ISSP Women's week 2023

研究交流会

物性科学分野において少数である女性研究者及び大学院生の活躍を推進するため、物性研究所では2021年度よりISSP Women’s Weekを実施してまいりました。3回目を迎える今年度は11/25-12/1の1週間をISSP Women’s Week 2023とし、その中の11/30と12/1の2日間にわたり研究交流会を開催します。本研究交流会では産学の多様な分野から10名の有識者をお招きしてご講演をいただくとともに、物性研究所内の女性研究者・院生によるポスターセッションも実施します。また、「研究生活における実用スキル」をテーマにラウンドテーブル企画も行います。多数の方のご参加を歓迎いたします。

日時:2023年11月30日(木)ー12月1日(金)

開催場所:東京大学物性研究所 大講義室  (講演のみハイブリッド)

参加申し込み

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オンラインアクセスに関する情報は登録者のみに送らせていただきます。

協賛:日本学術振興会

学術変革領域研究(A)

「1000テスラ超強磁場による化学的カタストロフィー:非摂動磁場による化学結合の科学」


プログラム

令和5年11月30日(木) (9:30開場)

10:00 所長挨拶、趣旨説明

10:15 板倉明子先生 (物質・材料研究機構)

   「研究者の職位とワークライフバランス」

  日本における家事や育児は相変わらず女性への負担が大きく、それは職業を持った女性研究者であっても同様です。とはいえ性別にかかわらず、学生の時、ポスドクの時、PIとなって自分の学生や部下がいる時で、仕事の仕方は変わってきます。基礎か応用か、実験系か理論系かなど、研究体制によっても違うでしょう。

例の一つでしかありませんが、国立研究所の職員である私の研究テーマと、その時点でのライフワークバランスを紹介するとともに、同じ組織の同僚たちがどのように仕事をしていたかを紹介させていただきます。私の研究所は外国人職員が多く、また、ポスドクの流動性も高いため、組織の女性支援(育児支援や介護支援、子供休暇なども含む)も、他国や他機関を比較されることで進んできた側面もあります。最近では、男性の育児参加も盛んなのにもかかわらず男性育休がとりにくいこと、そのため結局は女性の負担が大きくなってしまうこと、不妊治療などに関わる休暇をどう扱うか、個人や上司、組織として何ができるかなど、事例を紹介しながら考えていきたいと思います。


10:45 田中未羽子先生 (東京大学物性研究所)


 「Magic angle twisted 2層グラフェンの超伝導相における慣性インダクタンス測定

   

   超伝導体のバンド内電子応答はDC極限ではゼロ抵抗を示すが有限周波数では電子の慣性に由来する有限のインダクタンスを示し、その値はクーパー対の結合の強さやオーダーパラメータの対称性など様々な特性を反映する。Van der Waals物質は熱力学的に不安定な構造も含めて多彩なヘテロ構造を作れるという特徴があり、近年ではツイストヘテロ積層における強相関状態や超伝導が注目されている[1,2]。

 本研究では基板上の2次元マイクロ波共振器とvan der Waals物質を結合するという新しい手法を用いてmagic-angle twisted 2層グラフェンの超伝導相のマイクロ波応答を測定した。共振周波数のシフトから慣性インダクタンスを見積もり、温度やゲート依存性からオーダーパラメータの対称性について議論する。この手法は他のvan der Waals超伝導体にも応用が可能であり、超伝導物性の新たな強力な測定手法としての展望についても説明する。
[1] Y. Cao, et al. Nature, 556, 43 (2018), [2] JM. Park, et al. Nature, 590, 249 (2021).


11:15 大池広志先生 (科学技術振興機構, 東京大学)

準安定性の理解に基づく機能材料の開拓

物質の安定相は、自由エネルギー最小という熱力学的性質によって実現する最安定相と、最安定相への変化が観測できない程遅いという速度論的性質で実現する準安定相に分類されます。温度・圧力・化学組成などの熱力学パラメータを決めると最安定相は一意に定まるのに対し、準安定状態は無数に存在し得ます。このような準安定相を「物質の探索空間」とする固体化学の考え方を物性物理に適用すると、準安定相を「物性の探索空間」として捉えることができます。本講演では、急冷を用いた強相関電子系の準安定相の生成と、準安定電子相を活用した機能材料の開拓について紹介します。


(11:45−100 昼休み)


13:00 徳永千恵子先生 / 有吉恵子先生 

                                        (キオクシア(株) サステナビリティ推進部/メモリ技術研究所 デバイス技術開発センター)

「企業・キオクシアの女性活躍の取り組み/キャリアパスの事例」

拡大・多様化する市場のニーズに応えるため、キオクシアは、人材の多様性を推進しています。中でも、女性活躍は重要なテーマです。昨今の企業の女性活躍の動向を踏まえ、キオクシアの活動をご紹介します。また、企業の例として、当社の研究所で活躍する女性技術者(※)のキャリアパスについてもご説明します。

(※)2023年度の日本女性技術者フォーラムの「JWEF女性技術者に贈る奨励賞」受賞者

http://vim128.layer-7.ne.jp/activity/setevt_20230910001624124281575673.html


13:30 乗富貴子先生   (AGC株式会社 技術本部 材料融合研究所)

  「女性博士と日本企業;心地よい生き方とは

昨今、日本メーカーでも博士人材が重宝されるようになってきましたが、まだ先進諸外国からみると希少種扱いです。特に女性博士ともなると会社内でもキャリア例がほとんどなく、自分たちが作っていく側であることも多いのが現状です。その様な中で、一人の女性博士研究者・会社員としてなど、多岐に渡って自身のアイデンティティやキャリアを考える機会が多くあります。そこで、これまで学生時代や研究生活、就職活動、会社生活などで培った様々な経験をもとに自身の反省も踏まえて、ご参加いただく皆さまに私なりの考えを精一杯伝えていきたいと思います。また自分の考えを皆さまに共有するだけでなく、皆さまと積極的に意見交換を行うことで、お互いの研鑽の場としたいです。


13:45 ラウンドテーブル企画

テーマ:研究生活における実用スキル 

                               トピックス候補1. 研究と生活を両立しながらの論文の書き方やアイディアの出し方

       トピックス候補2. ライフイベントの選択 

トピックス候補3. 企業研究者の心得

トピックス候補4. 身近な役割分担 


(14:45−15:00 休憩)


15:00 ポスター・ショート プレゼンテーション

15:45~17:00 ポスターセッション 

               (ポスタープログラムはページ後方に記載してあります.)

17:00−18:30 懇談会


令和5年12月1日(金) (9:00開場)

9:30 村山陽奈子先生 (理化学研究所 創発物性科学研究センター 強相関物性研究グループ)

強相関電子系における回転対称性の破れを伴う新奇量子相

液晶が固相と液相の間に様々な液晶相をもつように、電子系でもモット絶縁体からフェルミ液体へ変化する際に様々な対称性を破る新奇量子相が現れることが知られている。とくに、回転対称性の破れを伴う電子相はネマティック液晶になぞらえて電子ネマティック相と呼ばれている。今回の公演では、銅酸化物高温超伝導体とイリジウム酸化物における電子ネマティック相の研究について説明する。銅酸化物高温超伝導体では、アンダードープ領域における擬ギャップ状態の出現に伴い、回転対称性の破れに特徴づけられた熱力学相転移が観測された。一方で、イリジウム酸化物でも同様に回転対称性の破れた状態を確認したが、これまで知られていた電子ネマティック相とは異なり、同時に空間反転対称性の破れも伴う可能性が示唆された。


10:00 今布咲子先生  (北海道大学 理学院)


「中性子および放射光X線散乱実験によるCaBe2Ge2型構造を持つU化合物の研究」


 近年、電流誘起磁化や奇パリティ超伝導といった新規物理現象の舞台として、 結晶全体としては空間反転対称性を保持しているが、イオンサイトでは局所的にそれが破れている物質への関心が高まっている。我々はこのような局所空間反転対称性の欠如がUの5f電子状態やU系の物性に与える影響に着目し、 CaBe2Ge2型構造を持つUT2X2化合物(T: Ir/Pt, X: Si/Ge)に焦点を当て、 研究を進めてきた。この発表では、反強磁性秩序と電荷密度波秩序の共存を示すUPt2Si2を中心に、中性子散乱および放射光X線散乱実験から得られた成果について紹介する。また、女子学生や量子ビーム施設利用者としての視点からみた、研究者としてのキャリアや生活についても言及する。


(10:30−10:40 休憩)


10:40 牧浦理恵先生 (大阪公立大学 大学院工学研究科 物質化学生命系専攻 マテリアル工学分野)


気水界面を利用した錯体ナノシート結晶の創製


   ナノシートはサイズと次元性に由来したバルク物質に見られない特異な性質を示すことに加え、究極に薄い機能材料として、基礎・応用の両方の観点で活発に研究が進められている。我々は、水面に油膜ができる現象に着目し、気水界面を利用して多孔性金属錯体MOFのナノシート合成に初めて成功した[Nat. Mater, 9, 556 (2010)]。これまでに報告してきた多種多様なMOFナノシートの中から[Coord. Chem. Rev. 469, 214650 (2022).]、本講演では、高い電気伝導度を有するナノシートの形成過程と導電性の相関に関して紹介する[J. Colloid. Interface Sci. 651, 769 (2023)]。


11:10 渡辺悠樹先生 (東京大学工学系研究科物理工学専攻)

研究と子育てのphase transition」 

全ての時間を研究に費やしていた米留学中、1人目の子どもを授かりました。帰国後これまでの8年間、保育園の送迎や家庭での育児を楽しんできましたが、そんな生活も2人目の小学校入学に伴いまた一つの転換点を迎えます。本講演では、子育てで変化した自分の研究生活や、日々のやりくりについてお話しできればと思います。


11:40 閉会挨拶

11:45 閉会

午後:物性研究所 自由見学

ポスタープログラム

ポスターご発表者(東京大学物性研究所)

 1)    白井亜美偏光分解テラヘルツ分光による室温シリコンのキャリア分布ダイナミクスとホール伝導の測定

2)    亀山理紗子2色レーザー誘起エアプラズマによる広帯域赤外パルスを用いた表面振動分光法」

3)    石井梨恵子ICP発光分光分析装置による元素分析」

4)    今野雅恵「微生物ロドプシンが持つ多様な分子機能の解明」

5)    馬 嘉悦Photocatalytic activity of Al-doped SrTiO3

6)    劉一帆Exploring Counterion pKa Variations in bestrhodopsin

7)    詩悦 「銅酸化物高温超伝導体における超強磁場下での常伝導状態」

8)    松本遥「立方晶ReSTeの熱電特性と元素置換効果」

9)    吉岡晴香Cu(997)表面におけるギ酸の水素化反応」

10) 阪口佳子Pd/Cu(977)表面におけるメタノールの脱水素化反応」

11) 辻川夕貴銅基板上二次元ホウ素化合物の研究

12) Xiaoni ZhangClue of Dirac Nodal Fermions for Topological Hydrogen Boride by micro-focused photoemission spectroscopy


お問い合わせ

東京大学物性研究所 男女共同参画・ダイバーシティ推進委員会委員長

松田巌(e-mail: imatsuda_at_issp.u-tokyo.ac.jp "_at_"を"@"に変えて送信してください)