまとめると、取引に参加した人々や企業、特に取引の『両側』となるモノの売り手と買い手である「モノを提供する側 (供給側)」と「モノを購入する側 (需要側)」について、その間で行われるやり取りによって実現する価格や取引量を分析するものと言えます。
すると、ミクロ経済学の考え方に従えば、『雇われる労働者の人数』は、「労働を提供する労働者」と「労働を購入する企業」の間のやり取りだけで決まることになります。そのため、「働きたいのに雇ってもらえない」という失業問題は、「労働者と企業の間のやり取り」に原因があることになります。
この結論に反対したのがイギリスの経済学者ケインズでした。彼は、『雇われる労働者の人数』は「労働者の企業の間のやり取り」では決まるのではなく、製品の生産や生産設備の購入も含めた、「社会全体の人々や企業の間の様々なやり取り」によって決まると主張しました。この場合、失業問題の原因は「社会全体の経済活動」にあることになり、ケインズは特に「社会全体の需要の大きさ」が、「雇われる労働者の人数」を含めた社会全体の経済活動の水準を決めるという考え方を提唱しました。
ここからわかることとして、経済学者は単に個別の「売り手と買い手のやり取り」だけでなく、それらをまとめた「社会全体の動き」に注目して分析する考え方が必要です。こうして生まれたのが「マクロ経済学」であり、その出発点となるのがケインズ経済学でした。しかし、マクロ経済学と比較するだけでは、ケインズの考え方を理解するには十分とは言えません。
高校の「政治・経済」の授業において、経済学の歴史として、「資本主義の誕生 → アダム・スミスの考え方の登場 → 労働者の貧困問題の発生 → マルクスの考え方の登場 → 大恐慌による失業・不況問題の発生 → ケインズの考え方の登場」といった流れを教わっていると思います。
ここで重要なのは、ケインズの考え方(ケインズ経済学)は「どこからともなく突然に現れた考え方」ではなく、スミスから続く『経済学の流れ』の、ただしマルクスとは異なる『流れ』の中から生まれてきたものである、ということです。 したがってケインズ経済学を十分に理解するには、『経済学の考え方の流れ』が、どのようにして「社会全体の需要の大きさが重要」というケインズの考え方にたどり着いたのか、ということを知ることが重要になります。
そこでマクロ経済学の講義では、マクロ経済学を「『みんなが豊かになる方法』についての考え方」と定義して、『どうすれば豊かになれるのか』についての様々な経済学者の考え方とその変化について取り上げながら、ケインズ経済学を様々な経済学者たちの考え方との関連から学んでいきます。
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