2025/2/17-18 紋別国際シンポジウム・AORI共同利用研究集会
北方圏国際シンポジウムに参加してきました。いつも研究でお世話になっている北海道紋別市で開催されており、今回が39回目の開催だそうです。発表は2件行いました。一つは基調講演で最近Communications Biologyで公開されたカイアシ類ーウイルスの相互作用についての研究です。この論文は紋別の非常に高密度なモニタリングにより可能になった研究ですし、モニタリングの重要性も含めて研究紹介しました。もう一つは冷水域のワークショップで、こちらは会の主催も行ったのですが、発表ではガリンコ号調査で採集された動物プランクトンに未知なる多様性が含まれているか、という内容を発表しました。流氷の下のサンプリングは非常に難しいのですが、ガリンコ号を使うことで可能になります。さらに、メタバーコーディングをハプロタイプレベルで行うことで種多様性だけでなく集団構造も明らかにする試みを行いました。正直、ウイルスの方が研究的には自信のある内容なのですが、ガリンコ号調査のほうが反響がよく、発表の翌日の読売新聞内でも紹介がされました。研究の面白さを分かりやすく伝えるは難しいですね。また、滞在中はちょうど流氷が来ていたのですが、上手く沖に流氷が流れた際にオホーツクタワーでサンプリングもできました。次の週に学部生を対象とした集中広義・実習(サイエンスキャンプ)があるので、そこで学部生と一緒に氷の下の未知なる多様性を探索したいと思います。非常に厳しい環境の冬季オホーツク海のサンプリングですが、流氷が来ている影響かクリオネもたくさん採れました。
さらに残念ながら日程が重なってオンラインでの発表となってしまったのですが、大気海洋研で開催された太平洋の深海の生物地理・多様性のワークショップでも口頭発表を行いました。深海生物というと深海魚や底生生物を想像する方がほとんどですし、実際に発表も底生生物の専門の方がほとんどでした。一方、いわゆる深海でもたくさんの動物プランクトンがいます。発表ではメタバーコーディング解析を中心として、太平洋の中深層の動物プランクトン相がどのように決定するのか、これまで分かっていること、まだ分からないことを紹介しました。最近はこういったメタバーコーディングデータが底生生物の幼生分散にも活用できないかと色々と試みていますし、今後はbentho-pelagicの相互作用も面白いトピックだと期待しています。
Hirai J, Ecological interactions between viruses and copepods: A study using the continuous ocean monitoring in the Okhotsk Sea off Mombetsu. The 39th International Symposium on Okhotsk Sea & Polar Oceans 2025, Hokkaido, Japan, February (2025).
Hirai J, Yamaguchi A, Katakura S. Revealing hidden diversity of zooplankton under sea ices in the Okhotsk Sea. The 39th International Symposium on Okhotsk Sea & Polar Oceans 2025, Hokkaido, Japan, February (2025).
平井惇也,太平洋広域における動物プランクトンの生物地理:分子生物学的手法を用いた取り組みと展望, 東京大学大気海洋研究所共同利用シンポジウム「太平洋深海域における生物多様性・生物地理研究の展望」,千葉,2月,(2025)